6.
いつしか夕焼けは終わっていた。
これだけは変わらない、変哲のない夜空が頭上に広がっていた。
目の前には穏やかに燃える焚火、と、それから至極真面目な顔のソノリア。こんな表情をすれば意外ときちんと男に見えるのだな、とそんなことを想った。
「役割と‥‥記憶と、罪」
復唱するそれに、頷く。きっぱりと言えはしなくても、はっきりと頷くことだけはできたから。
「そう。罪がある。祖母が犯した罪は、祖母が死んでも消えなかった。
その記憶がある。だから私は役割を捨てられない」
罪とは何だ、とはソノリアは訊かなかった。それにマナファナは、深く安堵した。
こんなところで罪を認めてしまったら、死に場所以外で死んでしまいそうだった。例えば今、魔のものが地面から湧いて出たら、きっとマナファナは抗えない。今が夜で、炎の傍らで、本当に良かった。
「‥‥ねぇ、マナファナ」
絞り出すようにソノリアは言った。嫌だな、と思った。傷つけるのは本意ではない。気が付けば、そのくらいには彼に気を許していた。世界に生きる全ての為にこの生命はあるのに、思わずそれより彼を優先したくなる、くらいには。
「‥‥何だ」
「‥‥マナファナの‥‥お祖母さんの、役割って‥‥何」
だから、それを問われた時の誇らしさは、ソノリアを想う気持ちとは矛盾するのだ。
心痛など欠片も与えたくないと祈りながら、それなのにマナファナは笑顔で応えるのだ。
「世界を救うんだ」
馬鹿馬鹿しいと唾棄したこともある。それでも、祖母が死んでそのあとを母が受け継いだように、母の死から己がその剣を受け継いで、そうしたらそれ以外の道なんて選べなかった。
「この剣で世界を救うんだ。
祖母は一度失敗した。悔やんで悔やんで旅立ったけど届かなかった。母でもやっぱり辿り着けなくて、そして死んだのだけれど、だから次は私が」
ほらこんなにも誇らしい。微笑んで告げることができる、自分は苦しんでなどいない。
だから泣きそうな顔をしないでほしい。
そういえば救う世界にソノリアも生きている。そう思えば、怯む気持ちなんて欠片もないと思えるんだよ。




