3.
特に休息を取ることもなく、2人はまた歩き始めた。
「剣が傷まないのはいいけどさぁ」
珍しく、ソノリアがまだぶつくさ言っている。彼の本質は陽性だと思っていたのだが、それでも鬱憤は溜まるものだろうか。それともただの思い込みだったのだろうか?
「あと邪魔にならないのもいいけどさ」
邪魔になるほど死体を築いたことがありそうな言い方だった。
「‥‥やはり、御柱の地に近付くのは難しいのか‥‥」
「え?」
ぶつくさ言っていても、マナファナが独り言めいて呟いたのにいちいち反応するのは流石だ。流石と思うことも、何やら自意識過剰な気がして微妙な気分だが、いやそれはどうでもいいことで。
「なんで?だって僕、あの地元から出て来たんだけど」
「去る者は追わない、のだとしたら?」
あの地が近付く人間を厭うているのだとしたら。
マナファナはどうしたらよいのだろう。目的地はその麓で、そこでしか成せないことがあるから今は死ねないというのに、それなのに世界がマナファナを殺そうと襲ってくる。どうしたらよいというのだろう。
「え、出て行くのは勝手だけど近付いて来るなって?何それどんな偏屈なの、ていうか何かそんな、意志とかあるものなの?」
ソノリアは混乱を表明しているが、それでも言わんとしていることをきちんと理解してくれるのが救いだ。きちんと理解するからこその混乱だとは分かっているが。
「意志があるのかどうかは知らんが、今の世界には拒絶を感じないか」
荒野は人間を拒絶する。不毛の大地となったことで人々は暮らしの為に町に引っ込まざるを得ない。さらに魔のものが大地から発生することで、余計に人々は固められた地面の上でしか生きられない。
罪だ罰だと言うよりも、それはただ拒絶だと、そう感じないかとマナファナは言った。
「赤い空は罪の証とひとは言う。でもそうじゃなくて――」
言いかけて、また地面から浸み出すものを視界にみとめてマナファナは言葉を切った。
「‥‥本当に、先行きが不安だ」
ぼそりと呟いて、その左手は剣を握った。
かつて祖母の血を母の血を吸った剣。それが成すべきことを突き付けてくる。




