2.
後から考えてみれば、道程を変更したところから、旅は順調ではなくなっていたように思う。といってもそれは後から考えてみればそうだったというだけで、正直その最中は降りかかる火の粉を振り払うのに夢中で、何も考えられなかった。
「いい加減、うんざりなんだけどっ!」
ソノリアが舌打ち交じりに言うのが聞こえる。正直マナファナに、それに応える余裕などなかった。ただ、同感だ、との想いを込めて、斬れもしない左の剣を振う。斬れない剣は逆に、鈍器として役立った。具体的に言うと、横薙ぎにぶん回した剣に押されて敵が吹っ飛び、おかげで距離が取れた。
そこにソノリアが飛び込んでくる。
「やったぁこれで、最後?」
双剣を交互に敵に見舞って、その行く末を見守ることもなく、彼はマナファナに笑いかけた。
マナファナはと言えば、呼吸を整えながら、周りを見回した。
「‥‥あぁ、とりあえずは」
「とりあえず、だねぇ」
ソノリアが双剣を軽く振って、また服の下に仕舞う。どのようにしているのか、何度見てもよく分からない。
「‥‥もう、不思議がらないのか?」
何とはなしに呟くと、ソノリアはきょとん、としてから嫌そうに答えた。
「だってもぅ、これまで出逢わなかったのが不思議なくらい遭遇しているじゃない」
「‥‥どちらかと言うと、これまで出逢わなかった、ほうが私には不思議だ」
あれは何日前だったか、ソノリアと連れ立つようになって初めて、魔のものの襲撃を受けた。夜中は火を絶やさないようにしているから、それは夜が明けて簡単に朝食を済ませてその始末をしたあとで、地面から滲み出すように溢れてきたそれらを見て、ソノリアは目を輝かせたのだ。
初めて見た、と。
幸い数は少なく、四足獣のカタチをしたそれらは四足獣程度の攻撃手段しか持たず、それほど手間取りはしなかった。それこそ腹ごなしくらいに軽く退治して、そしてその最期にもまたソノリアは目を輝かせた。
本当に解けるんだ、と。
「私にしても、ここのところの襲撃の多さは異常だと思うが、だからと言って旅して回っていたのに泥人形に出逢ったことがなかったとはな」
ようやく呼吸と心拍が通常運行になって、マナファナは周りを見回した。そこに死体は一体もない。それが泥人形とあだ名される由来でもある。
それらは地面から浸み出してくる。そしてまた解けて土に還る。形はこれまで地上にあった生き物に似て、けれどもあくまでも似姿でしかない。倒すためには大きな傷を負わせるのが一番だ、特に急所などはないが、出現したときに外皮だったところ以外が空気に触れることがどうやらキーになる、らしい。だから細かな傷をいくつも作るのも一つの手のようだ。それもこれも、経験則でしかないが。
先ほど襲ってきたそれらは結構手強かった。というより、どんどん手強くなっているような気がして、それは嫌な予感だった。正直そろそろ、マナファナにとっては限界だ。だからと言ってこんなところで死んでやるわけにはいかない。




