7.
早々に辞して、その日は夕食も就寝も早めにした。
友人宅での言動は、テヘトから全部伝わっているのだし、特に不審がられることはなかった。そのことが今回に限っては都合がいい。いちいち言い訳を考えるのも面倒臭い。父とテヘトの心配そうな視線は居心地が悪かったが、そのくらいは享受する。
出発しなければならない。祖母がはじめ、母が受け継いだその道を、マナファナも辿らなければならない。そのためにマナファナは少しばかりだが血を流したのだし、だからこそあの白昼夢を見たのだから。受け継いだのは役割と、その剣と、そして記憶。あの日台所で倒れて目覚めたときにはすでに、それらはマナファナの内に顕れていた。
町を出るのは早朝と決めていた。どうせ1日や2日では次の町には着けないことは分かりきっていたが、出来るだけ町からは遠ざかった方がいいだろう。それは、母の経験だった。
家の倉庫に押し込んであった母の旅支度を引っ張り出す。流石に食料は駄目になっていたけれど、新しく継ぎ足されていた。
父だろうか。父だろう。
少しばかり、マナファナは複雑な想いに駆られた。やはり、彼には分かっていたのだ。
とにかくすべてをまとめ上げ、倉庫から出る。陽が落ちかけている。確かこの日は、熱っぽいことにしてあった。父親が帰ってくる前には布団に戻っておかなくては。
慌てて戻ったマナファナは、そこに人がいるのに驚いた。
「?!‥‥あぁなんだ。テヘトか‥‥」
呟いてから、まずいかな、と思った。彼がいつからここにいたのかが分からない。どうごまかすべきだろうか。
「‥‥マナファナ。嘘だね?」
「?何が?」
なるべく普通に答える。ここでばれては元も子もない。
「‥‥熱なんてないでしょ」
「え?あぁ、あるって多分。今だってトイレで吐いてきたんだし。すっきりはしたけど」
そういうことにしておこう。
「‥‥」
「まぁ、‥‥もーちょっと寝る。父さんももーすぐ帰ってくるだろうし、帰っていいよ?」
いやむしろ帰ってくれ。
ここでいきなりフラフラしだすというのも変なので、普通にベットにもぐりこむ。テヘトは何かを言いた気だったが、何も言わずに出て行った。マナファナはほっと息を吐いた。
そう、このときは気付かなかった。これまでも気付かなかった。いつからそんな目で見られていたのか、マナファナは知らない。




