6.
歳頃の娘たちにありがちな、誰それが好きだとか格好いいだとか、そういう話は一片たりとも出なかった。それは、彼女たちがこの町全ての男たちに下げ渡される可能性のある、景品だからだ。そこまで自虐的に考えていたわけではないが、同じようなことは常に感じていたし、それはコーニアも同じだっただろう。けれど2人も、そして家族も、はっきりとは口にしないだけで同じことを考えていた。
ここまで事態がはっきりしてきたのは、せいぜいここ20年くらいで、両親の代くらいまでは比較的女性が生まれにくい、というだけだった。だから女性たちはちやほやされることはあっても、その程度だった。コーニアの母親にだって妹がいる。マナファナの母親は一人娘で、マナファナ自身も一人娘で、それは特異なことだと言えた。コーニアは5人の兄の後に生まれた待望の女の子で、母親は無理がたたって体調を崩して儚くなったらしい。
常に一組で数えられるマナファナとコーニアだけれど、そこには必ず他人が介在していて、腹を割って話せたことなど一度もなかった。
全てを切り捨てなければならない。そしてそれが別段つらくないのだ。
「――マナファナ?どうしたの??」
ぬるくなった茶器を持って呆としていたマナファナに、コーニアが怪訝そうに声をかけた。
白昼夢を見ていた。
けれどそうは言えず、曖昧に笑んだ。無理をしているように見えるような笑顔で。
「‥‥あぁ、ちょっとね、慣れない怪我なんてした後だし、ちょっと痛くて」
嘘だった。傷口はとうにふさがっていたし、存在すらマナファナ自身は忘れていた。
「え。大丈夫なの、それ?」
心配そうにするのはテヘトひとり。コーニアは渋い顔で、その兄たちは苦い顔で、誰がどのような感情を自分と言う娘に抱いているのか見えてしまって、マナファナはうっすらと笑った。
「痕も残らないって医師も言ってたし、多分気のせい」
多分ね。呟いて、目を閉じて耐えるようなふりをして、先ほど見た白昼夢を脳裏に描く。
それはそれは鮮やかな幻想。剣を抱いた中年女性が死にゆく光景。
あれは、母だ。




