8.
誰だか知らない相手に襲われたのは、その次の昼日中だった。詳細まではまだ見えないが、それでも次の町は大分近い。だから別に油断していたわけではないけれど。
魔のものが溢れた今の世界は物騒で、そう簡単には町の外にはいられない。それでも共同体からはじき出される者たちはいるもので、しかも存外しぶといものだった。たまにいるのだ。町にいられなくなって荒野に出て、幸運にも魔物に食われることもなく逆に他人を食い物にするような人間というのは。
しかし、耕地もないしそうそう町の外に出るような人間もいないのに、どうやって生活しているのだろう、この連中は?
マナファナは疑問を覚えたが、まぁ、外とは言っても次の町はすぐそこだし、きっとかすめ取って生きているのだろうなぁと思った。それにしても前の町を出て数日、久方ぶりに出会ったほかの生き物がならず者というのも何だか情けない話だ。
息を吐き、彼女の左手には剣が握られていた。
「わぁすごい!マナファナ、手品師だね!」
「‥‥」
そういえば背後にいた。ソノリアが呑気な声を上げる。とりあえずその能天気な声は無視して、構える。
人に向けるのははじめてだったが、ひるむつもりは毛頭ない。
男たちは軽く笑い飛ばしたいらしかった。けれど睨むマナファナの視線に本気を感じてか、何事かを囁き交わす。
「‥‥ソノリア」
低く、こちらも囁きかける。
「何?」
「戦えるか?」
視線は男たちから外さない。それでも、彼が顔を輝かせたのはなんとなく分かった。
「もちろん!」
嬉々として、ソノリアが2本の剣を構えた。
「‥‥分かった。自分の身は守れ。私は必死になるから」
そして、何事かわめきながら男たちが向かってくる。どうせ寄越せとかそういうことしか言っていないだろうから、マナファナはまったく耳に入れず、ただ迎え撃つ。