9.
自分の方に来た3人のうち1人の腹を打ち据え、マナファナはちらりとソノリアの方を見た。
息を吐く。視線を戻しながら考える。やはり思ったとおり、奴らは彼を少女と見なしている。たとえ手に持つ小剣が物騒に光っていても、マナファナと彼とを比べれば組みしやすそうだと判断したのだろう。こちらに3人、ソノリアに2人。
次。囲まれかけるのから逃げ、振り返りながら背を打つ。
(‥‥私に対してなら切れ味はバツグンなのに)
今、こうして自分が他に対して殺気をむき出しにしている今、剣はただの鉄の棒に過ぎない。マナファナが生きようとすればするほど、その手伝いをしてはくれない。
(それでもないよりはマシだ)
仇に手を借りるようなものだ、と思っている。いつ寝首をかかれるかも分からないし、こちらの気持ちとしてもちょうどそれに近い。
むしろ、確かにこの剣は仇も同然なのだ。
祖母も母も、この剣を手に旅を続けた。もう1本が眠っていることは確かなのだから、今これがマナファナの手にある以上、2人ともこの世界にはいないのだろう。形見でありながら、殺した凶器であることも間違いはない。
最後の1人の脳天に叩き込んで、マナファナはソノリアを振り返った。
「――無事か?」
マナファナは確信していた。
にこりと天使の微笑を浮かべて、ソノリアはスカートのように広がる上着のすそに、2本の小剣をしまった。男の1人の上着でべったりと付いた血をぬぐって、そのまま無造作に捨てた。
こちら側の3人は軽くうめき声を上げていたが、あちらの2人は声もあげない。微動だにもしない。マナファナは息を吐いた。
「‥‥大丈夫。もぅ僕らに手は出せないよ」
「そうだな。‥‥行こう」
可愛い顔をしてソノリアは手を汚すことを恐れない。そんな格好をしているから、余計に手を抜いてはいられないのだろう。
マナファナはまだ、1人しか殺したことはない。けれど、この剣が切れるものなら、もう何人殺しているか分からない。
「マナファナ」
どうやら、暗い顔をしていたらしかった。
「マナファナ、僕は、あんな奴らの糧になる気はないよ?マナファナもそうでしょう?」
「‥‥あぁ」
分かっているのだ。身を守ろうとしながら、向かってくる者たちの身を案じることはできない。




