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8.公爵とニナ

 午前中ルチアは畑仕事を手伝ったが、フィデスは現れなかった。

 リベルは昼前に畑に飛んで来てみんなと一緒にお弁当を食べた。

 昼食の弁当を食べ終わると、スカイがルチアに午後はヤンと二人で十分だから家に帰るように勧めた。

 ルチアが木陰で本を読むと言うとスカイはそれなら牛小屋の掃除をモリーがするから手伝うように言われた。

 ルチアは「そうするわ」と言ってモリーと一緒に牛小屋へ向かった。

 畑仕事を手伝いたくないニナはちょっと離れた木陰でフィデスが来るのを今か今かと朝から居座っていた。

 ルチアとモリーがそばを通るとニナが声をかけてきた。


「ルチア姉、どこ行くの?」


「母さんと牛小屋の掃除してくるわ」


 ルチアが答えるとニナは眉間に皺を寄せて言った。


「公爵様がいつ来るかわからないのに牛小屋の掃除なんて!服に匂いが移っちゃうわよ!」


「…リベルをここに置いていくわ。公爵様がお見えになられたらお願いね」


 ニナにそう言ってからルチアはこっそりリベルにも声をかけた。


「じゃリベル、しっかり観察してね」


《わかりました》


 ルチアとモリーが牛小屋に行ってしばらくするとフィデスが馬を走らせてやって来た。

 ニナは急いで立ち上がりスカートの裾の草を払い落とした。

 リベルは寝たフリをして丸まっていた。

 フィデスは馬から降りるとリベルに近づいて来た。


「やあ、リベル……今日はルチルアーヌ嬢はいないのかな?」


 ニナは急いでスカートの裾を手で持ち上げ脚を交差させて挨拶をした。


「公爵様、こ、こんにちは…姉は今牛小屋の掃除をしていまして…こ、公爵様がいらしたらお願いと…」


「そうか…」


 フィデスは自分でも気づかないぐらいのガッカリした顔をした。

 その顔はニナは気づかなかったが、リベルは薄目を開けてしっかりと見ていた。

 やはり夢で見た神ユピテルにそっくりだ。

 フィデスはリベルに触れられるぐらい近づいて隣に座った。


「触っても構わないだろうか?」


 フィデスはリベルに聞いたが、ニナが答えた。


「どうぞ、どうぞ、構いません!」


 ニナはそう言ってフィデスの顔をうっとりと眺めた。

 フィデスはそっと手を伸ばしてリベルの背中に手を乗せた。リベルは動かずじっとしていた。

 フィデスは真剣な顔で手を背中から頭に向けてそっと撫でた。リベルがちょっとピクリとするとフィデスはサッと手を退けた。

 リベルは眠った振りを続けた。

 フィデスはじっとリベルを見てから頭に手を置きそっと撫でた。


「お前のご主人は働き者だな。か細い腕で畑仕事や牛の世話をして家の生活を守っているとは立派だ」


 フィデスはリベルに話しかけたのだが、ニナがここぞとばかりに喋った。


「そうなんです、公爵様。姉はとーっても働き者で優しくて頭も良いんです。それに村一番の美人で、本人はそう思っていませんが、朝が苦手なのがたまにキズですが、きっと公爵様のお屋敷に行くとお役に立ちます!」


 フィデスはニナの話を笑いながら聞いた。


「姉妹仲がいいんだな。お兄さんも大事にしているようだし」


「あ、兄は特別ルチア姉には甘々です。なんせ村一番の美人だから男の人がほっとかないでしょう?でも全部兄が睨みを利かせて寄せ付けないようにしてるんです。ルチア姉は自分がモテてることを全く知りません」


 ニナは言いながらチラリとフィデスを見た。フィデスはリベルをの方を向いて頭を撫でていた。


「……ルチアという愛称なんだな。リベル、お前も彼女に惹かれてそばにいるのか?普通竜は誰かに飼われたりしないだろう?」


「リベルは怪我をしているところをルチア姉が助けたんです。だからルチア姉から離れなくて…一緒にも寝ています」


 フィデスは返事が聞きたいわけではなくリベルに問いかけているが、ニナが全部答えていた。


「そうか……優しい者に会えて良かったなリベル」


 フィデスは頭から顎にかけてリベルを撫でた。


「……あの、こんなことを聞くのは不躾だとは思うのですが、公爵様はお優しいですか?あ、いや、ルチア姉には王都に行ってもらいたいなと思っているのですが、やっぱりちょっと心配で……」


 フィデスは声を出して笑った。


「うーん、優しいかどうかは人が判断することだから、わたし自身は答えられないな」


 ニナは不躾なことを聞いて怒られるかと思ったが、逆に笑ったので少し驚いた。


「公爵様はお優しいとわたしは今判断いたしました。これで安心して姉を送り出せます」


 ニナは頭を下げた。


「ルチルアーヌ嬢は王都に行くと言ってくれているのかな?」


 フィデスは嬉しそうな顔でリベルに向かって言った。


「ルチア姉はまだ考え中です。わたしは行くように押します!」


 ニナは力強く言った。


「ありがとう、心強い味方だ」


 フィデスはそう言いながらニナに微笑んだ。ニナはその笑顔にボーっとなった。


「今日はルチルアーヌ嬢に会えなくて残念だ。また明日来るよ。そのときはご主人様と一緒にいてくれ」


 フィデスはリベルの耳元でそっと囁いた。


「では、わたしは帰るよ。姉君によろしく伝えてくれ」


 フィデスはニナに言って馬に乗って駆けて行った。


 畑から様子を見ていたスカイはルチアにフィデスが合わずに帰ってくれてホッとしていた。


 夕食はニナのフィデス推しの時間となった。ニナがフィデスを誉めまくって一人で喋っていた。

 スカイは怪訝そうな顔をし、モリーは呆れた顔をしていた。ヤンはいつもと同じ表情が変わらなかった。ルチアはニナのおしゃべりに付き合う形で苦笑いしたり相槌を打ったりしていた。


 夕食後部屋に戻ったルチアはリベルから報告を受けた。


《多少誇張はされていますが、ニナが言っていることは間違っていません。平民をバカにする横暴な貴族とは違います。ニナがかなり失礼なことを言っていましたが、全く怒らず笑い飛ばす力量があります。ニナがいてくれたおかげでよくわかりました》


「そうなのね……」


 ルチアは視線を落としてため息をついた。


《明日もまた来ると言っていました。そのときはルチアも一緒にとこっそり僕にだけ告げていました》


 ルチアは少し胸がドキドキして顔が赤らむことに困惑していた。


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