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7.早起きの朝

 翌朝、ルチアは珍しく早起きをした。

 リベルはまだ眠っているようだ。

 服を着替え(いつもよりちょっとだけいい服を着た)、髪をいつものように横で三つ編みをして頭には巻かずにそのまま垂らした。スカーフは巻かずにリボンのようにして三つ編みにくくりつけた。


「ルチア姉!起きて……」


 ニナがいつものようにドアを勢いよく開けながら入って来た。


「……どうしたの、ルチア姉…もう起きて着替えまでしてるじゃない」


 ニナが目を丸くしてルチアを見た。


「それに何だか…今日はいつもと雰囲気が違うわ……ははーん、今日は公爵様がリベルに会いに来るもんねぇ」


 ニナは腕を組んで目を細めてニヤニヤしながら言った。

 ルチアは慌てて言い訳をした。


「今日は何だか早く目が覚めちゃったのよ。だから気分転換にいつもと違う格好をしてみようと思って…」


「いいの、いいの。あの公爵様だもん。少しは小綺麗にしたい気持ちすっごくわかるわぁ。この辺じゃ見られない美形よね。目の保養になるわ。わたしもお邪魔してもいいかしら?」


 よく見るとニナもお出かけ用の服を着ていた。


「もう、最初っからそのつもりだったんでしょう。でもいつお見えになるかわからないから畑仕事に出るわよ。多分昨日と同じ場所に来ると思うから」


 ルチアはそう言って部屋を出た。


「え〜っ、わたしは畑仕事しないわよ、せっかくお出かけ用の服を着たんだから」


 ニナは言いながらルチアの部屋の鏡を見た。

 

 階下に降りるとモリーが朝食用のパンを焼いていた。


「おはよう、母さん」


 ルチアが言うとモリーは少し驚いた顔をしてルチアを見た。


「おはよう、ルチア。何と珍しく早起きだねぇ」


「母さんまで……朝食の準備手伝うよ」


 ルチアは鍋を覗いて野菜が煮込まれているのを確認した。ルチアは皿を取り出し鍋の中のスープを注いだ。

 ニナが降りて来てモリーに挨拶をしてそのままテーブルの席に座った。

 モリーはニナの姿を見てまた少し驚いた顔をした。


「今日は二人ともどうしたんだい?……」


 モリーはそう言いながら思い当たる節があることに気づいた。


「公爵様は男前だったねぇ」


 モリーが笑いながら言うとルチアとニナが同時に違うことを言った。


「べ、別に関係ないから」「そうなの、会えるのが楽しみ!」


 ルチアとニナは顔を見合わせた。


「ルチア姉ってば素直じゃないんだから」


 ニナは焼きたてのパンに手を伸ばしながら嫌味っぽく言った。


「ニナ、父さんたちが戻ってくるまで待ちなさい!」


 ルチアはスープを注いだ皿をテーブルの置きながらさっきの仕返しとばかりに強く言ってニナのパンを持つ手を軽く叩いた。


「ちぇっ」


 ニナはパンを離し伸ばした手を顎の下に置いた。

 家畜の世話をしに行っていたヤンとスカイが帰って来た。


「おはよう。お、どうした?ニナとルチアは今日街にでも行くのか?」


 スカイが二人の格好を見て微笑んで言った。


「違うわよ。公爵様がリベルに会いにくるからおしゃれしたの」


 ニナが自慢げに言うとスカイがルチアの方を見て眉をしかめた。


「わたしは違うわよ。髪を頭に巻いていないだけで畑に行く服を着ているわ」


 ルチアは少し怒ったように言った。その言葉を聞いてスカイの顔が緩んだ。


「リベルはどうした?」


 スカイがリベルがいないことに気づいて聞いた。

 そういえば眠っていたからそのまま降りて来てしまったとルチアは慌てて自分の部屋に戻った。


「リベル、起きてる?」


 ルチアが部屋に入るとリベルはまだ眠っていた。

 リベルがここに来てまだ三日しか経っていない。遥か遠いアルカナ聖国から小さな身体で飛んで来て、密猟者に追われていたのだから相当疲れているはずだとルチアは思った。

 ルチアはこのまま寝かせておこうと思いそっと部屋を出た。


 リベルは夢を見ていた。

 その夢は初代の黒紫竜とルチアの前世の初代の聖女の夢だった。

 元々は黒と紫の別々の竜だったがどちらもアテネを欲して一つの竜になった。

 どうやって一つになったのかリベルは知らなかったが、夢が教えてくれた。

 黒と紫の竜はそれぞれアテネを番にと望んだ。どちらの竜も譲らなかったので、アテネを巡って戦いを始めた。

 戦いを望んでいなかったアテネはどちらの竜とも契りを交わさないと宣言した。

 その様子を天界で見ていた神ユピテルは、アテネの底知れぬ器を無駄にするのは忍びないと思い、契りを交わしたら相当な力を発現すると見抜いて黒と紫の両方の竜と契りを交わすことを指示した。

 そうしてアテネは両方の竜と契りを交わすとアテネから強大な光が放出され、黒と紫の竜を光が包み込んで二体の竜は絡み合いながら天に舞い上がった。

 光が消え降りて来たときには黒紫色の一体の竜になっていた。


 リベルはハッとして目が覚めた。

 夢に出て来た神ユピテルが頭にこびりついて離れなかった。

 何故なら神ユピテルがフィデスと姿形がそっくりだったからだ。

 これは王都に行けという暗示で今こんな夢を見たのだろうかとリベルは思った。

 とにかく今日フィデスをよく観察しようと思った。


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