72.家族と再会
王城に戻ったルチアはフォルティスに挨拶だけして、宿泊する部屋に戻った。
タラン国の王太子は、タラン国の王に連絡を取ってからどうするか審議するとのことだった。
ルチアは明日の宴は参加せず部屋で休むことになった。
この王城にはまだ裏切り者がいる。
王城の地下水路に案内した者だ。
タラン国の王太子はそんな者は知らないと言い張っているらしいが、他国の者が入れる場所ではない。
ルチアはまだ気を抜いてはいけないと思った。
翌日、聖女は体調がすぐれないので宴を欠席するとフォルティスが告げたらしく、ルチアの部屋には各国の王族や貴族からたくさんの見舞いの品が届いた。
部屋に入りきらず、フィデスの部屋にまで置いてもらった。
中には豪華な宝石をあしらったアクセサリーまであって、ルチアは高価そうな物は返そうと思った。
フィデスに相談すると寄付をすれば良いと言ったので換金して孤児院に寄付することにした。
お礼の手紙にはその旨を書いて渡した。
五日目の宴にはルチアは参加したが、常にフィデスがそばにいて目を光らせていたので挨拶程度に声を掛けられるだけで、あとはみんな遠目に見ているだけだった。
そのせいでルチアはフィデスと何度も踊ることになった。
六日目、ルチアは少しだけ宴に顔を出して、あとは街の祭りの見学に行くことになった。
このような祭が開催されるのは次の国王が戴冠するまで見られないので、一生に一度のことかもしれないと、オストラル伯爵領からルチアの家族をフィデスが呼んでくれていた。
ルチアの家族は公爵邸で泊まっていたので、王城で泊まっていたルチアとはまだ会えていなかった。
なので今日は家族と一緒に街の祭りの見学をするのだ。
ルチアは髪を束ねて大きいツバの帽子をかぶってバレないように街に出た。
リベルも小さくなってルチアのバックの中に入った。
ルチアは久しぶりにヤンとモリー、スカイやニナに会えて涙ぐんだ。
みんなルチアが聖女であることに驚いていた。
ルチアが聖女であることは今回の祭を招待するために、公爵家から迎えに行った侍従の話を聞いて知ったらしい。
「ルチア姉が聖女だなんて今でも実感がわかないわぁ」
ニナがおどけて言った。
「本当にね。わたしたちはこれからどうルチアと接したらいいかって悩みながら来たんだよ」
モリーが眉を寄せながら苦笑いして言った。
「わたしはわたしよ。何も変わらないわ。聖女なんて大袈裟に言われてるけど、魔王もいなくなったし、そのうち忘れ去られるわよ」
ルチアはそう言って笑い飛ばした。
変わらないルチアを見てみんな安堵した。
ルチアもみんな変わりがないので安心した。
特にスカイのことが気になっていたが、いつも通りだった。
ルチアと結婚したがっていることを、ルチアが知っているとはスカイは思ってもいないだろうから当然だ。
「そういえばリベルは元気?」
ニナが聞いてきたのでバックを開けてみせた。
「あら〜、まあ小さくなちゃって、可愛い!」
《ごほん、僕は本当は大きくなったんだからね。ルチアちゃんと言ってね!》
ルチアは笑いながらリベルは前より大きくなったことを伝えた。
五人は仲良く賑やかな街の祭を見て回った。
公爵家の騎士たちが平民に変装してルチアをこっそりと護衛していた。
もちろんフィデスもつかず離れずルチアを見守っていた。
フィデスとしてはすぐそばで守っていたかったが、家族水入らずを邪魔したくなかった。
フィデスがルチアたちの後をつけるようにしている数人の男たちに気づいた。
街は人で溢れかえっているのでルチアは気づいていないようだった。
フィデスは公爵家の騎士たちに目で合図をしてからルチアのそばに行った。
「公爵様!」
ヤンとモリーは慌てて深々と頭を下げて挨拶をした。
「お久しぶりです、公爵様。相変わらず見目麗しいですね」
ニナらしい挨拶だったが、スカイがニナの頭に軽くゲンコツを入れた。
「ニナ、失礼だろう。公爵様、いつもルチアがお世話になっています」
スカイがフィデスに頭を下げた。
その姿を見てニナが「嵐がくるんじゃない?」と呟いた。
「家族水入らずなところを申し訳ない。ルチアが聖女であることが世間に知れて、この間も誘拐騒ぎが起きた」
家族は驚いてルチアを見た。
ルチアはへへへと笑って頷いた。
「それで今もずっと後をつけている輩が何人かいる。念のためわたしがそばにいたいのだが了承して欲しい」
スカイは不満げな顔をしたが剣を持たない自分ではルチアを守りきれないことがわかっているので渋々了承した。
他のみんなは快諾した。
日が沈み暗くなると花火が上がった。
ルチアたちは花火が終了するまで祭を家族と楽しみ、花火が終了すると同時にヤンたちは公爵邸に帰って行った。
ルチアはフィデスと王城に戻りながら、寂しさを感じた。
ヤンとモリーとスカイは家畜のことや農場があるので明日帰るそうだ。
明日は式典の最終日だからルチアは抜けれない。
またしばらく会えないと思うと寂しかった。
ニナはもうしばらく公爵邸に滞在させてもらうことになった。
明後日にはルチアも公爵邸に戻れるだろうから、ニナがいてくれるだけでも嬉しかった。
王城に戻るまで何事もなく済んでルチアはホッとした。
つけていた男たちは偶然だったか、聖女かもしれないと物珍しさに後をつけていただけだったのかもしれない。
ルチアは入浴を済ませ、部屋でリベルとくつろいでいるとドアがノックされた。
「ルチア、わたしだ。入ってもいいか?」
フィデスの声だ。何か慌てているような感じがした。
ルチアはドアを開けた。
「公爵様、何かあったのですか?」
「それが、ルチアの家族が乗った馬車がまだ屋敷に着いていないと連絡があった」
「えっ!」
街で別れてからだいぶん時間は経っている。とうに着いていていいはずだ。
「すぐに着替えて空から探します」
「着替えが終わったら呼んでくれ。わたしも一緒に行く」
ルチアは頷いてドア閉め急いで着替えた。




