69.戴冠式と聖女お披露目
魔王を退治してから半月後、戴冠式と合わせて聖女のお披露目が盛大に行われた。
王太子が現国王から王冠を授かり国王となった。フローラル王国新国王フォルティス一世の誕生である。
続いて新国王より聖女ルチルアーヌにティアラが授けられた。
ティアラの中央にはルチアの瞳を思わせるような色をしたブルーダイアモンドがはめ込まれ、一面には小さなダイヤモンドで装飾されていた。
聖女のためにオーダーしたティアラである。
参席者一同ティアラの美しさもさることながら、聖女の美しさにも感嘆した。
戴冠式が終わると市中パレードを行った。
一台目のオープン馬車には新国王が乗り、二台目のオープン馬車にはルチアとリベルが乗って、大勢の民衆の歓喜や称賛の中パレードが行われた。
パレードの後は宴が待っていた。
宴は七日間行われる予定だ。
街中も新国王誕生で同じく七日間お祭りが続く。
初日の宴は他国の王族や貴族が新国王が座っている王座に順番に挨拶に来るのを、ルチアも王座の隣に置かれた椅子に座って一緒に挨拶を受けた。
誰もが新国王より聖女に興味津々なのがわかった。
挨拶以外の言葉を交わそうとする者も多々いて、フォルティスがその都度制止してくれた。
何時間もその状態が続きルチアはヘトヘトになった。
二日目は国内の貴族や官僚たちが昨日と同様な形で挨拶に来た。
三日目からは自由参加だった。
ビュッフェ形式で食べ物が置かれた舞踏会だ。これが四日続く。
七日目の夕方戴冠式のように貴族や各国の来賓が大聖堂に集まり、国王が閉幕の宣言をして終わりだ。
ルチアはとりあえず最初の舞踏会には参加した。
国王との皮切りのダンスがあったからだ。
ルチアは国王フォルティス一世に手を引かれてホールの中央に出た。
「聖女ルチルアーヌ、わたしと一曲踊っていただけますか」
フォルティスは一応礼儀としてルチアに聞いた。
「はい」
フォルティスは微笑んで右手をルチアの腰に当て左手を差し出した。
ルチアはそっと右手をフォルティスの手に置き、左手を肩に置いた。
音楽が鳴り始め二人は踊った。
「ダンスはどこで習ったんだい?ルチアは元々平民だろう?」
「公爵家に働き始めてから必要になるかもしれないとお稽古させていただきました」
「へぇ、短期間でこれほど踊れるとは凄いね。後はリラックスすれば良いと思うよ」
「このようなところで踊るのは初めてなので……無理です」
ルチアがそう言うとフォルティスはニヤッと笑ってルチアの額に口付けた。
「陛下!」
ルチアは顔を真っ赤にしてフォルティスを睨んだ。
「はは、少しは緊張がほぐれたかな?」
「逆効果ですよ、陛下」
ルチアはますます緊張して言った。
フォルティスは声を漏らしながら笑った。
その様子を目を逸らさずに見ていたフィデスは思わず飛び出しそうになったが、せっかくの祝いの席を台無しにしてはいけないと言い聞かせて我慢した。
音楽が止まった。
人々の拍手と歓声の中ルチアとフォルティスは挨拶をして終えた。
ルチアはこれで役目は終わったとホッとしたのも束の間、大勢の紳士がダンスの申し込みに押し寄せて来た。
二曲目はフィデスと踊りたいと思っていたルチアはフィデスを探した。
フィデスもルチアと踊ろうと思っていたのだが、ルチアのところへ行く前に大勢の令嬢が押し寄せて来て動けなかった。
突然ホールの明かりが消えて真っ暗になった。
「キャーッ」
驚愕する声があちこちで響いた。
ルチアは誰かに後ろから口を抑えられ気を失った。
しばらくして明かりがついて、ホール内は落ち着きを取り戻した。
フィデスはルチアを探したが姿が見えない。
フィデスのポケットに忍ばせていたリベルにルチアが見当たらないことを伝えた。
《僕は外を探してくるよ。フィデスは王宮内を探して》
そう言うとリベルは飛び出して行った。
フィデスはフォルティスを捕まえて言った。
「ルチアが見当たらない!」
「なんだって⁈」
フォルティスは慌てて会場内を見渡した。
「しまった。他国の者もいるのにもっと気をつけるべきだった」
フォルティスは急いで衛兵を呼び、誰も王城から出ないように手配した。
「いいか、特に馬車が王城から出ようとしたら引き留め中を確認するように。聖女が乗っていなくても決して王城から外に出すな!」
混乱を避けるため聖女がいなくなったことを隠し、宴はそのまま続行して、フィデスとフォルティスはホールを出た。
「ホールにいたルチアを連れ出せるとしたら宴に参加していた者だ。真っ暗な中、間違うことなくルチアを攫ったのだから明かりが消える直前ルチアのすぐそばにいた人物が怪しい。陛下はルチアの近くにいましたよね。心当たりは?」
フォルティスは少し考えてから言った。
「あのとき大勢の者がルチアにダンスを申し込んでいた。他国の王族も何人か混ざっていたが……そういえばタラン国の王太子もすぐ近くにいたが明かりがついたときにはいなかった気がする」
「それだ!タラン国の王太子はどこに泊まっている?」
フォルティスは護衛を呼び宰相を呼んで来るように言った。
宰相が来るとタラン国はどこに滞在しているかを聞いた。
「タラン国は王城の西にあるカトレア宮に滞在していただいています」
フィデスはそれを聞くや否やすぐに走ってカトレア宮に向かった。
フォルティスは宰相に密かにカトレア宮を取り囲むように命令した。
フィデスがカトレア宮に向かっているとリベルが飛んできた。
《西の方にある宮が不審な動きをしているんだ。なんかバタバタして帰り支度を急いでいるようだった》
「おそらくルチアはそこにいる。タラン国の王太子が滞在している宮だ」
《王族が泊まっているところにフィデスだけで乗り込むつもりなの?》
「わたしはこっそり忍び込むつもりだ。見つけたら後は陛下がなんとかしてくれるだろう」
《どうやって忍び込むの?》
「どうとでもするさ。行ってから考える」
フィデスとリベルはカトレア宮の近くまで着いた。




