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30.スカイの無体な行動

 翌朝、ルチアはニナが起こしに来る前に目が覚めた。

 農場に行くための着替えをして、机の引き出しを開けて昨日貰った宝石を取り出した。

 ルチアは鏡の前に行きネックレスをしてしばらく眺めた。


《すごく似合ってるよ、ルチア》


「そう?でもこんな服じゃ合わないわ」


《そんなことないよ。ブルーシルバーの髪と碧眼と蒼い宝石が一体感があって服なんて関係なく見えるよ》


「ありがと、いつそんなお世辞覚えたの?」


 ルチアは笑いながら宝石が見えないように服の中側に入れた。


 ルチアは朝食の支度を手伝い、朝食を食べて片付けが終わると農場の手伝いに行った。

 野菜の収穫をしていたが、いつもなら牛の世話をして朝食を食べてから農場に来るスカイが今日は姿を見せなかった。

 一緒にいたモリーにスカイのことを尋ねると、今日は用事があって夜遅くまで帰ってこないと言っていた。どんな用事かは聞いていないとモリーは言った。


「恋人でもできたんだろうかね。こんなことは初めてだよ」


 モリーは少し嬉しそうに話した。


 夕方になり、ルチアたちは農場から引き揚げて家に戻った。

 ヤンが風呂に入っている間にルチアとモリーが夕食の支度をして、ヤンが風呂から上がるとルチアが次に風呂に入った。

 ルチアは服を脱ぎ、身体に密着しているネックレスを愛おしそうに触った。ネックレスを首から外し、宝石を眺めた。

 まるでフィデスの瞳を見ているように思ったルチアは裸を見られているような気になり慌ててネックレスを服の下に隠した。


 今日の夕食はスカイがいないので四人で食べた。抑制係のスカイがいないのでニナのおしゃべりはいつにも増して饒舌だった。

 スカイの話にもなった。

 スカイが夕食を家族と共にしないなんて初めてのことで、ニナの憶測が爆裂していた。

 それに乗じてモリーも恋人説を訴えた。

 本人がいないところであまりにも突飛な話に発展していきそうだったのでヤンが一言言った。


「スカイはそんな男じゃない」


 ヤンの低く淡々とした言葉でニナはそれ以上何も言わなかった。

 ヤンはスカイの気持ちを知っている。だからここで繰り広げられた話が全部間違っていることを言いたかったのだろう。

 事情を知るルチアはいっそのことニナやモリーの憶測通りならどんなに良かっただろうと思った。


 夕食後リベルと部屋に戻ったルチアはクローゼットから服がはみ出しているのを見つけた。


「あれ、いつも服を挟まないように気をつけて扉を閉めているんだけど…」


 ルチアはそう言いながらクローゼットの扉を開けた。


「!!」


 フィデスに貰ったプレゼントの箱が全部なくなっていた。

 ルチアはニナが持ち出したのかと思い、ニナの部屋を訪ねた。


「ニナ、公爵様からのプレゼント知らない?」


 ニナはキョトンとした顔をして首を横に振った。


「どうしたの?部屋にないの?」


「……ない。宝石以外全部ない…」


 ルチアは気を落としたように俯いて言った。


「!…まさか泥棒⁈ でも公爵様からのプレゼントだけ盗んでいくなんてあり得ないわ。まあ、一番高価な品だけどね。でも昨日の今日でしょう?誰が知って盗むというの……」


 ニナは言いながら何かに気づいた。同時にルチアも同じことを考えた。


「…兄さん?」


「…あり得るわね。昨日あんなに怒っていたもの。今日居ないのもそのせいかも?」


 ニナは両腕を組んで眉間にシワを寄せながら言った。


「帰って来たら二人で問い詰めてやる?」


 ルチアは俯いて首を横に振った。


「もういいわ…どうせ兄さんのことだから公爵様に返しに行ったのよ。だから今日遅いのよ」


「王都まで行ったのかしら⁈でも王都なら二日はかかるでしょ?」


 ニナは驚きながら言った。


「おそらく公爵領よ。ここの隣の領地だから一日あれば行って帰って来れるわ」


 フィデスが王都にいたとしても領地の屋敷に返せばすぐにフィデスの元に伝わるだろう。

 フィデスの好意をこんな形で無にすることになって、ルチアはもうフィデスには顔を合わせられないと思った。返すにしても自分の気持ちを誠意を持って伝えるつもりだったのに。

 これでもう、家を出るにあたってフィデスを頼ることはできないとルチアはかなり落胆した。


 部屋に戻ったルチアはリベルに話しながら涙が出てきた。


《ルチア、今から公爵に会いに行こうよ。公爵に謝って家を出る手助けをしてもらおう。僕は元気のないルチアをこれ以上見たくないんだ》


 ルチアは涙を拭きながら頷いた。


 リベルを大きくして窓から抜け出したルチアは公爵領に向かった。


「公爵領にいなかったら王都に向かうの?」


《空を飛べば王都まで一、二時間で行けるよ》


 自慢そうに言ったリベルがルチアは頼もしく思えた。


《そういえば公爵の屋敷を知らないな》


「公爵領なんだから一番大きな屋敷を探せばいいんじゃない?きっとすごく大きなお城みたいな屋敷よ。天文台でさえお城のようだったのだから」


 天文台の近くまで来たとき塔の方に灯りが見えた。


「リベル、天文台に灯りが見えたわ。きっと公爵様は天文台にいるわ」


 リベルは天文台に向かって飛び、崖の上に降りた。

 ルチアはリベルから降りると塔に向かって叫んだ。


「公爵様!おいでになっていますか!」


 何の反応もない。ルチアはもう一度叫んだ。


「公爵様!いらっしゃいませんか!ルチアです!リベルもいます!」


 塔の上の窓からランタンをかざした人影が見えた。


「公爵様!」


「ルチア?すぐに降りる!」


 灯りが消えてしばらくすると息を切らしたような呼吸音と走って来る足音が聞こえた。


「ルチア!君には驚かされるな。突然どうした?」


 ルチアはランタンに照らされたフィデスの顔を見て、どうしてかわからないがものすごく安堵して懐かしく感じた。


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