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29.再び公爵から贈り物

 盗賊襲撃事件から数日が経った。

 ルチアが畑から戻るとニナが玄関先で待っていた。


「ルチア姉、早く早く!」


「何事なの?今日はずいぶん汚れたから先にお風呂に入ろうと思ってるんだけど」


 浴場はキッチン横の外に隣接されたあって、いつも夕食前に入ることが多かった。


「とにかく早く家の中に入って来て」


 ニナはルチアを急がせたが、顔はニヤけていた。

 ルチアは浴場でとりあえず手と顔を洗ってキッチンの方から家に入った。


「ルチア姉、見て見て!」


 ニナが玄関先を指差した。差した方向にプレゼントらしき箱がいくつか積み重ねられていた。


「何これ?」


「ジャジャーン!ルチア姉に公爵様からのプレゼントです!」


 ニナは自分が貰ったように嬉しそうに言った。ルチアは困惑した。


「さっき届いたのよ。ほら薔薇の花束もあってカードがあるでしょ。“ルチルアーヌ嬢へ フィデス・コンコルディアより”って。ねえ、早く開けて見せて!」


 ルチアはニナにせかせれて渋々一番大きな箱から開けた。中にはシンプルだが上等な生地で作られた普段使いのできる洋服が入っていた。


「わあ、素敵!ルチア姉にとっても似合いそう。センスあるわね公爵様」


 ルチアは先日フィデスとカフェに行く途中周りから見られて恥ずかしいと思ったことを悟られたのだろうかと思った。


「ほらルチア姉、他のも開けてよ」


 次の箱には帽子が入っていた。麦わらで編んだ帽子だがツバが広くレースが何重にも施されレースで作られた花が飾られていた。その次の箱には革製のブーツが、その次の箱には歩きやすそうだがおしゃれな靴が入っていた。


「わあ、見たことがない素敵な麦わら帽子!このブーツも高そう。この靴、普段から履けるけどおしゃれよねぇ。その小箱には何が入っているの?」


 ルチアは最後の小箱を手に持っていた。小箱をそっと開けると青いベロア調の宝石箱が入っていた。ルチアは宝石箱を取り出した。箱の底にメモのようなものがあった。

 ルチアは宝石箱の蓋を開ける前にメモを広げた。


“ルチアへ

以前あげたネックレスを身につけているのを見たことがなかったので好みではなかったかと思い違う宝石にしてみた。そう高くはないので気にしないで欲しい。 フィデス”


 ニナがルチアの後ろに来てそっとメモを見た。


「えーっ!前にも宝石貰っていたの⁈」


「ニナ!人の手紙覗くなんて……前の宝石はリベルとお揃いにくれたの」


「へぇ〜。今度は公爵様とお揃いだったりして」


 ニナはニヤニヤしながら言った。


「そんなわけないでしょ」


 ルチアは宝石の蓋を開けた。 

 フィデスの蒼眼を思わせるような色のネックレスが入っていた。


「あら〜、公爵様の瞳とお揃いじゃない」


 ニナはますますニヤけた顔をした。

 ルチアはすぐに宝石の蓋を閉じた。


「こんなにたくさん貰う理由がないわ。これは全部返す」


 ルチアは元のように丁寧に全てを片付けた。


「どうしてよ。このぐらい公爵様の懐は痛まないわよ。貴族が身につけるような豪華なものはないんだもの。公爵様はルチア姉にどうしても王都に来てもらいたいんだね」


 ニナはルチアを見てニヤニヤ笑った。


「わたしではなくリベルね!公爵様はリベルを欲しがっているんだから」


 ルチアは自分にも言い聞かせるつもりで強く言った。


「そうかな〜。まあ鈍感なルチア姉にはわからないか」


 ニナはすまして言った。


「ニナ、前にも言ったけど相手は公爵様よ。大貴族なのよ。下手なこと言っていたら不敬罪で捕まるわよ」


 ルチアはニナを睨みながら言った。


 玄関が開いてスカイが入って来た。

 スカイは高級品そうな箱を怪訝そうな顔をして見ながら言った。


「何なんだこの箱は?」


「公爵様からルチア姉にプレゼントだよ」


 ニナが自慢げに言った。


「チッ、金持ちの道楽に付き合うんじゃないぞルチア。平民にこんなものは似合わないんだから全部返せ!」


 スカイは苦々しげな顔をして舌打ちしながら言った。

 ルチアは言われなくても返すつもりだったが、スカイの言い方にムッときて言い返した。


「公爵様は道楽にこんなことなさる方じゃないわ。上等なものだけど平民でも着れるようなものをくださっている。ちゃんと考えてくれているの。兄さんは公爵様のこと何も知らないのに悪く言わないで!」


 スカイは大きく目を見開いてルチアを見た後、ショックを受けたような顔をして顔を逸らし舌打ちをしながら外に出て行った。


「うわー、ルチア姉がスカイ兄に反抗するところ初めて見た。スカイ兄の顔見た?かなりショック受けてたよ。でも今のはスカイ兄が悪い。言ってやって良かったよ」


 ルチアは大きくため息をついた。


「ニナ、悪いけどこのプレゼントとりあえず部屋に持って行くから手伝ってくれる?」


「りょーかいです」


 ルチアとニナはプレゼントを二階のルチアの部屋に運んだ。


《公爵も必死だね。よっぽど気に入ったんだね》


 ベッドにいたリベルが意味ありげな言い方をした。


「リベルのことをね。わたしが行くと言わなきゃリベルは手に入らないものね」


 ルチアはプレゼントの箱をクローゼットに片付けながら小箱をどうしようか悩んでいた。


《それ常につけておいたら?つけてないときっとまた宝石送りつけてくるよ。僕とお揃いの宝石より小さいからつけていてもあまり目立たないと思うよ》


 ルチアは宝石の蓋を開けてネックレスを取り出した。フィデスの瞳と同じ色の、しかも瞳と同じぐらいの大きさの丸い形をしている宝石だ。

 リベルの言うように確かにつけていても気にならないぐらいの大きさだ。

 ルチアは宝石を箱に片付けて前に貰った宝石が入っている机の引き出しに入れた。


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