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25.空中散歩

 スカイの気持ちを知ってから三日が過ぎた。

 ルチアはスカイの言葉が頭から離れず、憂鬱な日々を過ごした。

 ルチアが何度もため息をこぼすし元気がないので、モリーが心配になって二人だけになったとき聞いてきた。


「ルチア、何か心配事でもあるのかい?」


 ルチアはモリーがスカイの気持ちを知っているのだろうかと考えた。


「兄さんの結婚のことだけど…」


「ああ、なんかね、まだ二年は結婚したくないと父さんに言ったそうだよ。ルチアは何を気にしているんだい?」


 モリーには話してはいないのだとルチアは思った。


「ほら、兄さんがお嫁さんをもらうと、血の繋がらないわたしが居たのではお嫁さんが嫌かなって…」


 ルチアは視線を落として言った。


「まあ!そんなこと考えていたのかい」


 モリーはルチアを抱きしめた。


「ごめんね、変な気を使わせてしまったね。ルチアはわたし達の家族に間違いないんだからそんなこと気にしなくていいのよ。それを嫌がる嫁ならこっちからお断りだよ!」


 ルチアはモリーの温もりに懐かしさと安心感を抱いた。

 ルチアは心の中でモリーに謝った。本当の問題はそこではない。こんなにも想ってくれている家族から離れようとしていることをルチアは申し訳ないと思った。

 しかし、スカイの気持ちを知ってしまった以上、それに応えることは一生できないのに素知らぬ顔して一緒に住むことなんてできない。

 二年後に気持ちを伝えられて断った後のことを考えると、何も知らないまま兄妹として離れる方がいいとルチアは思った。


 その夜、リベルは元気のないルチアを慰めるために空の散歩に行かないかと誘った。

 ルチアはリベルを大きくして背に乗り空中散歩を楽しんだ。


「ありがとう、リベル」


《家にいるのが辛いならこのままアルカナ聖国まで飛んで行こうか?》


「えー、それは遠慮しとく。アルカナ聖国に行けばスローライフとは無縁になりそうだもの。それは最終手段にとっておくわ……それよりお願いがあるのだけど、公爵領を見れないかしら?」


《どこにあるの?》


「あ、わたしも知らない。もしかしたら住むところになるかもしれないから見ておきたかったんだけど残念」


《じゃあ、家に戻るね》


 リベルがUターンしかけたときルチアが何かを見つけてらしくリベルに右の方にむかって飛ぶように言った。


《何かあったの?》


「うん、ほらまっすぐ前方を見て。崖みたいなところにお城が建っていない?」


 月明かりにぼんやりとお城らしき影が浮かんでいた。


《ああ、ほんとだね。何であんな崖の上にあんなお城が?》


 ルチアは誰も昇りそうにないぐらい高い崖の上のお城に誰が住んでいるのか気になった。

 近くまで行って見るとお城のように見えたその建物は円形の屋根を持つ高い塔を中心に左右に二階建ての建物があった。


《真っ暗だから誰も住んでいないんじゃない?降りて見る?》


「そうね、ちょっとだけ」


 リベルは建物の前に降りた。

 ルチアは崖っぷちに立って周り見た。


「うわー、結構高いわよ。見て街の明かりがあんなに小さい。昼間なら壮大な景色が見れそうね。ここどこの領地かしら?誰も住んでいないなら家を出たときここに住もうかしら?」


《ダメだよルチア。きっと持ち主はいるよ》


「そうよね。持ち主と交渉しようかしら?ここならのんびり快適に暮らせそう」


《ここまでどうやって昇るつもり?》


 リベルは答えがわかっていて聞いているようで、ルチアをジトッと見た。

 ルチアはにっこり笑ってリベルを指差した。


《誰かに見られたらどうするの?》


 ルチアは大きな声で笑って言った。


「冗談よ。ここに住めれば素敵だけど仕事をしないといけないから通うのに無理があるわ」


「そこにいるのは誰だ⁈」


 建物の上から突然声がした。

 ルチアは驚いて顔を両手で覆いながら灯りがさしている上を見た。灯りが眩しくてよく見えない。


《持ち主がいたみたいだね。どうする?》


「今逃げたら大事件になるでしょ。空飛ぶ動物に乗った不法侵入少女って新聞を大きく賑わすことになるわ」


 ルチアは上に向いて叫んだ。


「すみません。こんなところに建っているので空き家だと思って。本当に申し訳ありません。すぐに出て行きますので」


「……ルチア?その声はルチアなのか?」


 ルチアは心臓が高鳴った。先ほどの怒鳴るような声ではわからなかったが、この低音の柔らかい透明感のある声はフィデスだ。


「…公爵様…ですか?」


「やはりルチアか!すぐにそちらに行くから待っていてくれ!」


 慌てたようなフィデスの声が聞こえると灯りが消えた。


《逃げるなら今のうちだけど?》


「…でも……このままいなくなったら…」


 今ルチアがいなくなっていたらフィデスはどう思うかルチアはそれが怖かった。こんな崖にしかもこんな時間にいたなんて何も説明せずいなくなるのは嫌だった。


《聖女だってことバラすの?》


「それは絶対ダメ……そうだわ、リベルは本当は成体で日頃は過ごしやすいように小さくなってることにすればいいじゃない?そうしましょう!」


《……聖女の力のことさえバレなきゃ別にいいけど》


 ルチアは最初になんて言えばいいだろうとドキドキしながらフィデスが来るのを待った。

 リベルはなるべくすぐにフィデスの目に入らないようにルチアの後方に下がってしゃがんで待った。


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