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21.澄んでいるカフェ

 ルチアがカフェとペルデルを浄化して数日が過ぎた。

 今日はニナと街に行くことになっている。が、なぜスカイが乗合馬車に乗っているのか。


「ちょっとスカイ兄、なんでいるのよ」


 ニナがスカイに向かって辛辣に言った。


「俺だって街に用があるんだよ」


 スカイは足と腕を組んで目を閉じたまま答えた。


「まったく、何の用だか……どうせルチア姉が気になってるのよ」


 ニナはルチアの耳元で言った。


「前回のことがあって心配なのよ。ごめんね、わたしが公爵様と一緒だったから」


「ルチア姉が謝ることないわ。それのどこがいけないの?過保護すぎるのよ、スカイ兄は」


 ニナはまたスカイの方を向いて言った。


「いいこと、スカイ兄。わたしたちの後を絶対について来ないでね!」


 スカイは手足を組んで目を閉じたまま微動だにしなかった。


「ついて来るつもりね。馬車から降りたら走ってスカイ兄を撒きましょう」


 ニナはルチアにこっそり言った。


「この頃よく街に行くから気になっているのよ。一緒にカフェに行ってもいいんじゃない?」


「え〜、嫌よ。スカイ兄と行ったら小言が多くて楽しめないわ」


 ニナは膨れっ面になった。ルチアは苦笑いした。


 乗合馬車が街の停留所に着くとニナはルチアの手を取って一目散に馬車から降りて走った。

 ルチアが振り向くとスカイは一定の距離を保ちながら走ってついて来ていた。


「スカイ兄来てる?」


 ニナが息を切らしながら聞いた。


「来てるわよ」


 ルチアが答えるとニナは走るのをやめ、女性専用の下着店に入った。

 ニナは窓の外を見て、スカイが入り口付近で立っているのを確認すると、店員に言った。


「変な男がつけて来ているの。ほら入り口にいるあの男。悪いけど裏口から出してもらえない?」


 ルチアはギョッとした。スカイが通報されたらどうするのかと思った。

 店員も怪訝そうな顔でスカイを見ていた。


「ニナ、それはちょっと……すみません、あの男性は兄なんですが、過保護すぎて困ってるんです。ちょっとの間姉妹二人で楽しみたいので裏口から出てもいいですか?」


 店員は顔をにっこりして頷いて裏口から出してくれた。


「不審者でもよかったじゃない」


「兄さんが通報されてもいいの?」


「あー、それは困るかな」


 ルチアとニナはカフェに着いた。前のように長蛇の列はなかった。その代わり、敷地内の外にもテーブルが置かれ、賑わっていた。

 ルチアとニナはカフェに入った。


「いらっしゃいませ。お外の席になさいますか、店内になさいますか?」


「店内で」


 ニナはすかさず言った。外だとスカイに見つかるからだろう。

 ルチアたちは店の奥のテーブル席に座った。

  ウエイターが注文を聞きに来た。ニナはいつものアップルティーとおすすめケーキを頼んだ。ルチアはハーブティーとおすすめケーキを注文した。

 ルチアは店内を見渡した。

 前回来たときより空気が澄んでいて、店員も客もギスギスしていないとルチアは思った。


 しばらくするとペルデルが注文の品を運んできた。


「お待たせしました。アップルティーとハーブティーとおすすめケーキが二つですね。本日のおすすめケーキはパンプキンタルトに生クリームをトッピングしました」


 ペルデルは品物を置きながら言った。


「数日ぶりのご来店ありがとうございます。わたし今から休憩なんですが、こちらの席にご一緒してもよろしいでしょうか?」


 ルチアはどうしてと驚いた。ニナは目を輝かせて願ってもない申し出だと頷いた。

 ペルデルは昼食の賄いサンドとアッサムティーを持って来て、ルチアの隣に座った。

 ニナは一瞬不満そうな顔をしたが、横にいるより顔が良く見えるので満足した。

 ルチアはどうしてわたしの隣にと思った。もしかして記憶が消えていないのか。


「賄いサンドですがいかがですか?もちろんお代はいりませんよ」


 ニナは喜んで一つ貰った。ルチアはケーキがあるからと断った。

 ペルデルはサンドで口元を隠しながらルチアに小声で言った。


「あの夜のこと全部は忘れていませんよ」


 ルチアは目を見開いてペルデルを見た。


「そんな顔をしないでください。わたしはお礼を言いたかったのです。閉店後話しませんか?」


 ルチアはペルデルに記憶があるなら話を聞かないといけないと思った。今夜リベルに連れて来てもらおうと思い、頷いた。


「良かった。では閉店後待ってます」


 ペルデルは残りのサンドを頬張り急いでお茶を飲んで立ち上がった。


「休憩時間が終わるのでこれで失礼します」


「えっ、もう?」


 ニナががっかりして言うとペルデルはにっこり微笑んで厨房に下がった。


 ルチアたちがカフェから出るとスカイが顔に汗をたっぷり流してキョロキョロしている姿が見えた。


「まだスカイ兄と合流したくないな。洋服店に入ってもいい?」


 ニナがすぐ近くの洋服店を指した。


「いいわよ。わたしは本屋に行きたいから兄さんを連れて行くわ。乗合馬車の時間までダン爺の本屋にいるからいつでも来て」


「了解です!」


 ニナはそう言うと洋服店に入って行った。

 ルチアはダン爺の本屋に向かった。スカイがルチアに気づいて後をつけて来た。ルチアはそれに気づいていたが素知らぬふりをしてダン爺の本屋まで行き、入り口の前で振り返った。


「兄さん、わたし乗合馬車の時間までここの本屋でいるから」


 そう言ってルチアは店に入った。


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