19.カフェへ侵入
リベルは朝には元の大きさに戻っていた。
寝ている間に戻ってしまい、どのくらいの時間効果があるかわからなかったので聖女の力で元に戻すことができるかやってみることにした。
ルチアとリベルは朝早くから裏山の林に向かった。
まずはリベルをルチアが乗れる大きさにしてみた。
「クレス!」
リベルは光に包まれグングン大きくなった。
続いてルチアは元に戻るようにイメージをした。
「レスティートゥオー!」
リベルは元の大きさに戻った。
「わたしって天才?他に何が必要かな?」
《もし人に見られたときに忘却が必要だと。あとはルチアの浄化があれば怖いものなしです》
「忘却は今は試せないわね。他はそのときになってイメージしてみればいいか。じゃあ帰ろう。お腹すいちゃった」
ルチアとリベルは急いで家に帰った。
キッチンで朝食の支度をしていたモリーがルチアを見て驚いた。
「まあ、珍しい。朝早くからどこに行っていたの?」
「ん、リベルと散歩。たまには朝早い澄んだ空気を吸いたいなって」
ルチアは手を洗ってくると朝食の準備を手伝った。
ヤンとスカイが牛の世話から帰ってきた。ルチアは二人に朝の挨拶するとスカイに何か言われる前に部屋に戻ろうとした。
「ルチア、朝食は食べないのか?」
スカイが低くそっけない声で言った。昨日のことまだ怒ってるなとルチアは思った。
「ニナを起こして一緒に食べる」
ルチアは振り返らずにそう言って階段を昇った。またニナのお喋りに助けてもらわなければと考えながらニナの部屋のドアをノックした。
「ニナ、起きてる?」
返事がない。いつも起きている時間を過ぎている。
「ニナ、入るわよ」
ルチアはドアを開け中に入り、ベッドを見たがニナが見当たらない。
もう起きているのかと思いルチアはニナの部屋から出て、自分の部屋に行った。
ルチアがドアを開けると部屋の中は瘴気が漂っていた。
「何これ⁈」
ベッド横のサイドテーブルに見たことのない容器が置かれていてその周りが特に瘴気が濃かった。
「ルストラーレ!」
ルチアは部屋の中を浄化した。念の為容器に向かっても浄化した。ルチアは容器を手に取った。陶器でできていて蓋があり、蓋には均等に穴が空いていた。ルチアは瘴気がないことを確認して元の位置に置いた。
キッチンに行くとニナは朝食を食べていた。
「ニナ、いつ降りて来ていたの?」
「おはよう、ルチア姉。ついさっきよ。ルチア姉を起こそうと部屋に行ったらいなかったから。どこにいたの?」
ニナがルチアの部屋に入ったあとすぐにルチアが二階に上がりニナの部屋に入った。その間にニナは下に降りた。入れ違いになったんだなとルチアは思った。
「そうだ、ルチア姉の部屋に香炉を置いといたから。昨日カフェで公爵様が余分にお金置いて行ったからお釣りを渡そうとしたら好きな物を買えばいいって言ってくれて。それでペルデルさんがいい匂いがするからってカフェで売っている香炉をルチア姉のお土産に買ったのよ。昨日渡し忘れたから今朝火をつけて部屋に置いたわよ」
ルチアは目眩がしそうだった。ニナが使わなくて良かったと思った。
「ありがとう。買ったのは一つ?」
「うん、わたしはそれよりブローチの方が良かったから」
ルチアはどきりとした。
「そのブローチはどこで買ったの?」
「え?まだ買ってないわ。昨日カフェを出てからすぐに帰ったでしょう。雑貨屋さんに寄りたかったのにルチア姉が急かすから」
ルチアはホッとした。ニナはまたすぐに街に行くつもりだろう。そしたら必ずカフェにも寄るはずだ。
今晩必ず浄化しないといけないとルチアは思った。
夕食の後風呂に入り、ルチアは部屋で日が暮れるのを待った。
失敗したらどうしようとルチアはかなり緊張していた。その緊張をリベルは察したのか励ますように言った。
《ルチア、大丈夫。ルチアの力は誰にも負けない。前世でも圧倒的な力で魔王は戦わずに逃げたぐらいだから。それに僕だっています。前の黒紫竜があれだけ強かったのだから僕も大きくなれば強いはずです。》
ルチアはリベルに向かって苦笑いをした。
そう大丈夫、わたしは強い、リベルも強いと頬を両手で軽く叩きながらルチアは自分に言い聞かせた。
日が暮れて外は真っ暗になった。
リベルを窓から出し、空中で大きくした。ルチアも窓から出て大きくなったリベルの背中に飛び乗った。
《じゃ出発します》
リベルは空高く舞い上がった。そのまま街に向けてゆっくりと飛んだ。農場地域は真っ暗だったが、街が近くなるとまだポツポツと明かりがついていた。
リベルはカフェの上空までくると下降して様子を伺った。
カフェはもう閉店していた。
リベルは地上に降りた。ルチアはリベルの背から降りてカフェを眺めた。
「カフェ全体を浄化すれば早いだろうけど、誰かが見ていても困るからここはやっぱり中へ入らないとダメよね」
ルチアは小声でリベルに言った。
《そうですね。鍵が掛かっていたらどうします?》
ルチアは考えた。鍵を開けるイメージをすれば開くだろうか、でも鍵が開いたとしてもドアを開ければ気が付かれるのではないかしら。それならいっそのことドアを静かに消し去ってしまえばいいのでは。
「その大きさではリベルは入れないわね。元に戻すわ」
ルチアはリベルを元の大きさに戻した。
ルチアはカフェのドアの前に立ってドアが消えていくイメージをした。
「デレオ!」
淡い光がドアを包んですぐにドアが光とともに消えた。
《今の光で気づかれたかも》
「本当ね。光が出ない方法はないのかしら。さ、すぐに入るわよ」
ルチアたちはカフェの中に侵入した。




