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18.聖女の能力

 ルチアたちが家に帰るとスカイが苛立ちを隠せない顔して待っていた。

 事情を聞かれたが、今回ばかりはニナのおしゃべりグセが幸いしてスカイの耳を塞ぐ結果となり、ルチアは素知らぬ顔で夕食の手伝いを始めた。


 夕食の片付けが終わるとルチアはすぐに部屋に戻り、本を読みながらリベルの帰りを待った。

 夜遅くにルチアの部屋の窓がコツコツと鳴った。リベルが帰ってきたのだ。

 ルチアは急いで窓を開けてリベルを向かい入れた。


「お疲れ様、リベル。早速だけどどうだった?」


《大変なことになるかも知れません》


 リベルはまずフィデスがカフェの周りの店などで聞き込みをした話をした。

 

 半月ほど前にオープンされたカフェはすぐに若い女性客で賑わうようになった。目当てはもちろんオーナーでありウエイターでもあるペルデル。その頃から一人二人と行方不明の女性が出るようになったが、カフェと関係しているとは誰も考えてはいなかった。初めのうちは田舎が嫌になり王都に行っただとか、駆け落ちしただとか身内も諦めていたようだった。

 ここからはフィデスが伯爵から聞いた話だが、オストラル伯爵家に出入りの商家の娘が行方不明になって伯爵に相談したことがきっかけで、伯爵家領土でこの半月に五人の女性が行方不明になっていることがわかった。


 フィデスは聞き込みを終えるとカフェの近くで張り込みをした。

 陽が沈む頃、カフェは店を閉めたがまだ何人か客が残っているようだった。

 フィデスはリベルを連れて窓からこっそり中を覗いた。


《あのカフェには確かに瘴気が漂っていました。ペルデルという男も見ましたが、魔王ではありません。眷属かといえばよくわかりませんが、ただ大変なものを見てしまったのです》


 ルチアは固唾を飲んでリベルの言葉を待った。


《あのペルデルとかいう男、残っている女性客の首筋を噛んでいたのです》


「首筋を⁈」


《はい。ペルデルの口からは血が滴り落ちていました》


 ルチアはゾッとした。


「それで?女性客はどうなったの?」


《それが……女性客は三人いたのですが、みなさん噛まれても痛がる様子がなく、その、なんだかうっとりとした顔をしていまして…まるで噛んで欲しそうにしていました》


 ルチアはどういうことだろうと思った。噛まれても平気どころか噛んで欲しいなんて。


「その光景を公爵様も見ていたの?」


《それが……カフェの中は真っ暗で、僕は夜目が効くので見えましたが、公爵は見えていないと思います。そう言っていましたから》


 フィデスとリベルはその後本屋に戻り、フィデスはダン爺に聞き込みの話やオストラル伯爵の話をして宝石と籠を返した。そのときに閉店後カフェを覗いたが真っ暗で何も見えなかったと話していた。


《人の血を吸う妖怪の類かもしれません》


 ルチアは頭を抱え込んだ。

 力は使いたくないし平々凡々に生きたいのに、そんな話を聞いてしまっては放っておけるわけがない。


「リベル、どうしたらいい?」


《このまま放っておけばたくさんの女性が被害に遭いますね。浄化するしかないです》


「妖怪にも効くの?」


《浄化の作用は全てに効きます。どのように効いて結果どうなるかは対象物によって異なると思いますが》


 ルチアは大きくため息をついた。


「やるしかないよね。誰にも知られずに浄化するには閉店後を狙うしかないわね」


 ルチアは閉店時間にどうやって行くか考えた。午後の乗合馬車で街に行って待機するしかないが、陽が暮れても家に帰らなければ家族が心配する。

 夕食後に部屋にいるふりをして出かけたとしても乗合馬車は出ていない。街へは歩けば一時間以上かかる。

 ルチアはまた大きくため息をついた。


「リベルがわたし一人でも乗せて飛べる大きさならなぁ」


《……もしかすると聖女の力で一時的に大きくできるかもしれません》


「そんな都合の良い力ってあるの?」


《憶えていませんか?竜によって番になった聖女の力がそれぞれ違っていたことを。ルチアの前世は圧倒的な浄化の力があったのでそれでこと足りましたが、他の聖女はルチアほどの浄化の力がなく、組み合わせて魔物を退治していました》


 ルチアは思い出そうとしたが、他の聖女のことはほとんど憶えていなかった。


《例えばですね、白の竜の番は動きを止める力があって魔物の動きを止めてから浄化をかけていました。赤の竜は炎ですね。炎で包んでその隙に浄化を行っていました》


「それとリベルを大きくすることとなんの関係があるの?」


《アテネの力は底知れなかったんです。浄化以外使ったことがなかったけど、本当はもっと他にも使えると思うんです。試してみませんか?》


「どうすればいいの?」


《浄化のときと同じです。イメージして浮かんだスペルを言うんです》


 ルチアはリベルを見つめてほんの少しだけ大きくなるようにイメージをした。


クレス(増大する)!」


 そう言ってルチアはリベルに手をかざした。

 淡い光がリベルを包み込みリベルはひとまわりだけ大きくなった。


「うわっ、わたしってすごい⁈この大きさでどのくらいいられるの?」


《僕にもわかりませんが、本来の姿ではないので僕の耐力次第でしょうね》


 ルチアは明日陽が暮れてからカフェに行くことにした。

 もしものときのために浄化以外の力が使えるようにいろいろとイメージしてどんなことができるか明日、林の中でやってみることにした。

 

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