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15.疑惑のカフェ

 ルチアはダン爺にカフェに変わりがないか聞いた。

 カフェ自体は見た目に変わりはないが、行方不明者は増えていた。


「公爵様の領地にも新しいカフェができたのですか?」


 ルチアが聞くとフィデスは少し考えてから言った。


「いや、新しいカフェはできていなかった……」


「じゃあカフェは関係ないのかしら」


 ルチアが言うとダン爺が絶対に怪しいと言い張った。


「カフェはできていなかったが、女性専門の洋服店は三ヶ月前にオープンして半月ほど前には閉めていた」


 フィデスは不可解な表情を浮かべながら何かを考えているようだった。


「その店に黒髪の朱眼の店員いませんでしたか?」


 ルチアがダン爺と目配せしながらフィデスに尋ねた。


「いや、わたしは行ったことがないのでわからないが、話によると若い女性に人気で連日客が溢れかえっていたと聞いている。そのせいか、揉め事も絶えなかったそうだ」


 フィデスが言うとルチアとダン爺はお互い目を合わせて頷いた。


「ここのカフェでも同じようなことが起きています。ウエイターを取り合って争いが頻繁に起こっているらしいです」


 フィデスはルチアの言葉を聞いてとりあえずカフェに行ってみようと言った。

 ルチアもニナが気になるので早くカフェに行きたかったが、あのウエイターには会いたくないと心の底から不安が湧いていた。しかし行かないわけにはいかないのでフィデスと共に本屋を出てカフェに向かった。

 リベルは目立つので本屋に置いて行くことになった。


「あのカフェか、目立っているな」


「はい。この辺りには不釣り合いな装飾です。大勢並んでいますね」


 ルチアはその並んでいる列の中にニナの姿を見つけた。ルチアは少し安堵した。


「ニナが並んでいます。本当はいけないことだけど、ニナを利用して割り込ませてもらいますか?」


「そうだな、申し訳ないがそうさせてもらおう」


 ルチアは頷くと並んでいるニナに駆け寄った。


「ニナ、お待たせ!順番取ってくれてありがとう」


 ルチアは周りに聞こえるように少し大きめの声で言った。


「ルチア姉!どうしてここに……」


 ニナが驚きながら発した言葉をルチアは遮って言った。


「公爵様をお連れしたわよ。今日ここで一緒にお茶する約束でしょ」


 ルチアはフィデスの方を見てニナに言った。


「え、あ、公爵様!」


 ニナは再び驚いた。


「やあニナ、久しぶりだね。今日は順番待ちしてもらってありがとう」


 フィデスもルチア同様周りに聞こえるように言った。

 ニナの友人がフィデスの顔を見て頬を赤く染めながら、ニナにどういうことか問い詰めた。

 ニナも何が何やらわからなかったがとりあえず二人の言う通りに答えた。


「姉と知人の公爵様なの。わたし言い忘れていたようだわ。ごめんね、同席させてね」


 ニナが友人に言うと友人は頷いてから嬉しそうにフィデスに挨拶をした。


「はじめまして公爵様。わたしはニナの友人のマリーといいます。今日はご一緒できて光栄です。公爵様はニナのお姉さんの恋人ですか?」


 ルチアもニナも慌てて否定した。フィデスは笑いながら首を横に振った。


「じゃあわたしにもチャンスがありますか?」


 マリーははしゃぎながら言った。ルチアは何て積極的で臆しない子だろうと思った。


「マリー、相手は公爵様よ。わたしたち平民とは違うの。変なこと言わないで」


 ニナはマリーに困り顔をして言った。


「あら、結婚するわけじゃないし、ちょっと付き合うだけなら身分なんて関係ないじゃない?そう思いませんか、公爵様?」


「はは……そうだな、だがわたしは付き合うなら将来を見据えて恋人を選ぶかな」


 フィデスは少し砕けたような笑い方をして言った。


「そうなんですか……残念だわ、公爵様のような素敵な男性と一度お付き合いしてみたかったのですけど。今日だけで我慢します」


 ルチアは幼すぎて何も考えずに言っているのか、計算して言っているのかどちらにしてもすごい子だなと思った。

 そうこうしているうちにカフェに入れる順番が来た。

 四人は中に入り、入り口近くの席に案内されて座った。

 ルチアが例のウエイターを探しているとニナがコソッと耳打ちをしてきた。


「あのウエイターの名前がわかったの。並んでいるときに近くの人が聞いたって言ってて。ペルデルだって」


 ルチアはそうなのとニナに返答したが、名前などどうでもよかった。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」


 ペルデルではないウエイターが注文を聞きにきた。


「あの…ペルデルさんは今日は?」


 ニナが聞くとウエイターはまたかというような顔して答えた。


「オーナーは今忙しくて厨房でいます。それでご注文は?」


 あの黒髪朱眼はオーナーなのに何のためにウエイターもしてるのか、もしかしてウエイターをしながら女性の品定めでもしているのかしらとルチアは思った。

 四人はそれぞれオーダーをして、それぞれの思惑でペルデルが現れるのを待った。

 マリーはニナから話を聞いて楽しみにしていた。

 ニナはもう一度あの美しい顔を拝みたいと思っていた。

 フィデスは疑惑の人物がどのような人か早く見てみたかった。

 ルチアは背筋が凍るようなあの顔を二度と見たくないが、事件に関係しているのなら解決の糸口を見つけるために仕方がないと思った。


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