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14.公爵と再会

 ルチアとニナが街に出かけてから三日目に、ニナは友人とまた街に出かけた。

 ヤンとモリーには友人がどうしても一緒に買い物に付き合ってくれと頼むからと言い訳をしていた。 

 ルチアはニナが心配で、畑仕事を手伝いながら考え事をしてボーっとしていることが度々あった。その都度リベルが声をかけてきていたが、見かねたスカイが畝を作っている手を止めて言った。


「ルチア!ほらまたぼうっとしてる。何か心配事か?」


 ルチアはスカイに相談するかどうか迷った。

 そこに馬の蹄の音が聞こえてきた。ルチアとスカイは音の聞こえる方を向いた。誰かがルチアたちの方へ馬で駆けてきていた。

 馬が近くになるにつれルチアは胸が高鳴り、スカイは怪訝そうな顔になった。


「公爵様……」


 ルチアが呟くとスカイが大きな声でフィデスに向かって言った。


「何か用ですか、公爵様!」


 その声は威圧的に聞こえた。

 フィデスは馬に乗ったままルチアの近くまで来た。


「やあ、ルチアにリベル、変わりはないか?それにルチアの兄殿、仕事中に申し訳ない」


 フィデスが挨拶をするとスカイは呟いた。


「申し訳ないと思うなら来るなよ…」


 その声はルチアには聞こえた。フィデスに聞こえなかっただろうかとルチアは恐る恐るフィデスの顔を見た。フィデスは安堵に似た表情を浮かべていた。


「今わたしの領地から急いで来たんだ。わたしの領地で起きた事件と類似した事件がここの領地でも起きたとオストラル伯爵から連絡を受けてね。ルチアは無事か気になって寄ったんだが」


 事件とはもしかして行方不明者の話だろうかとルチアは思い尋ねてみた。


「事件ってもしかして街で行方不明になっている女性のことですか?」


「!…何か知っているのかい?」


 フィデスは馬から降りてルチアに近寄った。とっさにスカイがルチアの手を引いた。

 ルチアはスカイの行動にびっくりしたが、それよりもスカイが鋭い目つきでフィデスを睨みつけている方が気になった。


「兄さん、大丈夫よ。公爵様はわたしたち平民を見下すような方じゃないから」


 スカイは驚いた顔をしてルチアを見た。


「どうしてお前がそう言い切れる?公爵様と何かあったのか?」


「この間リベルに会いに来て話をしただけよ。でもその会話の中でそう思ったの」


 ルチアはスカイに握られた手をそっと離し、フィデスに向き直った。


「三日前、街に買い物に出かけたの。そのとき知り合いの本屋のお爺さんに聞いたのです。公爵様の領地でも同じことが?」


 フィデスはルチアに何故一ヶ月前ここから予定より早く領地に戻ったのかを詳しく話した。

 フィデスがオストラル伯爵の領地に滞在しているとき、自分の領地で住んでいる前公爵、つまりフィデスの父親から連絡が来た。

 領地に住む若い女性が次々と行方不明になっているという。

 フィデスは急いで領地に向かい、詳細を聞いて捜査に携わった。

 捜査をしている段階で行方不明者の一人が川から遺体で見つかった。その女性に目立った外傷はなかったが痩せこけていて、首筋に虫刺されのような痕が二箇所あった。


「先日オストラル伯爵から連絡を受けて、ここの領地でも半月ほど前から行方不明者が出ていると聞いて、わたしの領地はその遺体が見つかった半月前から行方不明者が出なくなったので、もしかしたら犯人はこっちにいるのでは急いで来たんだ」


 ルチアは顔が真っ青になった。あのウエイターが怪しい。


「ニナが、ニナが危ないかもしれない!」


 ルチアは手で顔を覆った。


「ルチア、大丈夫か?何か知ってるんだね⁈」


 フィデスはルチアの肩を両手で支えた。

 スカイがフィデスからルチアを奪って抱きしめて聞いた。


「ルチア、ニナが危ないってどういうことだ?」


《ルチア、冷静になって。今すぐ街に行こう》


 リベルがルチアの側に来て言った。


「……そうね、すぐに街に行かなければ…」


「わたしの馬で今すぐに行こう」


 ルチアの言葉を聞いてフィデスが言った。


「待て!そんなこと…」


 スカイが止めようとしたがルチアはスカイを振り切った。


「兄さん一刻も早く街に行きたいの!公爵様お願いします」


 フィデスは頷いてルチアを馬に乗せ、自分も飛び乗った。

 リベルも飛んでルチアたちの後をついて行った。

 ルチアは街へ行く道中、三日前のことをフィデスに話した。


「じゃあ君はそのカフェのウエイターが怪しいと思うのだな」


「はい。カフェがオープンしたのが半月前なので店舗自体が隠れ蓑かもしれません」


 街が近づくとリベルはルチアとフィデスの間に座って隠れた。

 ルチアたちは一旦本屋に立ち寄った。


「ダン爺、こんにちは」


 ルチアが本屋の扉を開けながら言った。


「おや、ルチア。伝書鳩まがいの生物を早速連れて来たのかい?」


 ダン爺は読んでいた本から視線をルチアに向けた。


「何と!こりゃ珍しい生き物を連れて来たもんじゃ。しかも二人も」


「えっ、二人……?」


 ルチアは振り返ってフィデスを見た。


「やだ、ダン爺。珍しいって……」


「ルチアが男性といるところなんて見たことないからな。珍しいだろ?」


 ダン爺はニヤニヤしながら言った。ルチアは少し顔を赤らめながらフィデスを紹介した。


「えーとこちらは隣の領地の公爵様です。公爵領でも行方不明者が出てて捜査しているんですって」


「はじめまして、フィデス・コンコルディアといいます」


 フィデスが丁寧にお辞儀をした。


「これはこれは、公爵様がそのように丁寧に。わしはダン・スワロブといいます。みんなダン爺と呼びますわい」


 ダン爺がフルネームを言うとフィデスは驚いた顔をした。


「ダン・スワロブって、まさか…」


 フィデスが言いかけると、ダン爺は人差し指を立てて自分の口元に置いてフィデスを制してから聞いた。


「して、そっちの珍しい生き物は何という名前かの?」


「この子はリベル。黒紫竜よ」


《子じゃない!もう成体です!》


 リベルが言うとルチアは苦笑いした。


「そうか、リベルこれからよろしく」


 ダン爺はリベルの頭を撫でた。


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