第94話 クイックレジの開発
クイックレジの開発が本格的に始まり、五人は再び放課後の空き教室に集まっていた。
「よし、まずは基本設計から詰めていこう」
ニコラスが羊皮紙に、ストックアイズとの連携図を描き始めた。
「ストックアイズが商品情報を読み取ったら、その情報をクイックレジに送信して、自動で合計金額を計算する。この流れで大丈夫か?」
「はい、それが理想的だと思います」
エミリーが頷きながら答える。
「魔法陣の連携部分、私が担当しますね」
ソフィアが早速、設計図に手を加え始めた。
「あと、お釣りの計算機能も必要だよな。お客様が出した金額を入力すると、自動でお釣りの額を表示する仕組みだ」
フェリックスの提案に、ニコラスも頷いた。
「それなら、簡単な数字入力用の魔法陣を組み込めばいいかもな」
作業が進む中、シャルロットが外装のデザイン案を持ってきた。
「見て、こんな感じでどうかしら。レジらしく、操作パネルが見やすいデザインにしてみたの」
「おお、すごく使いやすそうだな」
「でしょう!? お店の方が毎日使うものだから、見た目だけじゃなくて、操作性も重視したのよ」
シャルロットの丁寧な仕事ぶりに、皆が感心した様子を見せた。
しばらく作業を続けた後、試作機の第一号が完成した。
「よし、それじゃあ、早速テストしてみよう」
ニコラスが試作品に、いくつかの商品情報を入力していく。
「合計金額、五百ルギー、と」
装置が正確に金額を計算し、表示盤に数字を映し出した。
「お、ちゃんと動いてる!」
「次は、お釣りの計算も試してみましょう」
エミリーが、千ルギーを受け取った想定で、金額を入力する。
「五百ルギーのお釣り、正確に表示されました!」
「よし、基本機能は問題なさそうだな」
順調な滑り出しに、皆が笑顔を見せた。しかし、作業を進める中で、いくつかの課題も見えてきた。
「あれ、複数の商品を同時に計算しようとすると、少し時間がかかるな」
フェリックスの指摘に、ソフィアが装置を確認した。
「計算処理の魔法陣、もう少し効率化する必要がありそうです」
「あと、間違って入力した時の修正機能も、必要かもしれないな」
ニコラスの言葉に、エミリーも頷いた。
「実際のお店では、入力ミスも、結構あると思います」
「よし、それじゃあ、修正機能も追加しよう」
課題を一つずつ洗い出しながら、作業は着実に進んでいった。日が暮れる頃には、大まかな改良の方向性が固まっていた。
「今日は、いいペースで進んだな」
「はい、フェアまでに、しっかり間に合わせましょう」
ソフィアの言葉に、皆が力強く頷いた。
教室を出て帰る道すがら、ニコラスはシャルロットと並んで歩いていた。
「今回の新作も、いいものになりそうだな」
「うん、皆で作り上げるの、本当に楽しいわね」
「ああ、俺もそう思う」
夕暮れの空の下、二人は穏やかな時間を共有しながら、寮への道を歩いていった。新しい発明への挑戦は、まだ始まったばかりだった。
翌日の放課後、改良作業を進める中、フェリックスが商業的な視点から新しい提案をした。窓から差し込む午後の光が、彼の真剣な表情を照らしていた。
「なあ、このクイックレジ、複数の通貨単位にも対応できたら、もっと需要広がらないか? 王都だけじゃなくて、隣国との取引がある店とかもあるだろうし」
「なるほど、それは面白い発想だな」
ニコラスが興味深そうに頷いた。フェリックスの視野の広さに、いつも助けられていることを、改めて実感していた。
「でも、複数の通貨に対応するとなると、設計がかなり複雑になりそうです」
ソフィアが少し慎重な様子で言った。現実的な視点を忘れないところも、彼女らしい堅実さだった。
「確かに、まずは基本機能をしっかり完成させてからの方がいいかもな。将来的な拡張案として、頭に入れておこう」
「はい、賛成です」
将来を見据えたフェリックスの発想力に、皆が改めて感心していた。
そんな議論を交わしながら、作業は着実に進んでいった。
「あ、入力ミスの修正機能、こんな感じでどうでしょうか」
ソフィアが新しい設計案を提示した。間違った数字を入力した際に、簡単な操作で訂正できる仕組みが加えられていた。細部までよく考えられた設計に、皆が感心の声を上げた。
「おお、これならわかりやすいな」
「エミリー、実際にお店の視点で見て、使いやすそうか、確認してもらえるか?」
「はい、任せてください」
エミリーが実際に操作を試しながら、細かい使い勝手を確認していく。
「これなら、忙しい時間帯でも、スムーズに対応できそうです」
エミリーが実際に何度も操作を繰り返しながら、確かな手応えを感じ取っていた。
「よし、それなら、この設計で進めよう」
改良を重ねるたびに、クイックレジの完成度は、着実に高まっていった。技術革新フェアという新しい舞台に向けて、五人の挑戦は、また一歩、確かな前進を続けていた。この経験が、いつかもっと大きな未来へと繋がっていくことを、まだ誰も知らなかった。
第95話へ続く




