第92話 学園祭の終わりに
学園祭も二日目を迎え、五人のブースは、初日にも増して多くの来場者で賑わっていた。
「いらっしゃいませ! こちら、魔道具体験コーナーです!」
エミリーの元気な声が、廊下にまで響き渡る。彼女の接客は、すっかり板についていた。
「昨日の噂を聞いて来たんだけど、本当にすごいわね、これ」
一人の女性が、感心したようにマナレス・ランプを見つめていた。
「ありがとうございます! ぜひ、実際に触ってみてください」
ソフィアが丁寧に案内する。堂々とした説明ぶりに、女性は感心した様子で頷いた。
「あなた、まだ学生よね? こんなに立派な発明をするなんて、将来が楽しみだわ」
「あ、ありがとうございます……!」
照れくさそうに答えるソフィアを見て、隣で見守っていたニコラスは、温かい気持ちになった。
昼過ぎ、少し落ち着いた時間帯に、シャルロットがふと周りを見渡して言った。
「今回の学園祭、本当に大成功ね」
「ああ、皆の頑張りのおかげだな」
「フェリックスの商談も、いくつか実を結びそうだって言ってたし」
「本当か? それはすごいな」
「うん、実は、地方の商会からも、正式な取引の打診があったみたい」
嬉しい報告に、ニコラスは思わず笑顔になった。
「これも、皆で積み重ねてきたことの成果だな」
「そうね」
二人でそんな話をしていると、ふとガレスが試合を終えた様子で、再びブースを訪れた。
「よう、今日も盛況みたいだな」
「ガレス、試合はどうだった?」
「まあまあの結果だ。それより、こっちの様子、見せてもらってもいいか?」
「もちろん」
ガレスは興味深そうに、展示を見て回った。
「エミリー、接客、本当に様になってるな」
「あ、ありがとうございます」
「いつか、うちの領地の店でも、こういう技術、取り入れられたらいいと思ってる」
ガレスの言葉に、エミリーは嬉しそうに頷いた。
「その時は、ぜひお手伝いさせてください」
「ああ、頼りにしてる」
そんな穏やかなやり取りを、フェリックスが微笑ましそうに見守っていた。
夕方、学園祭の終了を告げる鐘が鳴り響くと、疲れた様子ながらも、皆の表情には、確かな達成感が浮かんでいた。
「よし、二日間、本当にお疲れ様!」
フェリックスの音頭に、皆が笑顔で応えた。
「今回の学園祭、本当に色々な成果があったな」
ニコラスが感慨深げに振り返る。
「技術革新フェアの話もありますし、フェリックス様の商談の話も」
ソフィアの言葉に、皆が期待に満ちた表情を浮かべた。
「これで、また新しい挑戦の舞台が広がったわね」
シャルロットの言葉に、エミリーも力強く頷いた。
「私も、精一杯頑張ります」
片付けを終え、教室を出る頃には、夕暮れの空が、優しいオレンジ色に染まっていた。
「皆、本当にありがとう。この二日間、最高だった」
ニコラスの言葉に、皆がそれぞれの想いを込めて頷いた。グラント商会、クレイン商会との騒動を乗り越え、数々の発明を成し遂げてきた五人にとって、この学園祭は、確かな一つの区切りであり、そして同時に、新しい未来への始まりでもあった。
寮への帰り道、皆でゆっくりと歩きながら、それぞれが今日の出来事を振り返っていた。
「にしても、まさか地方の商会からも打診が来るとはな」
フェリックスが興奮冷めやらぬ様子で言った。その顔には、達成感と、次への意欲が入り混じっていた。
「これから、忙しくなりそうですね」
ソフィアの言葉に、フェリックスは頼もしげに頷いた。夕暮れの光が、彼の自信に満ちた横顔を照らしていた。
「任せとけ。商談は俺の得意分野だからな」
「フェリックス様、頼りにしてます」
エミリーの言葉に、フェリックスは得意げに胸を張った。
「それにしても、技術革新フェアか。どんな場所なのか、今から楽しみだな」
ニコラスの言葉に、シャルロットが目を輝かせた。
「王国内外から、色んな発明が集まるんでしょう? きっと、私たちにとっても、いい刺激になると思うわ」
「うん、他の発明家の方々の技術、見られるのも楽しみです」
ソフィアも期待に満ちた様子で頷いた。まだ見ぬ広い世界への好奇心が、その瞳に満ちていた。
「よし、フェアに向けて、また新しい準備、頑張っていこうな」
ニコラスの言葉に、皆が力強く頷いた。二日間の疲れも忘れるほど、皆の目には、次への意欲が確かに輝いていた。
夕暮れの並木道を歩きながら、五人の間には、これまでにない、確かな一体感が漂っていた。数々の困難を、共に乗り越えてきたからこそ得られた、揺るぎない絆だった。落ち葉を踏みしめる足音さえ、どこか心地よく感じられた。
「さて、今日はゆっくり休んで、明日からまた頑張ろうか」
「はい」「もちろん」「そうしましょう」
賑やかな声が重なり合いながら、五人はそれぞれの寮へと、笑顔で別れていった。二日間の学園祭は、こうして、忘れられない思い出とともに、静かに幕を閉じたのだった。明日からもまた、新しい挑戦の日々が続いていく。
第93話へ続く




