第91話 学園祭、開幕
学園祭当日、朝から校舎全体が、いつもとは違う華やかな空気に包まれていた。
「うわあ、すごい飾り付け……!」
廊下を歩きながら、ソフィアが感嘆の声を上げた。色とりどりの飾りや看板が、あちこちに設置されている。
「よし、俺たちも準備、最終確認するぞ!」
フェリックスの号令のもと、五人は教室に設けられた展示ブースへと向かった。シャルロットが練り上げたレイアウト通りに、マナレス・ランプとストックアイズが、美しく陳列されている。
「よし、完璧ね!」
満足げに頷くシャルロットを見て、皆も安心した様子で頷いた。
「開場まで、あと十分か」
ニコラスが時計を確認しながら呟く。緊張と期待が入り混じった空気の中、それぞれが最後の準備を整えていった。
「開場でございます!」
司会の声が響くと同時に、廊下の向こうから、大勢の来場者の足音が聞こえてきた。
「いらっしゃいませ! こちら、魔道具体験コーナーでございます!」
エミリーが元気よく声をかけると、早速数人の来場者が興味深そうに足を止めた。
「わあ、これがマナレス・ランプか。噂には聞いてたけど、実際に見るのは初めてだな」
一人の男子生徒が、感心したように装置を眺めた。
「実際に点灯を体験されますか?」
ソフィアが丁寧に説明しながら、実演を始める。魔力を使わずに光るランプの様子に、来場者から驚きの声が上がった。
「本当に魔力いらずなんだ! すごいな!」
「はい、魔力操作が苦手な方でも、安心してお使いいただけます」
ソフィアの説明は、以前に比べて格段に堂々としたものになっていた。緊張していた様子は、もうどこにも見られなかった。
一方、ストックアイズのブースでは、フェリックスが商業的な視点から、来場者に説明を行っていた。
「こちら、小規模な店舗様向けの在庫管理魔道具でございます。自動でカウントし、賞味期限も一元管理できる優れものです」
「へえ、これ、実家の店で使えそうだな」
「ぜひ、ご検討ください。詳しい資料もご用意しております」
賑わうブースの様子を眺めながら、ニコラスは静かな達成感を噛み締めていた。
「見て、あんなに人が集まってる」
シャルロットが嬉しそうに耳打ちしてくる。
「ああ、皆の頑張りの成果だな」
そんな話をしていると、見知った顔が、ブースに近づいてきた。
「よう、盛況みたいだな」
「ガレス!」
剣術部の衣装のまま訪れたガレスに、エミリーが嬉しそうに駆け寄った。
「試合の合間に、少し抜けてきたんだ。すごいな、これ」
ガレスが感心したように展示を見回す。
「エミリー、お前の接客、なかなか堂々としてるじゃないか」
「あ、ありがとうございます」
照れくさそうに答えるエミリーを見て、ガレスは優しく微笑んだ。
「また後で、ゆっくり見せてもらうよ。今は、試合に戻らないと」
「頑張ってください!」
エミリーの声援を背に、ガレスは訓練場へと戻っていった。その背中を見送りながら、フェリックスがニヤリと笑う。
「相変わらず、いい雰囲気だよな、あの二人」
「フェリックス様、聞こえてます!」
慌てるエミリーに、皆が温かい笑い声を上げた。
昼が近づく頃には、ブースはさらに多くの来場者で賑わっていた。他クラスの生徒だけでなく、保護者らしき大人の姿や、なんと商業ギルドの関係者まで見受けられた。
「ニコラス様、盛況のようですな」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにはバルトロさんの姿があった。
「バルトロさん! 来てくださったんですね」
「ええ、皆様の晴れ舞台を、ぜひ見せていただきたくて。それに、こちらの展示、実際の商談の場でも、大いに参考になりそうです」
バルトロさんは興味深そうに、二つの魔道具を見比べていた。
「来場者の反応も、上々のようですな。これなら、今後の販路拡大にも、良い影響がありそうです」
「そう言っていただけて、嬉しいです」
ニコラスの言葉に、バルトロさんは満足げに頷いた。
しばらく展示を眺めた後、バルトロさんは一枚の紙を取り出した。
「実は、皆様にお伝えしたいことがございまして。来月、王都で開催される『技術革新フェア』に、正式に出展の招待が来ております」
「技術革新フェア……!」
「王国内外から、優れた技術や発明が一堂に会する、大変権威のある催しです。皆様の発明、そこでも大いに注目を集めることでしょう」
思いがけない朗報に、五人は顔を見合わせ、興奮を隠せない様子を見せた。
「詳細は、また後日ご相談いたしましょう。今日は、まず学園祭を存分に楽しんでください」
「はい、ありがとうございます!」
バルトロさんを見送った後、フェリックスが興奮気味に言った。
「技術革新フェアって、なんかすごいイベントっぽいな!」
「はい、王国全体からも注目される場だと思います」
ソフィアの言葉に、皆の胸に、また新しい目標への期待が膨らんでいった。賑やかな学園祭の一日は、まだまだこれから、たくさんの思い出を紡いでいくのだった。
第92話へ続く




