↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/126

第87話 改良の日々


実店舗テストから得た課題をもとに、五人は再び改良作業に取り組んでいた。


「よし、センサーの配置、こう変えてみたらどうだ?」


ニコラスが新しい設計図を広げながら提案する。棚の奥まで感知できるよう、複数のセンサーを組み合わせる方式に変更したものだった。


「これなら、死角がなくなりそうですね」


ソフィアが図面を確認しながら頷いた。


「あとは、誤作動の問題だな。シールに軽く触れただけで反応しないように、感知の閾値を調整しないと」


「魔力の反応強度を、もう少し高めに設定すればいいかもしれません」


ソフィアが早速、魔法陣の調整に取り掛かる。


「シャルロット、外装の耐久性の方は、どんな感じだ?」


ニコラスの問いに、シャルロットが試作品を取り出した。


「これ、素材を少し変えてみたの。前のものより、傷や汚れに強い加工を施してみたわ」


「おお、質感も良さそうだな」


「でしょう!? お店で長く使ってもらうものだから、見た目だけじゃなくて、実用性もしっかり考えないとね」


シャルロットの言葉に、皆が感心したように頷いた。


「フェリックス、コスト面はどうなってる?」


「ああ、それなんだが」


フェリックスが計算資料を広げた。丁寧にまとめられた数字の羅列には、彼なりの真剣さが表れていた。


「複数センサー方式にすると、多少コストは上がるが、それでも十分採算は取れる範囲だ。むしろ、精度が上がることで、顧客満足度も上がるだろうから、長期的にはプラスだと思う」


「よし、それなら、この方向で進めよう」


作業は着実に進み、いくつもの改良を重ねるうちに、試作機の完成度は、目に見えて向上していった。誰か一人が欠けても成り立たない、確かなチームワークの成果だった。


「エミリー、今日の改良点、お母様に報告しておいてもらえるか?」


「はい、きっと喜んでくれると思います」


エミリーが嬉しそうに頷いた。手元のノートには、今日の議論の内容が、丁寧な字で書き留められていた。


作業の合間、ふとフェリックスが思い出したように言った。夕日の差し込む教室に、彼の陽気な声が響いた。


「そういえば、ガレスとの剣術の練習、順調なのか?」


「は、はい、少しずつですが、基本の型を教えていただいてます」


「へえ、楽しそうだな」


「はい……。あの、皆さんにも、いつか見ていただけたら嬉しいです」


エミリーの言葉に、皆が笑顔で頷いた。その笑顔には、彼女への確かな信頼が滲んでいた。


「もちろん、応援に行くよ」


「ありがとうございます」


そんな和やかな会話を交わしながらも、作業の手は止まらなかった。日が暮れる頃には、大幅に改良された試作機が完成していた。


「よし、これなら、また実店舗でテストする価値がありそうだ」


「はい、次回のテスト、楽しみですね」


ソフィアの言葉に、皆が頷いた。


教室を出て、帰り道を歩きながら、ニコラスはシャルロットにそっと声をかけた。夕暮れの空が、二人の影を長く伸ばしていた。


「今日も、いい仕事したな」


「当然でしょ。私のデザイン力、舐めないでよね」


得意げに笑うシャルロットの横顔を見て、ニコラスは自然と頬が緩んだ。


「シャルロットと一緒に作業するの、楽しいな」


「な、なによ、急に」


「うん、素直な感想だよ」


「そ、そう……。まあ、私も、悪くないと思ってるわよ」


照れくさそうに視線を逸らすシャルロットを見て、ニコラスは小さく笑った。夕暮れの空の下、二人の距離は、また少しずつ、確かに縮まっていくのだった。


寮の分かれ道で別れる直前、シャルロットがふと足を止めた。


「ねえ、ニコラス」


「なに?」


「ストックアイズが完成したら、次は何を作るつもりなの?」


「まだ具体的には考えてないけど……。でも、皆で色々話し合いながら、また新しい発想を形にしていきたいと思ってる」


「そう。私も、次は何か、新しい提案してみようかしら」


「楽しみにしてる」


「当然でしょ、期待してなさいよね」


自信たっぷりに胸を張るシャルロットの姿は、以前よりもずっと、素直な柔らかさを帯びているように見えた。


そう言って、シャルロットは笑顔で手を振り、自分の寮へと歩いていった。その後ろ姿を見送りながら、ニコラスは静かな充実感を噛み締めていた。


自室に戻り、今日の作業の記録をまとめていると、ふと窓の外に、澄んだ夜空が広がっているのに気づいた。


「異世界に来て、もう二年以上か……」


村人として静かに暮らすはずだった人生が、思いもよらない方向へと転がり、今では多くの仲間たちと共に、様々な発明に挑戦する日々を送っている。あの頃には想像もできなかった、賑やかで充実した毎日だった。


「前世じゃ、絶対に経験できなかったことばかりだな」


小さく呟きながら、ニコラスは窓辺に立ち、しばらくの間、星空を眺め続けた。明日もまた、新しい挑戦が待っている。その事実に、胸の奥から、静かな高揚感が湧き上がってくるのを感じていた。窓の外の夜風は、少しずつ冬の気配を帯び始めていた。




第88話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。