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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第80話 穏やかな秋


クレイン商会の一件が解決してから、学園にはすっかり落ち着いた日常が戻ってきていた。木々の葉が色づき始め、秋の気配が濃くなっていく中、五人の生活も、また新しいリズムを刻み始めていた。


「なあ、聞いたか? マナレス・ランプ、追加生産分もほぼ完売したらしいぞ」


昼休み、食堂でフェリックスが嬉しそうに報告した。


「本当か! すごいな」


「バルトロさんの話じゃ、王国北部の都市からも、正式な発注が入ったらしい。この調子だと、来年には隣国への輸出も検討できるかもしれないってさ」


「輸出まで……! 夢みたいな話ですね」


ソフィアが目を輝かせながら言った。


「ソフィアのアイデアが、こんなに大きく育つなんてな」


ニコラスの言葉に、ソフィアは照れくさそうに微笑んだ。


「皆さんが協力してくれたからです。私一人では、絶対にここまでこられませんでした」


「そんな謙遜しなくていいのに」


シャルロットが呆れたように、それでいて優しい口調で言う。


「あなたの発想力がなければ、そもそも始まらなかったことなんだから」


「シャルロット様……ありがとうございます」


食堂での賑やかな会話を終え、放課後、五人はいつもの空き教室に集まっていた。今日の議題は、次の新作についてだった。


「よし、それじゃあ、次は何を作ろうか」


フェリックスの問いかけに、皆がそれぞれ考え込んだ。


「私、前から気になってたことがあるんですけど」


エミリーがおずおずと手を挙げた。


「なんだ、言ってみてくれ」


「その、母のお店みたいな、小規模な商店向けに、在庫管理を助ける魔道具って、需要があると思うんです。商品の数を自動で数えたり、賞味期限を管理したり」


「なるほど、それは面白い発想だな」


ニコラスが興味深そうに頷いた。


「私も、実際に母のお店を手伝う中で、そういう管理業務の大変さを見てきたので……」


「エミリーの経験、こういうところでも活きてくるんだな」


「はい、少しでもお役に立てればと思います」


そんな話をしていると、シャルロットが思いついたように言った。


「それなら、私も一つ提案があるの」


「なに?」


「お店の外観に合わせて、デザインをカスタマイズできる仕組みはどうかしら。お店ごとに雰囲気が違うから、そこに馴染むデザインができれば、もっと需要が広がると思うの」


「シャルロットらしい視点だな」


「当然でしょ!」


賑やかな議論を交わしながら、次のプロジェクトの輪郭が、少しずつ形になっていった。


窓の外では、秋の柔らかな日差しが、色づき始めた木々を照らしていた。グラント商会、クレイン商会と、大きな騒動を乗り越えてきた五人にとって、こうした穏やかな時間こそが、何よりも大切なものになっていた。


「よし、次のプロジェクトも、皆で頑張ろう」


ニコラスの言葉に、全員が力強く頷いた。


議論が一区切りついたところで、フェリックスがふと思い出したように言った。


「そういえば、ガレスから伝言預かってたんだった。今度の休日、剣術部の模擬試合があるから、良かったら見に来ないかって」


「模擬試合か。面白そうだな」


「私も見てみたいです」


ソフィアが興味深そうに言うと、シャルロットも頷いた。


「せっかくだし、皆で応援に行きましょうよ」


「エミリーも一緒に行くか?」


ニコラスの問いに、エミリーは少し照れたように頷いた。


「は、はい、ぜひ」


「よし、それじゃあ、次の休日は皆で剣術部の応援に行くことに決定だな」


賑やかな声が、教室に響き渡った。作業の合間にも、こうした何気ない予定が増えていくことに、ニコラスは改めて、穏やかな幸せを感じていた。


夕方、作業を終えて寮への帰り道、ソフィアがふと空を見上げて呟いた。


「もう、すっかり秋ですね。風が涼しくて、気持ちいいです」


「そうだな。夏があっという間だった分、なんだか余計に季節の移り変わりを感じるよ」


「はい。この一年、本当に色々なことがありました」


「ああ、本当に」


夕暮れの並木道を歩きながら、二人はしばらく、穏やかな沈黙を共有していた。落ち葉が風に舞い、二人の足元を優しく彩っていく。振り返れば、グラント商会との騒動から始まり、商業祭、海への小旅行、そしてクレイン商会との対峙。目まぐるしい日々の連続だったが、その一つ一つが、確かな絆として積み重なっていた。


「来年も、再来年も、こうして皆で笑い合える日々が続けばいいですね」


ソフィアの言葉に、ニコラスは深く頷いた。その言葉には、彼女なりの、素直な願いが込められているように感じられた。


「ああ、きっと続くよ。俺たちなら」


その言葉には、確かな自信が込められていた。この一年で積み重ねてきたものが、決して脆いものではないと、ニコラス自身、心の底から実感していたからだ。


学園生活は、まだまだ続いていく。新しい季節とともに、彼らの挑戦も、また新たな一歩を踏み出そうとしていた。穏やかな秋の夕暮れは、そんな確かな予感を、静かに包み込んでいた。


第81話へ続く


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