第79話 正義の裁き
証拠を提出してから一週間後、商業ギルドから正式な報告が届いた。
「皆様、お集まりいただき感謝いたします」
会議室に集まった五人を前に、バルトロさんが晴れやかな表情で切り出した。
「クレイン商会の件、正式な調査の結果、複数の不当取引行為が確認されました。本日、商業ギルド本部より、正式な処分が下されましたのでご報告いたします」
「処分の内容は……?」
「代表者を含む主要幹部の商業ギルドからの除名、そして今後五年間の商業活動禁止です。加えて、被害を受けた業者の皆様には、正当な補償が行われることになりました」
「本当ですか……!」
エミリーが思わず声を上げた。
「はい。エミリー様のお母様のお店にも、正式な補償と、今後の取引関係についてのご相談が行われる予定です」
「良かった……! 本当に、良かった」
安堵の表情を浮かべるエミリーに、皆が温かい笑顔を向けた。
「今回、皆様が集めてくださった証拠が、決め手となりました。感謝いたします」
「いえ、バルトロさんや商業ギルドの皆さんが、しっかり対応してくださったからこそです」
ニコラスの言葉に、バルトロさんは満足げに頷いた。
「それと、もう一つご報告がございます」
「まだ何か?」
「今回の一連の事件を受けて、商業ギルドでは、新興商会の設立時における審査体制を、より厳格化することになりました。同様の被害が、二度と起きないよう、対策を強化してまいります」
「それは、本当に良いことですね」
ソフィアが安心したように微笑んだ。
会議を終え、ギルドを後にした五人は、その足でエミリーの母親のもとへと向かった。
「お母さん! 聞いてください、クレイン商会、正式に処分が下ったそうです!」
エミリーが息を切らしながら報告すると、母親は目を丸くした後、深く安堵の息を吐いた。
「そう……。本当に、良かったわ」
「補償も受けられるみたいです。これで、お店の経営も、もう心配いらないと思います」
「皆さんのおかげよ。本当に、ありがとう」
母親が深々と頭を下げると、五人は慌てて首を振った。
「俺たちだけの力じゃないですよ。お母様が、あの日、勇気を出して対応してくださったからこそです」
ニコラスの言葉に、母親は涙ぐみながら微笑んだ。
「エミリー、あなた、本当にいい友達に恵まれたわね」
「うん……。皆さんには、本当に感謝してもしきれません」
エミリーの目にも、涙が浮かんでいた。
その夜、皆でささやかなお祝いをすることになった。エミリーの母親が用意してくれた手料理を囲みながら、賑やかな時間が過ぎていった。
「これで、グラント商会から続いた一連の騒動も、ようやく決着がついたわね」
シャルロットがしみじみと呟く。
「本当に、長い戦いだったな」
フェリックスも感慨深げに言った。
「でも、この経験を通じて、色々なことを学べた気がします。困難があっても、皆で力を合わせれば、乗り越えられるんだって」
ソフィアの言葉に、全員が頷いた。
「これからも、また色々あるかもしれないけど……皆となら、きっと大丈夫だな」
ニコラスの言葉に、皆が笑顔で頷いた。窓の外に広がる夜空には、無数の星が輝いていた。長い戦いの果てに訪れた、確かな平和の夜だった。
食事もひと段落した頃、フェリックスがふと思い出したように言った。
「そういえば、ガレスにも報告しておかないとな。エミリーの件、心配してたみたいだし」
「そうですね。今度、剣術部に顔を出した時にでも、お伝えします」
エミリーの言葉に、シャルロットがくすりと笑った。
「あなたたち、最近本当に仲良くなったわよね」
「え、そ、そんなことないですよ……!」
慌てるエミリーを見て、皆が微笑ましそうに笑った。
「まあ、今日はゆっくり祝杯を挙げましょうよ。本当に、お疲れ様でした」
シャルロットの音頭で、改めて皆でグラスを掲げた。
「かんぱーい!」
賑やかな声が、雑貨店の小さな居間に響き渡る。エミリーの母親も、久しぶりに心から安心した様子で、皆との時間を楽しんでいた。
「本当に、皆さんには感謝してもしきれないわ。これからも、エミリーのこと、よろしくお願いしますね」
「もちろんです。エミリーは、もう俺たちの大切な仲間ですから」
ニコラスの言葉に、母親は嬉しそうに目を細めた。
夜が更けるまで、賑やかな時間は続いた。グラント商会から始まった一連の騒動は、こうして、皆の絆をより一層深める形で、静かに幕を閉じていった。
帰り道、夜空を見上げながら、ニコラスはふと、これまでの日々を振り返っていた。異世界に転生してから、数々の困難があったが、その一つ一つを乗り越えるたびに、かけがえのない仲間との絆が、確かに深まっていった。
「これから先も、色々あるだろうけど……きっと、大丈夫だな」
小さく呟いたその言葉に、隣を歩くソフィアが、そっと微笑んで頷いた。
「はい、皆さんとなら、きっと乗り越えられます」
夜風に吹かれながら、五人はそれぞれの寮への道を、ゆっくりと歩いていった。
第80話へ続く




