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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第76話 クレイン商会の影


発売の熱狂も落ち着いた頃、日常が戻ってきた学園で、思いがけない知らせが届いた。


「ニコラス、ちょっといいか」


放課後、バルトロさんからの使いが、緊急の呼び出し状を持って訪れた。急いでギルドに向かうと、そこには珍しく険しい表情のバルトロさんが待っていた。


「何かあったんですか?」


「ええ。例のクレイン商会について、新たな情報が入りましてな」


バルトロさんが差し出した書類には、王都の複数の商店から寄せられた苦情がまとめられていた。


「クレイン商会は、急成長を続ける中で、複数の下請け業者に対して、不当な値下げ要求や、支払いの遅延を繰り返しているようです」


「グラント商会の時と、似たような手口ですね」


「ええ。しかも、その中の一つが――」


バルトロさんが言葉を切り、少し言いにくそうに続けた。


「エミリー様のお母様が働かれている店舗も、同様の被害を受けているとの情報がございます」


「なんですって……!」


急いで学園に戻り、エミリーに事情を伝えると、彼女の顔から一気に血の気が引いた。


「そんな……。母から、最近、取引先とのやり取りで困っていると聞いていたんですが、まさかそこまで……」


「エミリー、大丈夫か?」


「は、はい……。ただ、母には、あまり心配をかけたくなくて……」


「一人で抱え込まなくていい。俺たちも一緒に考えるから」


ニコラスの言葉に、フェリックスとシャルロットも頷いた。


「まずは、状況を正確に把握しないとな。エミリー、お母様に直接話を聞くことはできるか?」


「はい、今日の放課後、お店に伺ってみます」


その日の夕方、五人はエミリーの母親が働く小さな雑貨店を訪れた。


「まあ、皆さん、いらっしゃい」


エミリーの母親は、疲れた様子を見せながらも、温かい笑顔で迎えてくれた。


「お母さん、クレイン商会との取引のこと、詳しく聞かせてもらえる?」


エミリーが尋ねると、母親は少し驚いた様子だったが、やがて事情を話し始めた。


「実は、半年ほど前から、クレイン商会さんと卸取引をしているのだけれど……最近になって、急に値下げを要求されるようになってね。断ろうとすると、他の業者に切り替えるとほのめかされて……」


「それは、明らかに不当な圧力ですね」


フェリックスが眉をひそめる。


「うちみたいな小さなお店だと、大口の取引先を失うのは、正直きついのよ。だから、渋々従うしかなくて」


母親の言葉に、エミリーが悲しげな表情を浮かべた。


「お母さん、そんなに大変な思いをしてたなんて……」


「心配かけたくなくて、言えなかったの。ごめんなさいね」


その様子を見て、ニコラスは静かに決意を固めた。


「バルトロさんに、この件も正式に報告しましょう。今回は、証拠もしっかり集めた上で対応すべきだと思います」


「証拠、ですか?」


「はい。値下げ要求のやり取りとか、契約書とか、残っているものがあれば」


母親が店の奥から取り出してきたのは、クレイン商会とのやり取りが記された書類の束だった。


「これなら、実際のやり取りが分かるはずよ」


「ありがとうございます。必ず、力になります」


夕暮れの雑貨店を後にする五人の表情には、新たな戦いへの決意が、静かに宿っていた。


帰り道、シャルロットが憤りを隠せない様子で言った。


「本当に、懲りない人たちね。グラント商会の教訓、全く活かされてないじゃない」


「まあ、同じ人間たちがやってるんだから、当然と言えば当然かもな」


フェリックスが苦々しげに言う。


「でも、今回は証拠もあるし、前回よりずっと対応しやすいはずだ」


ニコラスの言葉に、皆が頷いた。


「バルトロさんなら、きっと力になってくれますよね」


ソフィアが心配そうに、それでも希望を持って呟いた。


「エミリー、辛かったな。一人で抱えてたこと、もっと早く相談してくれても良かったのに」


ニコラスの言葉に、エミリーは小さく首を振った。


「皆さんは、マナレス・ランプの発売で忙しかったですし……余計な心配をかけたくなかったんです」


「馬鹿、そんな遠慮いらないんだよ」


フェリックスが少し強い口調で言った。


「俺たちは、仲間だろ。困った時は、ちゃんと頼っていいんだ」


その言葉に、エミリーの目から、堪えきれない涙がこぼれた。


「ごめんなさい……。ありがとう、ございます」


「泣くなよ。これから、一緒に解決していこうな」


シャルロットがそっとエミリーの肩に手を置いた。


「そうよ。あなたは、もう一人じゃないんだから」


温かい言葉に包まれながら、エミリーは涙を拭い、小さく微笑んだ。


その夜、五人は再びバルトロさんのもとを訪れ、集めた証拠書類を提出した。


「これは……確かに、不当な取引の証拠として十分な内容ですな」


バルトロさんが書類に目を通しながら、深く頷いた。


「早急に、商業ギルドとして正式な調査を開始いたしましょう。皆様、貴重な情報、ありがとうございます」


「よろしくお願いします」


頭を下げる五人を見て、バルトロさんは力強く言った。


「今回は、前回よりも早い段階で情報を掴めております。必ず、エミリー様のお母様のお店をお守りいたします」


その言葉に、エミリーは深く頭を下げた。


「よろしくお願いいたします」




第77話へ続く


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