↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
64/126

第64話 祝勝会


商業祭から一夜明け、学園には落ち着いた日常が戻ってきていた。だが、その空気はどこか浮足立っている。


「おい、聞いたか! ニコラスたち、商業祭で最優秀賞取ったらしいぞ!」


「しかもグラント商会の不正まで暴いたって話だ。すごいよな」


廊下ですれ違う生徒たちの視線が、心なしかいつもと違う。ニコラスは気恥ずかしさを感じながら、そそくさと教室へと向かった。


「よう、時の人」


教室に入るなり、フェリックスがニヤニヤしながら声をかけてきた。


「やめてくれよ、その言い方」


「いいじゃんか、事実なんだから。堂々としてろって」


昼休み、四人とエミリーは、祝勝会と称して寮の近くの茶屋に集まっていた。


「かんぱーい!」


フェリックスの音頭で、果実水のグラスを掲げる。


「本当に、長かったわね。設計図流出から、レイモンド家の誤解、グラント商会の妨害……色々ありすぎて」


シャルロットがしみじみと呟く。


「でも、結果的には、いい方向に転がったと思う。ガレスとの関係も改善したし、エミリーとも仲良くなれたし」


「はい、私も、皆さんと出会えて本当に良かったです」


エミリーが嬉しそうに微笑んだ。彼女の表情は、初めて出会った頃の怯えた様子とは、まるで別人のように明るくなっていた。


「これからも、よろしくお願いします」


「もちろんだ。エミリーは、もう俺たちの大事な仲間だからな」


ニコラスの言葉に、エミリーは目を潤ませながら深く頭を下げた。


祝勝会も一段落した頃、店の外から見覚えのある人物が顔を出した。


「よう、邪魔するぞ」


「ガレス!」


まさかの訪問に、皆が驚いた顔を向ける。


「祝勝会やってるって聞いたんでな。差し入れだ」


そう言って、ガレスがテーブルに置いたのは、王都でも評判の菓子店の焼き菓子だった。


「わざわざありがとう。座っていけよ」


「いや、俺はここまでだ。父上への報告もあるしな。それより――」


ガレスが少し照れくさそうに視線を逸らした。


「今回のこと、本当によくやったと思う。うちの家の名前が絡んでたのに、最後まで冷静に対処してくれて、感謝してる」


「お前も、色々動いてくれただろ。持ちつ持たれつだよ」


「ふっ、そうだな」


短いやり取りの後、ガレスは軽く手を上げて去っていった。その背中を見送りながら、シャルロットがぽつりと呟いた。


「あの二人、本当に仲直りしたのね」


「まあ、腐れ縁みたいなもんだろ」


フェリックスの言葉に、皆が小さく笑った。差し入れの焼き菓子を分け合いながら、談笑は夕方近くまで続いた。




ガレスが去った後、しばらくして店員が焼き上がったばかりの軽食を運んできた。香ばしい匂いが漂う中、フェリックスが真っ先に手を伸ばす。


「おお、これ美味そうだな! いただきます!」


「フェリックス様、行儀が悪いですよ……」


ソフィアが苦笑しながらも、自分も一口頬張り、目を輝かせた。


「わ、本当に美味しいです」


「でしょ! この店、私のお気に入りなの」


シャルロットが得意げに言う。賑やかな笑い声とともに、しばしの休息を楽しんだ後、フェリックスが思い出したように口を開いた。


「今回の受賞で、うちの魔道具、王国内の主要都市にも本格的に流通することが決まったらしいぞ」


「本当か!? そんな大きな話に……」


「ああ。それに、次の新作についても、正式に開発予算がつくらしい。ソフィア、今度は何か新しいアイデア、あるのか?」


「え、私ですか?」


急に話を振られ、ソフィアは慌てた様子で考え込んだ。


「そうですね……実は、前から気になっていることがあって。魔力を使わずに動かせる、簡易的な魔道具の仕組み、作れないかなと」


「魔力を使わずに?」


「はい。魔力量が少ない人でも使える道具があれば、もっと多くの人の役に立つんじゃないかと思って」


その発想に、ニコラスは思わず目を見開いた。


「それ、すごくいいアイデアだと思う。今度、一緒に研究してみないか?」


「はい、ぜひ!」


嬉しそうに頷くソフィアを見て、シャルロットが小さく口を尖らせた。


「ちょっと、私も交ぜてよね。デザイン担当、忘れないでほしいんだけど」


「もちろん、シャルロットも一緒だよ」


「な、ならいいけど……」


賑やかなやり取りが続く中、フェリックスがふと真面目な顔になった。


「なあ、これから先も、色々あるかもしれないけど……俺たち五人でいれば、大抵のことは乗り越えられる気がするよな」


「うん、俺もそう思う」


ニコラスが頷くと、皆がそれぞれに微笑みを浮かべた。


窓の外では、夏の気配を帯びた爽やかな風が、緑の葉を揺らしていた。三年目の学園生活は、まだ半分も終わっていない。これから先も、きっと様々な出来事が待ち受けているのだろう。


だが今は、この穏やかな時間と、共に歩む仲間たちの存在を、ただ純粋に喜びたいと思うニコラスだった。


「よし、明日からもまた頑張るぞ!」


「おー!」


賑やかな声が、茶屋いっぱいに響き渡った。祝勝会は、日が暮れるまで賑やかに続いた。


第65話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。