↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/132

第55話 グラント商会の提案


茶屋の一角、少し離れた席に案内されたニコラスは、警戒を解かずにグラント商会の男と向き合った。フェリックスたちも席を外さず、すぐ隣のテーブルでこちらの様子を窺っている。


「改めまして、私、グラント商会で交渉役を務めております、ハインツと申します」


「……ニコラスです。それで、話とは?」


「率直に申し上げましょう。先日の設計図流出の件、弊社の関与が発覚し、商業ギルドから正式な調査を受けることになりました」


驚くほどあっさりと、ハインツは自分たちの罪を認めた。


「その上で、ご提案がございます。今回の不祥事について、弊社として正式にニコラス様へお詫びをし、その上で――」


「その上で?」


「弊社と、正式に業務提携を結んでいただけませんでしょうか」


予想外の言葉に、ニコラスは思わず眉をひそめた。


「盗んだ側から、提携の申し出ですか」


「ええ、身勝手な話であることは重々承知しております。ですが、弊社の販路と資金力は、既存の魔道具ギルドを遥かに上回っております。ニコラス様の発明力と、弊社の販売網が組み合わされば、王国全土にあの魔道具を広めることも可能でしょう」


ハインツの口調は終始穏やかだったが、その裏に見え隠れする野心が、ニコラスには不気味に感じられた。


「お断りします」


即答だった。


「ほう、理由をお聞かせいただけますか」


「情報を盗む人間と、信頼関係なんて築けません。それに、俺はもうバルトロさんのギルドと契約を結んでいる。それを覆すつもりはない」


「なるほど。しかし、条件次第では、お考えを変えていただけるかもしれません。例えば――」


「条件の話をする前に、はっきりさせておきたいことがあります」


ニコラスは静かに、しかし強い口調で言葉を継いだ。


「あなたたちがやったことで、レイモンド家は濡れ衣を着せられて、エミリーさんという生徒は、母親の立場を盾にされて脅されていた。その事実を、忘れてもらいたくない」


ハインツの笑みが、わずかに固まった。


「……なるほど。手厳しいですな」


「これは手厳しいとかそういう話じゃない。人を巻き込んで、平気で踏み台にするようなやり方に、協力するつもりはないってことです」


隣のテーブルから、フェリックスが小さく口笛を吹いた。シャルロットは満足そうに頷いている。


しばしの沈黙の後、ハインツはゆっくりと立ち上がった。


「……ご意向、しかと承りました。本日は失礼いたします」


「一つだけ」


去りかけたハインツに、ニコラスが声をかける。


「バルトロさんや商業ギルドには、今日ここで提案されたことも、正直に報告させてもらいます」


ハインツの表情が一瞬こわばったが、すぐに元の如才ない笑みに戻った。


「それも結構でしょう。……ただ、ニコラス様。弊社は、一度断られたからといって、簡単に諦める商会ではありません。それだけは、覚えておいていただければ」


含みのある言葉を残し、ハインツは茶屋を後にした。


しばしの静寂の後、フェリックスが盛大にため息をついた。


「はー、緊張したな……。ニコラス、よく啖呵切ったな、あんな相手に」


「柄にもないことしたと思う、自分でも」


「格好良かったですよ、ニコラス君」


ソフィアの言葉に、ニコラスは思わず苦笑いした。


「それより、あの言い方……『簡単に諦めない』って、穏やかじゃない言い方ね」


シャルロットが眉をひそめる。その懸念は、決して的外れなものではないだろう。


「バルトロさんに、今日のこと、すぐに報告しよう」


「そうだな。俺たちだけで抱え込む問題じゃない」


茶屋を出た四人は、夕暮れの街を早足で商業ギルドへと向かった。まだ何も終わっていない。むしろ、これは新たな始まりに過ぎないのかもしれない――そんな予感が、ニコラスの胸に重く残っていた。


第56話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。