↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/137

第47話 忍び寄る影



翌朝、ニコラスが食堂に着くと、いつもと違う空気が漂っていた。生徂たちが数人固まって、何やらひそひそと話し込んでいる。


「なあ、聞いたか例の噂」


「まさか本当なのか……?」


「フェリックス、何かあったのか?」


いつもの席につくと、フェリックスが珍しく硬い表情でパンを持ったまま固まっていた。


「ニコラス……これ、見てくれ」


差し出されたのは一枚の羊皮紙。王都の商業ギルドから発行された「魔道具情報公示」というものだった。目を通した瞬間、ニコラスの背筋が凍りついた。


『保冷魔道具、類似品出現。特許紛争の兆しか』


「な、なんだこれ……」


「レイモンド商会が、ほぼ同じ機能の魔道具を独自開発したって発表したんだよ。しかも構造図まで似てる」


「そんな、まさか……」


胸の奥がざわつく。先日のガレスの訪問。あの時、商談を断ったはずだった。だが、もしかしたらあの訪問自体が――


「情報を盗まれた可能性がある、ってことか」


「断言はできないけどな。ただ、タイミングが良すぎる」


食堂の隅で、バルトロさんからの緊急の呼び出し状を持った使いの少年が、こちらを探すようにきょろきょろしているのが見えた。


「ニコラス様! いらっしゃいましたか、ギルドから至急の呼び出しです!」


「わかった、すぐ行く」


慌ただしく席を立つニコラスに、ソフィアが心配そうな顔で声をかけた。


「ニコラス君、大丈夫ですか……?」


「わからない。でも、行かないと」


「私も一緒に行きます」


「シャルロットも来るのか?」


「当然でしょ。あなた一人じゃ、また不利な条件で丸め込まれかねないじゃない」


その言葉に反論できず、ニコラスは苦笑いを浮かべた。結局、フェリックス、ソフィア、シャルロットの三人を連れて、魔道具ギルドの応接室へと向かうことになった。


「よくぞいらっしゃいました、ニコラス様」


バルトロさんの表情はいつになく険しかった。テーブルには、先ほど見たものと同じ構造図が広げられている。


「これは……本当にレイモンド商会が?」


「ええ。しかも困ったことに、彼らは『独自に開発した』と主張しております。構造の類似性だけでは、盗用の証拠として弱いのです」


「そんな……」


「ただ、一つ気になる点がございます」


バルトロさんが図面の一部を指差した。


「この魔法陣の描き方の癖。ニコラス様が最初に提出された設計図と、細部の筆致まで酷似しております。これは、模倣元の設計図そのものを見なければ、まず再現できない特徴です」


「それって……」


「誰かが、設計図の実物を流出させた可能性がある、ということです」


その言葉に、応接室の空気が一気に張り詰めた。フェリックスが眉根を寄せる。


「流出したとしたら、いつ、どこから……」


「わたくしどもギルド内部からの流出とは考えたくありませんが、可能性はゼロではございません。それと――」


バルトロさんが言葉を切り、少し言いにくそうにニコラスを見た。


「学園内から流出した可能性も、視野に入れねばなりません」


「学園内から……」


その瞬間、ニコラスの脳裏に、あの実習の日の光景がよぎった。魔道具学の授業。設計図を広げて作業していた教室。あの場には、クラスメイト全員がいたはずだ。


「まさか、誰かが……」


言いかけた言葉を、シャルロットが遮った。


「今、犯人捜しをしても仕方ないでしょ。まずは、この特許紛争にどう対応するかを考えないと」


「シャルロットの言う通りだ」とフェリックス。「感情的になるのは後回しにしよう」


「……そうだな」


冷静な二人の言葉に、ニコラスは深呼吸をして頷いた。だが、胸の奥にはどうしても拭えないざわめきが残っていた。


もし本当に、身近な誰かが情報を流したのだとしたら――。


三年目の穏やかな日常に、初めて本格的な影が差し込んだ瞬間だった。


第48話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。