第33話「決着、そして次の舞台」
激しい攻防が続く中、ダリオは徐々に息を切らし始めていた。一方のニコラスは、依然として涼しい顔のまま、着実に間合いを詰めていく。
「くっ……化け物か、お前は」
ダリオが悔しげにそう漏らすと、ニコラスは静かに首を振った。
「そんなことないですよ。ただ、少し慣れているだけです」
「その『少し』が、規格外だって言われる所以なんだろうな」
苦笑交じりにそう言うと、ダリオは最後の力を振り絞り、渾身の一撃を放った。だが、ニコラスはそれを冷静に見切り、光の魔法で相手の体勢を崩すと、そのまま決着をつける一撃を叩き込んだ。
「そ、それまで! 勝者、ニコラス選手!」
審判の声に、会場は割れんばかりの歓声に包まれた。壇上のあちこちから、興奮した観客たちの拍手と歓声が沸き起こる。
「やっぱり、規格外の噂は本物だったんだな」
「あんな余裕たっぷりの試合運び、初めて見たぞ」
そんな声があちこちから聞こえてくる中、ニコラスはダリオに手を差し伸べた。
「いい試合でした」
「……ああ、正直、こてんぱんにされたがな」
そう言いながらも、ダリオの表情には、清々しさが浮かんでいた。差し出された手を握り返し、二人は互いに健闘を称え合った。
一方、剣術部門の会場では、エドワードの試合が始まろうとしていた。
「相手は、去年の大会でベスト4に入った実力者らしいな」
観客席から見守るルーカスが、緊張した面持ちでそう呟く。
「エドワードなら、大丈夫だと思う」
ニコラスがそう言うと、フェリックスも頷いた。
「ああ、最近の稽古の様子を見てたら、本当に強くなったのが分かるからな」
試合が始まると、エドワードは冷静な立ち回りで、相手の攻撃を的確にいなしていった。以前よりも遥かに研ぎ澄まされた剣筋が、確かな進歩を物語っている。
「行けっ、エドワード!」
観客席からの声援に応えるように、エドワードは終盤、鋭い一撃を繰り出し、見事勝利を収めた。
「よっしゃあ!」
ルーカスが自分のことのように喜び、拳を突き上げる。試合を終えたエドワードは、額の汗を拭いながら、こちらへと歩み寄ってきた。
「見ていたか」
「うん、見事だったよ」
ニコラスがそう称賛すると、エドワードは満更でもなさそうに口の端を上げた。
「これで、僕も準決勝進出だ。ローウェル、お前も勝ち進んでいるようだな」
「うん、次は準決勝みたいだ」
「では、もしかすると、決勝で相まみえることになるかもしれないな」
その言葉に、二人は自然と笑みを交わした。かつては対立していた二人が、今では同じ舞台での再戦を楽しみにするほどの関係になっていた。
「負けないからな」
「それはこっちの台詞だよ」
そんな軽口を交わしながら、二人はそれぞれの控室へと戻っていった。
その後、シャルロットも二回戦を突破し、ソフィアやフェリックス、ルーカスたちの応援を受けながら、着実に勝ち進んでいった。
「まさか、私まで準々決勝に残れるなんて」
シャルロットが少し興奮気味にそう言うと、ソフィアも嬉しそうに拍手を送った。
「シャルロットさんの成長、本当にすごいです」
「あなたたちのおかげよ。一緒に練習してくれたから」
そう言って微笑むシャルロットの様子に、周囲は温かな空気に包まれた。
「にしても、みんな結構いいところまで勝ち進んでるよな」
ルーカスが感慨深そうにそう言うと、フェリックスも頷いた。
「本当にな。最初は俺、赤点回避が目標だったのに、いつの間にかみんなの活躍を見て、こっちまで熱くなってきたよ」
「お前は出場すらしてないけどな」
ニコラスが苦笑しながらそう突っ込むと、フェリックスは慌てて言い訳した。
「応援だって、立派な参加の形だろ!」
そんな軽いやり取りに、一同はまた笑い合った。
大会は、白熱した戦いを繰り広げながら、着実に終盤へと近づいていた。夕暮れに染まり始めた演習場の空の下、それぞれの想いを胸に、選手たちは次なる戦いへと臨んでいく。
学園の歴史に新たな一ページを刻む、この武芸大会の行方は、まだ誰にも分からなかった。
観客席の一角、教師陣が集まる場所では、グレイソン先生とレイラ先生が、静かに視線を交わしていた。
「ローウェルの実力、改めて見ると圧巻だな」
「ええ。それに、エドワード様との関係の変化も、見ていて感慨深いものがあります」
二人の教師は、それぞれの生徒の成長を、静かに、しかし確かな喜びを持って見守っていた。
(第34話へ続く)




