↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/135

第25話「レイモンド家からの接触」


街での穏やかな休日から数日後、フェリックスが少し慌てた様子で教室に駆け込んできた。


「ニコラス、エドワード様、ちょっと聞いてほしいことがある」


その真剣な表情に、談笑していた一同の空気が、一瞬で引き締まった。


「どうしたの、フェリックス」


「昨日、父さんから手紙が届いたんだ。レイモンド家について、色々分かったことがあるって」


フェリックスはそう言うと、懐から一通の手紙を取り出した。


「レイモンド家は、ここ数年で急速に力をつけてきた商人上がりの貴族家だ。父さんが言うには、その台頭の裏には、宮廷内のある有力者からの後押しがあるらしい」


「有力者……」


エドワードが険しい表情でそう繰り返す。


「それと、これが一番気になったことなんだけど……レイモンド家は最近、優秀な人材の『青田買い』に力を入れているらしいんだ。将来有望な若手を、早いうちから自分の家の陣営に取り込もうとしているって」


その言葉に、ニコラスは思わず息を呑んだ。


「もしかして、僕も、その対象に……」


「多分な。合宿でガレスが接触してきたのも、それが目的だったんじゃないかって、父さんは考えてるみたいだ」


教室に、重い沈黙が落ちた。


「つまり、僕を自分の家に取り込もうとしている、ということか」


ニコラスがそう確認すると、エドワードが苦い顔で頷いた。


「十分にあり得る話だ。お前の実力は、既に学園中に知れ渡っている。それを自分の陣営に引き入れることができれば、レイモンド家にとっては、この上ない後ろ盾になるだろう」


「僕、どうしたらいいんだろう」


ニコラスが正直にそう漏らすと、ルーカスが力強く肩を叩いた。


「難しく考えるなよ。お前が嫌だと思うなら、はっきり断ればいいだけの話だろ」


「そう単純な話でもないと思うけど……」


フェリックスが少し不安げにそう言うと、エドワードが冷静に付け加えた。


「貴族社会において、こうした誘いを露骨に断ることは、時に敵対関係を作ることに繋がる。もちろん、断る自由はあるが、その後の対応には慎重さが必要だ」


その言葉に、ニコラスは改めて、この世界の複雑さを実感していた。前世で言うところの、大企業からの引き抜きの誘いを断る時のような、繊細な駆け引きが求められる状況なのかもしれない。


「とりあえず、この件も、グレイソン先生に報告した方がいいと思う」


ニコラスがそう提案すると、全員が頷いた。


放課後、再び職員室を訪ねた四人は、フェリックスから聞いた話を、グレイソン先生に詳しく伝えた。話を聞き終えた先生は、しばらく考え込んだ後、静かに口を開いた。


「……分かった。この件は、学園長にも改めて報告する。ローウェル、もし今後、レイモンド家、あるいはその関係者から直接何かしらの接触があった場合は、決して一人で判断せず、すぐに私か、他の教師陣に相談するように」


「はい、分かりました」


「学園は、生徒を守る場所だ。お前が背負う必要のない重荷まで、一人で抱え込む必要はない」


先生のその言葉に、ニコラスは少しだけ、肩の力が抜けるのを感じた。


職員室を出た後、廊下を歩きながら、エドワードがぽつりと呟いた。


「……お前は、僕の家の事情に巻き込まれた形になるな。すまないと思っている」


「エドワードのせいじゃないよ。それに、僕自身の実力が理由でこうなってるわけだし」


ニコラスがそう答えると、エドワードは少し驚いたような顔をした後、小さく頷いた。


「……そうか。だが、もし何かあれば、遠慮なく僕を頼れ。これでも、伯爵家の嫡男としての伝手くらいはある」


その言葉には、以前のような突き放した響きはなく、確かな誠意が込められていた。


「うん、ありがとう」


ニコラスがそう答えると、ルーカスが場を和ませるように、明るい声を上げた。


「まあ、こういう時こそ、俺たちの結束力の見せ所ってやつだな!」


その明るい一言に、重かった空気が、少しだけ和らいだ。


「そうだよな。俺たちがいれば、大抵のことはどうにかなるって!」


フェリックスもそう続けると、ソフィアとシャルロットのいない教室の中でも、いつの間にか五人分の温かい空気が満ちていた。


その日の夜、寮の自室に戻ったニコラスは、ベッドに横になりながら、今日の出来事を静かに振り返っていた。


(前世で言えば、大企業からの引き抜きに、周りの部署ぐるみで巻き込まれるようなものかな)


考えれば考えるほど、この世界の貴族社会の複雑さが、じわじわと身に染みてくる。だが、それと同時に、こうして仲間たちが親身になって支えてくれることの心強さも、改めて実感していた。


「まあ、一人で抱え込まなければ、なんとかなるか」


そう小さく呟くと、ニコラスは静かに目を閉じた。窓の外では、王都の夜が、いつもと変わらぬ静けさで更けていった。


だが、水面下で静かに動き始めた貴族社会の思惑が、これからニコラスの学園生活に、どのような影響を及ぼしていくのか――その答えは、まだ誰にも分からなかった。


(第26話へ続く)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。