第24話「女子組との街歩き」
「というわけで、次はシャルロットとソフィアも誘って、街に繰り出そうと思ってさ」
昼休みの教室、ルーカスが得意げにそう切り出すと、シャルロットは扇を止めて興味深そうに目を細めた。
「あら、それは楽しそうね。ぜひご一緒させてもらうわ」
「私も、行きたいです」
ソフィアも控えめながら、嬉しそうにそう答えた。
こうして休みの日、六人はそろって王都の街へと繰り出すことになった。
「なんだか、こうして皆で出かけるのは初めてね」
シャルロットが辺りを見回しながらそう言うと、フェリックスが得意げに胸を張った。
「任せてください。この間、街の色々な場所を回ってきましたから、案内はお手の物です」
「それ、この間案内してもらったの、僕たちなんだけど」
ニコラスが苦笑しながらそう突っ込むと、教室にいた時と変わらない賑やかな空気が、街中にも広がった。
まず一行が向かったのは、女子二人がかねてより気になっていたという、雑貨店だった。
「わあ、可愛い……」
ソフィアが目を輝かせながら、小さな装飾品を手に取る。シャルロットも興味深そうに店内の品々を眺めていた。
「意外だな、シャルロットもこういう庶民的な店、好きなのか」
ルーカスがそう尋ねると、シャルロットは扇で口元を隠しながら答えた。
「貴族の店とは違う、素朴な温かみがあって、私は結構好きよ」
「へえ、なんか、いつもと印象違うな」
「あら、私にも意外な一面くらいあるものよ」
そう言って涼しく笑うシャルロットの様子に、周囲は思わず頬を緩めた。
「これ、可愛いですね」
ソフィアが小さな髪飾りを手に取り、シャルロットに見せる。
「あら、素敵じゃない。似合うと思うわ」
「本当ですか? じゃあ、これ買っちゃおうかな」
嬉しそうに頬を緩めるソフィアの様子に、シャルロットも満足げに微笑んだ。二人のそんなやり取りを、少し離れた場所から眺めていたルーカスが、ぽつりと呟いた。
「なんか、女子二人でいる時のシャルロットって、教室にいる時よりずっと自然な感じがするな」
「余計なこと言うと、また扇で叩かれるぞ」
フェリックスがすかさず釘を刺すと、ルーカスは慌てて口をつぐんだ。
店を出た後、一行は市場通りを抜け、噴水広場へと向かった。道中、以前ルーカスが勧めていた串焼きの屋台を見つけると、シャルロットが興味深そうに足を止めた。
「これが、噂の屋台料理ね」
「一本、食べてみるか?」
ルーカスが尋ねると、シャルロットは少し躊躇いながらも頷いた。
「そうね、せっかくだから」
だが、いざ受け取った串焼きを口に運ぼうとした瞬間、思いのほか大きな一口を頬張ってしまい、シャルロットは慌てて口元を押さえた。
「ん、んん……!」
「大丈夫か? 熱かった?」
「い、いえ、そういうわけでは……ただ、想像より食べにくくて」
上品に食べようとしていたはずが、思わぬ形で崩れてしまったその様子に、周囲は思わず吹き出してしまった。
「ふふっ、シャルロットさんでも、そういうことあるんですね」
ソフィアがくすくすと笑いながらそう言うと、シャルロットは頬を赤らめながら、恨めしそうに視線を向けた。
「見なかったことにしてちょうだい」
「無理な相談だな、それは」
フェリックスがすかさず茶々を入れると、シャルロットは扇でぴしゃりとその肩を叩いた。
「フェリックス、余計な一言は慎みなさい」
「はい、すみません!」
即座に姿勢を正すフェリックスの様子に、その場にはまた笑いが広がった。ソフィアも口元を押さえながら、必死に笑いを堪えている。
そんな賑やかなやり取りに、エドワードまでもが珍しく声を出して笑っていた。
「ローウェルの周りは、本当に退屈しないな」
「エドワード様がそう言うの、なんか感慨深いですね」
ニコラスがそう返すと、エドワードは僅かに気恥ずかしそうに視線を逸らした。
噴水広場のベンチに腰掛け、六人はしばらくの間、他愛のない話に花を咲かせた。学園での出来事、それぞれの故郷の話、将来の夢――話題は尽きることなく続いていった。
「こうして、みんなで過ごす時間って、本当に大切なんだなって、改めて思います」
ソフィアがふと、そう静かに呟いた。その言葉に、全員が自然と頷いた。
「これからも、こういう時間、大事にしような」
ルーカスの言葉に、誰からともなく笑みがこぼれる。夕暮れに染まり始めた王都の空の下、六人の絆は、また一つ、確かに深まっていた。
帰り道、シャルロットがふと、いつもより柔らかい声でこう言った。
「今日は、誘ってくれてありがとう。こういう時間、思っていたよりずっと楽しかったわ」
「また誘うから、次も来てくれよな」
ルーカスがそう言うと、シャルロットは小さく微笑んだ。
「ええ、喜んで」
ソフィアも隣で、こくりと頷いていた。学園の中だけでは見えなかった、それぞれの新しい一面を知ることができた一日は、六人にとって、かけがえのない思い出として刻まれていった。
(第25話へ続く)




