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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第21話「合宿最終日」


実技試験の一件から二日が経ち、合宿は最終日を迎えていた。


「結局、あのガレスって上級生のこと、先生に報告した方がいいのかな」


朝の身支度をしながら、ルーカスがぽつりとそう呟いた。


「僕もそう思う。ただの世間話にしては、含みがありすぎた」


エドワードも硬い表情で同意する。あの日以来、四人の間には、以前とは違う、静かな緊張感が漂っていた。


「とりあえず、合宿が終わったら、グレイソン先生に相談してみよう」


ニコラスがそう提案すると、フェリックスも真剣な顔で頷いた。


「うちの父さんにも、それとなく聞いてみるよ。あの家のこと、もう少し詳しく分かるかもしれない」


「頼めるか」


エドワードの言葉に、フェリックスは少し驚いたように目を瞬かせた。


「……ああ。任せてくれ」


以前なら考えられなかった、素直な信頼のやり取りに、ニコラスは小さな感慨を覚えていた。


「なあ、それにしても、こういう真剣な話してる時のエドワード、なんか別人みたいだよな」


ルーカスがしみじみとそう言うと、エドワードは眉をひそめた。


「どういう意味だ」


「いや、悪い意味じゃなくてさ。頼りになるっていうか」


「……そうか」


素っ気ない返事だったが、その口元には、僅かに満更でもなさそうな色が浮かんでいた。フェリックスも、そんなエドワードの様子を横目に、小さく苦笑した。


「エドワード様も、案外、俺たちに気を許してくれてるってことかもな」


「調子に乗るなよ、フェリックス」


「はい、すみません!」


即座に姿勢を正すフェリックスの様子に、その場にはまた笑いが広がった。


最終日の午前中は、これまでの成果を発表し合う、簡単な報告会が開かれた。生徒たちはそれぞれの班の活動内容を、緊張しながらも誇らしげに語っていく。中には、火起こしに何度も失敗した苦労話や、道に迷いかけたエピソードなど、笑いを誘う報告もいくつかあった。


「今回の実技試験、上位の成績を収めたのは――」


グレイソン先生の発表に、生徒たちが固唾を呑んで耳を傾ける。


「一年A組、ニコラス・ローウェル、ルーカス、フェリックス、エドワードの班だ」


その名が呼ばれた瞬間、ルーカスが思わずガッツポーズを取った。


「よっしゃ、一位だ!」


「まあ、僕たちの実力なら当然だな」


エドワードが得意げにそう言うと、フェリックスがすかさず茶々を入れた。


「ガレスさんに絡まれた時は、内心ビビってたくせに」


「な――誰がビビっていたと言うんだ!」


「エドワード様、声、震えてましたよ」


「震えてなどいない!」


そんなやり取りに、周囲から笑い声が起きる。緊張感の中にも、いつも通りの賑やかさが戻ってきていた。


合宿最後の夜、拠点エリアでは、五日間の締めくくりとして、簡単な祝宴が催された。あちこちの班が、それぞれ賑やかに歓談する声が、演習林の夜に響き渡っている。


「五日間、あっという間だったな」


ルーカスが焚き火を眺めながら、しみじみとそう呟いた。合宿初日、荷物の重さに愚痴をこぼしていた彼の姿からは、少し逞しくなったようにも見えた。


「本当に。色々あったけど、いい経験になったと思う」


ソフィアもそう言って微笑んだ。シャルロットは、専属の従者が用意した上等な果実酒――もちろん未成年用に薄められたもの――をグラスに注ぎながら、優雅に笑った。


「私は、快適に過ごせて何よりだったわ」


「その快適さ、僕たちには縁のない話だけどな」


フェリックスが呆れたように呟くと、シャルロットはくすりと笑って肩をすくめた。


炎を囲んで語らう仲間たちの様子を眺めながら、ニコラスはふと、先日のガレスの言葉を思い返していた。


(僕に興味を持っている、家の者、か……)


学園という守られた場所での、こうした穏やかな日々。だが、その外側では、静かに何かが動き始めているのかもしれない――そんな予感が、胸の奥に小さく残り続けていた。


「ニコラス、何ぼーっとしてるんだ? 早くこっち来いよ」


ルーカスに声をかけられ、ニコラスは我に返った。


「あ、うん、今行く」


そう答えて、ニコラスは仲間たちの輪の中へと戻っていった。今はまだ、この温かい時間を、素直に楽しんでいたかった。


演習林の夜空には、無数の星々が瞬いていた。学園二年目、初めての合宿は、こうして多くの思い出と、そして一つの小さな不安の種を残しながら、幕を閉じようとしていた。


翌朝、学園へと戻る馬車の中、ソフィアがふと窓の外を眺めながら呟いた。


「五日間、あっという間でしたね」


「うん、色々あったけど、楽しかったな」


ニコラスがそう答えると、シャルロットが扇を軽く振りながら口を挟んだ。


「次は、もう少し快適な合宿だといいのだけれど」


「シャルロットさんの快適さの基準、多分みんなとズレてると思いますよ」


ソフィアの控えめな指摘に、馬車の中には小さな笑いが広がった。


窓の外に流れる、演習林の景色を眺めながら、ニコラスは静かに、これから始まる新たな学園生活に思いを馳せていた。


(第22話へ続く)


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