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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第155話 古代の血


暗闇の洞窟を、四人は、息を切らして駆け抜けた。背後からは、ガルドの兵たちの怒号と、鎧の擦れる音が、迫ってくる。


「しつこいな、あいつら!」


「カイさん、前を見てください! 石柱が!」


「うおっ!」


カイが、慌てて身を翻す。壁際に立ち並ぶ石柱が、淡い光を帯びて、洞窟の奥へ道を照らしていた。ニコラスの胸の結晶が、熱いほどに、脈打っている。


「この光、僕たちを、導いているみたいだ」


皇帝レオポルトが、石柱を見上げながら、呟いた。次の瞬間、洞窟の入り口のあたりで、重い石が擦れ合うような、轟音が響いた。


「何だ、今の音は!」


「入り口が……閉じた?」


ハンスが、振り返って、目を見開く。確かに、洞窟の入り口が、巨大な石の扉に、塞がれていた。扉の向こうからは、兵たちの叫び声と、剣で石を叩く音が、微かに漏れ聞こえてくる。


「やはり、この遺跡は、僕たちを、受け入れてくれたんだ」


ニコラスが、安堵の息を漏らした。扉は、外からでは、簡単には開かないだろう。しばらくは、追っ手の心配は、なさそうだった。


「いやあ、助かった。あのままだったら、俺の剣、折れてたぞ」


「カイさんの剣は、まだ、一度も抜かれていませんが」


「抜く前に、折れる気がしたんだよ!」


「何ですか、その謎の予感は」


「それにしても、暗いな。こういう場所、出るんだよな、ほら、幽霊とか」


「カイさん、遺跡に幽霊は、出ません」


「そう断言できる根拠は?」


「ありません」


「ないのかよ!」


後ろから、ハンスが、小さく咳払いをした。カイが、ぴたりと口を閉じる。それでも、彼が、松明を二本握りしめて、ぴったりとニコラスの背中に、張りついていることには、変わりがなかった。


軽口を叩きながらも、四人の足取りは、自然と、洞窟の奥へと向かっていた。壁面には、ガルメア要塞で見たものと同じ、古代文字が、淡く光っている。


「ここの文字、読めますか、ニコラスさん」


「少しだけ。『守る者』『受け継ぐ血』……そんな意味の言葉が、並んでいます」


「受け継ぐ、血?」


レオポルトが、首を傾げた。その瞬間、洞窟の奥から、澄んだ、女性とも子供ともつかない声が、響いてきた。


『……来てくれた。やっと、来てくれた』


「この声は……!」


レオポルトが、はっと、立ち止まった。その瞳から、涙が、一筋、こぼれ落ちる。


「夢の中で、聞いていた、あの声だ」


「陛下……」


『二人の、共鳴する者よ。奥へ、進んで。私は、ここにいる』


ニコラスは、息を呑んだ。二人の、共鳴する者。守り手の声は、確かに、レオポルトのことも、含んでいる。


「僕にも、共鳴の力が、あるということか」


「少なくとも、守り手さんは、そう言っています」


洞窟を進むにつれ、空気が、重く、冷たくなっていった。やがて、四人は、広大な地下の空洞へと、辿り着いた。


そこには、ガルメア要塞のものよりも、さらに大きな、巨大な水晶が、鎮座していた。だが、その姿は、あまりにも、痛ましかった。


水晶の周囲には、黒い金属の鎖が、幾重にも巻きつけられている。鎖の先には、無数の魔道具が繋がれ、水晶から魔力を、強引に吸い上げていた。


「これは……!」


ハンスが、愕然と、声を上げた。


「宰相閣下が、秘密裏に、設置させていた装置です。まさか、これほどの規模とは」


「守り手さんを、縛りつけて、魔力を搾り取っていたのか」


ニコラスの声が、怒りに震えた。水晶の内部で、淡い光が、苦しげに明滅している。守り手の声が、掠れて、響いた。


『私は、長い間、この鎖に、囚われていた。魔力を奪われ、声も出せず。それでも、歌い続けた。いつか、誰かが、気づいてくれると信じて』


「ごめんなさい。気づくのが、遅くなりました」


ニコラスは、水晶に歩み寄り、そっと、掌を当てた。冷たく、そして、痛々しいほどに、弱々しい鼓動が、伝わってくる。


『お前は、優しい子だ。……あの、少年も』


守り手の意識が、レオポルトに向けられた。皇帝の少年は、震える足で、水晶へと近づく。


『お前は、私を造った者たちの、末裔だ。その血が、私の、鍵となる』


「僕が、古代文明の、末裔……?」


『そうだ。この国の皇家は、遥か昔、私を造った民の、血を引いている。だから、お前の中に、共鳴の素質が、眠っている』


レオポルトの顔が、蒼白になった。ニコラスの頭の中で、全てが、一本の線に繋がった。


「だから、宰相は、レオポルトさんを、手放さなかったんだ。皇帝という飾りを、置いておけば、いつでも、守り手の鍵として、使える」


「僕を、利用するために、生かしていたのか……」


レオポルトが、拳を握りしめた。その手が、小さく、震えている。ハンスが、苦しげに、顔を伏せた。


「陛下……お辛い思いを、させてしまいました」


「いや、いい。ハンス。むしろ、真実を知れて、よかった」


少年皇帝の目に、静かな決意が、灯った。


「この鎖を、外そう。ニコラス、僕に、手伝わせてくれ」


「はい。一緒に、やりましょう」


その時、洞窟の入り口の方から、激しい爆音が、轟いた。石の扉が、砕かれようとしている。


「ガルドたちが、扉を破ろうとしてる! 時間がないぞ!」


「ハンスさん、扉を、少しでも持ちこたえさせることは?」


「やってみます。陛下と、ニコラスさんには、指一本、触れさせません」


ハンスが、剣を握りしめて、入り口の方へ向き直る。その背中は、年老いてなお、頼もしかった。


ニコラスは、レオポルトと、顔を見合わせた。二人の共鳴する者が、同時に、水晶に、手を伸ばす。


第156話へ続く


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