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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第143話 目覚める意志


地下空洞は、青白い光の奔流に、飲み込まれていた。巨大な水晶の内部で、冷たい意志が、ゆっくりと形を成していく。


「はははは! 目覚めたぞ! 古代の力が、ついに私の手に!」


ゼノンが、両手を広げて、高らかに笑った。その背後で、魔晶石の円環が、一つ、また一つと、眩い光を放ち始める。


「ニコラス、下がれ! ミレーナ、防御結界を!」


「はい!」


レオンの号令に、ミレーナが、素早く杖を掲げた。透明な壁が、四人を包み込む。次の瞬間、水晶から放たれた衝撃波が、結界を激しく揺らした。


「くっ、強い……! 長くは、持ちません!」


「なんなんだよ、あれは! 水晶が、生きてるみたいじゃねえか!」


カイが、折れた箒を構えながら、叫ぶ。その箒の先が、衝撃波でぱらぱらと崩れていった。


「カイさん、その箒、まだ持ってたんですか」


「お守り代わりだ! 悪いか!」


「悪くはないですけど!」


軽口を叩き合いながらも、全員の顔には、余裕がなかった。ゼノンの高笑いが、次第に、不穏な色を帯び始めたからだ。


「……何だ。なぜ、従わない」


ゼノンが、水晶に向かって、掌を突き出した。


「私の命令に、従え! 貴様は、私が目覚めさせたのだぞ!」


水晶は、沈黙したままだった。むしろ、ゼノンの声を拒むように、光の波が、彼の体を、激しく弾き飛ばす。


「ぐあっ!」


ゼノンの体が、地面に叩きつけられた。その顔に、初めて、焦りの色が浮かぶ。


「なぜだ……! 長年の研究で、必要な手順は、全て踏んだはずだ!」


「あなたには、この水晶を、動かせない」


ニコラスの声が、静かに響いた。結界の中から、一歩、前へ踏み出す。


「ニコラス!?」


「大丈夫です、レオンさん。……この水晶は、怒ってるんじゃない。泣いてるんです」


胸の奥の共鳴が、かつてないほど、強く鼓動していた。水晶から流れ込んでくる感情が、まるで自分のもののように、胸に染み込んでくる。


それは、深い、深い孤独だった。


数千年の眠りの中で、ずっと、誰かに呼びかけ続けてきた声。けれど、誰にも届かなかった、悲しみ。


「……聞こえるよ。ずっと、一人だったんだね」


ニコラスは、結界の外へ、そっと手を伸ばした。ミレーナの悲鳴にも似た制止の声が、背後から響く。けれど、足は、止まらなかった。


水晶の光が、ニコラスの掌に、触れる。


その瞬間、世界が、真っ白に染まった。


気がつくと、ニコラスは、見渡す限りの、白い空間に立っていた。目の前に、淡く輝く、人影のようなものが浮かんでいる。性別も、年齢も、分からない。ただ、長い時を生きた者だけが持つ、深い静けさが、その存在から伝わってきた。


『……来たのか。共鳴する者よ』


「あなたが、水晶の、意志ですか」


『かつては、名を持っていた。だが、もう、忘れてしまった。私は、ただの、守り手だ』


声は、頭の中に、直接響いてきた。


『我らは、魔力を、貯めるために、造られた。戦乱の世を、終わらせるために。……だが、造り手たちは、皆、消えた。残されたのは、私と、この力だけだ』


「戦乱を、終わらせるために……」


『そう。だが、力は、使う者次第で、守りにも、滅びにもなる。私は、それを、見てきた。何度も、何度も』


守り手の声は、どこまでも、静かだった。ニコラスは、胸が締めつけられる思いで、その言葉を聞いていた。


『あの男は、この力を、滅ぼすために使おうとしている。だが、私には、拒むことしか、できなかった。共鳴する者が、現れるまで』


「俺に、何を望むんですか」


『問おう、共鳴する者。お前は、この力を、どうする』


その問いに、ニコラスは、しばらく、答えられなかった。力を使えば、確かに、多くのことが、できるだろう。けれど、それは、ゼノンと、同じ道かもしれない。


ふと、ポケットの中の、小さなランプのことを、思い出した。ソフィアが、徹夜で完成させてくれた、小さな光。


「……俺は、この力を、誰かを、傷つけるために使いたくありません」


『では、どうする』


「分かりません。でも、あなたを、一人のままにしておきたくも、ありません」


ニコラスは、正直に、そう答えた。すると、守り手の輪郭が、わずかに揺らいだ。


『……面白い。そんな答えを、返してきた者は、初めてだ』


白い空間が、ゆっくりと、崩れ始める。


『時間が、ない。あの男が、最後の手を打つ。急げ、共鳴する者』


「最後の、手?」


次の瞬間、ニコラスの意識は、現実へと引き戻された。耳をつんざくような、ゼノンの笑い声が、地下に響き渡る。


「ははは! まだだ! 水晶が従わぬなら、この要塞ごと、吹き飛ばしてくれる!」


ゼノンの手の中で、赤い魔道具が、不気味に輝いていた。空洞を取り囲む、無数の魔晶石が、同時に、赤い光を放ち始める。


「全ての魔晶石に、起爆術式を連動させた! この要塞が崩れれば、国境一帯が、跡形もなく消え去る!」


「正気か! お前も、巻き込まれるんだぞ!」


レオンの叫びにも、ゼノンの狂気じみた笑みは、揺るがなかった。


「構わん! 私の野望が潰えるくらいなら、全てが無に帰した方が、まだましだ!」


起爆まで、残された時間は、わずか。ニコラスは、胸の奥の鼓動に、全てを賭けて、水晶へと向き直った。


第144話へ続く


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