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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第134話 国境の街


街道を進むこと七日。調査隊の前に、石造りの城壁に囲まれた街が姿を現した。


「あれが、国境の街ハルベルクだ。隣国との交易の要衝で、普段は商人たちで賑わっている」


レオンの説明を聞きながら、ニコラスは目を凝らした。城門の前には、確かに多くの荷馬車が列をなしている。ただ、どこか空気が重い。人々の表情は硬く、行き交う声も、心なしか小さかった。


「活気がないですね。商人の街って、もっと賑やかなイメージだったんですけど」


「ああ。ここ数週間で、街の雰囲気が変わったらしい。守備隊の兵も、増員されている」


城門で身分を告げると、守備隊長が、慌てた様子で出迎えてくれた。調査隊は街の宿舎に案内され、さっそく情報共有の場が設けられる。


「問題の商人の一団は、三日前から街に滞在しています。表向きは、鉱石の買い付けということですが、荷を一切、人目に晒さないのです」


「荷を、晒さない?」


「宿の倉庫に直接運び込み、守衛を立てて、誰も近づけません。しかも、毎晩のように、夜更けに荷馬車が出入りしているのです」


守備隊長の報告に、ミレーナが顎に手を当てて考え込んだ。


「正面から検めるのは、難しそうですね。相手が正式な通行許可証を持っている以上、証拠なしに荷を暴くことはできません」


「それなら、ニコラスの出番だな」


カイが、にやりと笑って、ニコラスの肩を叩いた。


「『解析』で、遠くから荷の中身を読み取れないか?」


「やってみないと分かりませんが、直接触れた方が、精度は高いです。少なくとも、近くまでは行く必要があると思います」


「よし、決まりだ。潜入作戦といこうじゃないか!」


カイが、拳を握りしめて立ち上がる。レオンが、嫌な予感を隠そうともせず、眉をひそめた。


「カイ、お前、まさか自分で行くつもりじゃないだろうな」


「当然だろ! 斥候の仕事だ! 俺が商人に変装して、ニコラスを助手として連れて行く!」


「却下だ」


「なんでだよ!」


「お前の変装は、前回、三秒でバレただろうが」


「あれは、相手の勘が良かっただけだ!」


「物売りの口上で、『いらっしゃいませ、騎士団でございます』と言ったのを、忘れたのか」


「うっ……」


ミレーナが、こらえきれずに吹き出した。ニコラスも、必死に笑いを噛み殺す。


結局、変装案は採用されたが、カイの出番は、街角で見張りを務めることに限られた。ニコラスは、地味な外套をまとい、荷運びの青年を装って、商人の宿へ向かうことになった。


「いいか、無理はするなよ。何かあったら、すぐに合図しろ」


「分かりました。行ってきます」


レオンの見送りを受け、ニコラスは、夕暮れの街を歩き出した。宿の周囲には、確かに屈強な男たちが、さりげなく目を光らせている。


「荷物の運搬をお手伝いに来ました。宿の主人から、頼まれまして」


自然な口調で声をかけると、守衛の男は、一瞬訝しげな顔をしたが、ニコラスの手にあった空の籠を見て、あっさりと通してくれた。前世で培った、「堂々としていれば怪しまれない」という処世術が、思わぬところで役に立つ。


倉庫の中には、木箱が山のように積み上げられていた。ニコラスは、荷物を運ぶふりをして、そっと木箱に指先を触れた。


『解析』が、静かに発動する。


「……これは」


頭の中に、情報が流れ込んでくる。木箱の中身は、確かに鉱石だった。ただ、ただの鉱石ではない。内部に、膨大な魔力を溜め込んだ、結晶体だった。


「魔晶石……しかも、ここまで高純度のものを、こんなに大量に」


背筋が、冷たくなった。これだけの量があれば、一つの街を吹き飛ばすほどの魔力を、一度に解放することも可能だ。


さらに、木箱の底には、ある紋章が刻まれていた。隣国の王家に連なる、軍の紋章だ。


「やっぱり、軍が絡んでるのか……」


呟いた瞬間、背後で、足音が止まった。


「おい、小僧。そこで何をしている」


振り返ると、鋭い目つきの男が、こちらを見下ろしていた。商人の一団の、頭目らしき人物だった。


「あ、いえ、荷物の運搬を……」


「この倉庫に、荷運びの者は、頼んでいないはずだが」


男の手が、腰の短剣に伸びる。ニコラスは、咄嗟に『加速』の準備をしながら、頭の中で状況を整理した。ここで騒ぎを起こせば、せっかくの調査が台無しになる。かといって、逃げ出せば、相手に警戒されてしまう。


その時、倉庫の外から、場違いに陽気な声が響いた。


「おーい! 荷物を取りに来たぞー! 誰かいないかー!」


「……カイさん?」


扉を開けて入ってきたのは、確かにカイだった。しかも、なぜか、怪しげな商人の服を着て、頭に巻いた布が、ずれ落ちかけている。


「いやあ、お邪魔しますー! 私、通りすがりの、ただの、善良な商人でございますー!」


「……なんだ、お前は」


頭目の男が、困惑した表情を浮かべる。ニコラスは、頭を抱えたくなる衝動を、必死に抑え込んだ。


「通りすがりの商人は、そんな名乗り方をしません、カイさん……」


倉庫に、微妙な沈黙が流れた。


第135話へ続く


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