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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第131話 条件付きの決断


レオンから打診の話を聞いてから三日後。宿に届いた書状を開いたニコラスは、思わず天井を仰いだ。


「本当に来た……。しかも、差出人が王国騎士団長って」


書状には、堅苦しい文面で、国境調査隊への同行を正式に要請したい旨と、その詳細を説明するため、本日午後に騎士団の本部へ来てほしい、ということが記されていた。


「行きたくない気持ちと、行かなきゃいけない気持ちが、同じ重さなんだよなあ……」


重い足取りで宿を出ると、通りの向こうから、見慣れた縦ロールが駆け寄ってきた。


「ニコラス! 手紙が来たんでしょう? 私も一緒に行くわ!」


「え、どうして知ってるの?」


「レオンさんから、シャルロット様にも話を通しておくようにって、昨日連絡があったのよ。あなた一人に任せたら、また言いくるめられて、とんでもない条件で契約させられるかもしれないでしょう」


「言いくるめられるって、俺はそんなに騙されやすく見える?」


「見えるわ。人が良すぎるもの」


即答だった。ニコラスは反論の言葉を探したが、結局、何も見つからなかった。


王国騎士団の本部は、王城のすぐ隣にそびえ立つ、重厚な石造りの建物だった。案内された応接室で待っていると、扉が開き、厳つい壮年の男性が入ってきた。後ろには、レオンの姿もある。


「ニコラス・ローウェル殿だな。騎士団長のヴァルターだ。急な呼び出しに応じてくれて、感謝する」


「いえ、こちらこそ。お招きいただきまして」


ヴァルター団長の鋭い眼光に、ニコラスは背筋が伸びる思いがした。隣のシャルロットも、緊張した面持ちで、深く礼をしている。


「単刀直入に言おう。近く、隣国との国境地帯に調査隊を派遣する。目的は、国境付近の不審な動きの実態調査だ。君の『探知』と『解析』の力を、ぜひ借りたい」


「お話は、レオンさんから伺っています。ただ、いくつか確認したいことがあります」


ニコラスは、一度深呼吸をしてから、言葉を続けた。


「まず、俺は騎士団に入るわけではなく、あくまで冒険者として協力する、という形でよろしいでしょうか」


「無論だ。正式な指名依頼という扱いにする」


「期間は、どのくらいを想定されていますか?」


「最長でも、一か月。調査の進展次第で、短縮されることもある」


「危険度は?」


「正直に言おう。未知数だ。だからこそ、君の力が必要なのだ」


団長の率直な答えに、ニコラスは小さく頷いた。隠し事をせず、ありのままを伝えてくれる姿勢には、好感が持てた。


「分かりました。では、受ける条件として、三つお願いがあります」


「ほう、聞こう」


「一つ目、俺の判断で、危険と感じた場合は、任務の途中でも撤退を進言する権利をください。二つ目、仲間への連絡手段を確保してください。手紙でも構いません。三つ目は……」


ニコラスが言い淀むと、隣のシャルロットが、ぐいと身を乗り出した。


「三つ目は、無事に帰ってくること、でしょう?」


「あ、うん、それも大事なんだけど、実は三つ目は『報酬は事前に明記してほしい』なんだ」


「そっちなの!?」


シャルロットの素っ頓狂な声が、応接室に響いた。団長とレオンが、思わず肩を揺らして、笑いを堪えている。


「ちょっと、ニコラス! 命がかかってるのに、そこはお金の話なの!?」


「だって、前世で、契約書を読まずにサインして痛い目に遭ったことがあるんだよ……」


「前世の話はもういいから!」


ヴァルター団長は、咳払いをして笑いを収めると、真面目な顔に戻った。


「いい心がけだ。契約を重んじる者は、信頼できる。三つとも、承知した。書面にまとめて、後ほど届けさせよう」


「ありがとうございます。それなら、お引き受けします」


その瞬間、団長が、満足そうに目を細めた。


「ありがたい。出発は、十日後を予定している。準備を整えておいてくれ」


応接室を出て、騎士団本部の門をくぐると、シャルロットが、じとりとニコラスを睨んだ。


「あなたって人は……ほんとに、心配が尽きないわね」


「ごめん。でも、受けるって決めたのは、自分の意思なんだ。冒険者として、自由に生きたいって気持ちは、今も変わらない。でも、守りたいものが増えた分、それを守れる力があるなら、使いたいと思った」


「……分かってるわよ。あなたが、そういう人だってことは」


シャルロットが、ふいと顔を逸らした。その耳が、ほんのり赤い。


「その代わり、私からも条件があるわ」


「え、シャルロットも?」


「毎日とは言わないけど、できるだけ手紙を書くこと。無茶は絶対にしないこと。それから……帰ってきたら、ちゃんと私に、一番に報告すること」


「うん、約束する」


「それと、お土産も忘れないでよね」


「そこは、ちゃっかりしてるんだ」


「当たり前でしょう。私は、子爵家の娘なんだから」


胸を張るシャルロットの姿に、ニコラスは思わず吹き出した。緊張で固まっていた心が、すっと軽くなっていく。


夕暮れの王都の空の下、二人は並んで歩き出した。十日後には、未知の国境地帯へと旅立つことになる。不安は消えないけれど、帰る場所があるという事実が、何よりの支えだった。


そして、ニコラスは、まだ気づいていなかった。この調査が、自分自身の、まだ知らない力と向き合う旅になることを。


第132話へ続く


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