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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第127話 謁見の間


謁見当日、ニコラスは慣れない礼装に身を包み、王城の控室で、最後の確認を行っていた。


「お辞儀の角度、言葉遣い……大丈夫、ちゃんと覚えてる」


隣では、シャルロットが、まるで我が事のように緊張した面持ちで、ニコラスの様子を見守っている。


「忘れ物はない? 姿勢は崩れてない? ああ、もう、こっちまで緊張してきたじゃない」


「シャルロットがそんなに緊張してどうするんだよ。今日、謁見するのは俺なんだから」


「あなたが粗相したら、見てるこっちの胃が痛むのよ! 国を代表する場なんだから、絶対に失敗は許されないんだから!」


シャルロットの剣幕に、ニコラスは思わず苦笑した。だが、こうして付き添ってくれる存在のおかげで、不思議と肩の力が抜けていくのを感じる。


「ありがとう、シャルロット。正直、一人だったら、もっと緊張してたと思う」


「当然でしょう。あなたの一大事なんだから、私が付き合うのは当たり前よ」


シャルロットが、ふいと視線を逸らしながら言う。その素っ気ない態度の奥にある優しさを、ニコラスはよく知っていた。学園時代から変わらない、彼女なりの不器用な気遣いだった。


「ニコラス・ローウェル様、お時間です」


係の者に呼ばれ、ニコラスは深呼吸をしてから、謁見の間へと足を踏み入れた。


広い謁見の間には、重厚な雰囲気が漂っていた。両脇には、居並ぶ貴族や騎士たちの姿が見える。そして、玉座に座るのは、エルデシア王国の国王その人だった。


その威厳ある佇まいに、ニコラスは思わず息を呑んだ。学園の授業で、肖像画を見たことはあったが、実際に対面するとなると、やはり感じる重みが違う。足が震えそうになるのを、ニコラスは必死にこらえた。


周囲の貴族たちの視線も、否応なく、ニコラスへと集まっていた。ランクDの新人冒険者が、これほどの場に立つこと自体、異例中の異例なのだろう。ひそひそとした囁き声が、謁見の間の端々から聞こえてくる。


「面を上げよ」


国王の落ち着いた声に、ニコラスは教わった通り、丁寧に顔を上げた。


「此度の功績、しかと聞き及んでおる。古代遺跡における魔力異常、お前の働きがなければ、王都にも甚大な被害が及んでいたやもしれぬ」


「身に余るお言葉にございます」


シャルロットに叩き込まれた言葉遣いが、なんとか口をついて出てくる。内心の冷や汗とは裏腹に、表面上は、落ち着いた受け答えができているようだった。


「ランクDの新人冒険者とは思えぬ働きぶりだ。……それに、聞けば、学園在学中にも、数々の発明で、民の暮らしに貢献してきたそうだな」


国王の言葉に、ニコラスは少し驚いた。保冷魔道具やマナレス・ランプのことまで、既に調べられていたらしい。


「仲間たちと共に、できる限りのことをしてきたつもりです。一人では、到底成し得なかったことばかりです」


「謙虚さも、また美徳よ。此度の功績を称え、褒賞を授けることとする」


国王の言葉とともに、係の者が、立派な装飾の施された勲章を、恭しく運んでくる。


「エルデシア王国功労勲章を、ニコラス・ローウェルに授与する」


厳かな声が、謁見の間に響き渡る。差し出された勲章は、想像していたよりもずっと重みがあり、精巧な細工が施されていた。


「……ありがとうございます」


勲章を受け取りながら、ニコラスは、どこか現実感のない気持ちで、その場に立ち尽くしていた。前世では考えられなかった展開に、頭の中が、まだ十分に追いついていない。


控室で待つシャルロットに、この勲章をどう報告しようかと、場違いなことをふと考えてしまう。きっと、彼女のことだから、誇らしげに、それでいて少し照れくさそうに喜んでくれるに違いない。そんな想像が、張り詰めた緊張の中で、わずかな安らぎを与えてくれた。


「それと、もう一つ」


国王が、少し声の調子を変えて続けた。


「近く、隣国との関係において、少々きな臭い動きがある。お前のような優れた人材には、いずれ、相応の役割を担ってもらうことになるやもしれぬ。その時は、よろしく頼むぞ」


その言葉に、謁見の間の空気が、わずかに張り詰めた。居並ぶ貴族たちの表情も、心なしか硬くなったように見える。ニコラスもまた、国王の言葉の裏に潜む、ただならぬ気配を感じ取っていた。


「……承知いたしました。微力ながら、お役に立てるよう努めます」


謁見の間を退出しながら、ニコラスは、先ほどの国王の言葉を、何度も頭の中で反芻していた。隣国との「きな臭い動き」――その言葉の重みは、単なる社交辞令では済まされないものを、確かに孕んでいた。


学園時代、歴史の授業で習った、エルデシア王国と周辺国との複雑な関係を、ニコラスはぼんやりと思い出していた。表向きには平穏に見える今の時代も、水面下では、何かが静かに動き始めているのかもしれない。


静かに頭を下げながら、ニコラスは、自分の人生が、思っていた以上に大きな流れの中へと、巻き込まれ始めていることを、確かに予感していた。


第128話へ続く


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