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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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123/175

第123話 遺跡の奥へ


遺跡の入り口は、長い年月による風化のせいか、半ば崩れかけていた。それでも、かつての石組みの精巧さは、随所に見て取れる。


「足元に気をつけてください。古い構造物なので、何が崩れるか分かりません」


クラリスの注意を受けながら、三人は慎重に遺跡の中へと足を踏み入れた。


内部は、外から見た以上に広く、幾つもの通路が、奥へと続いているのが見えた。壁面には、見たことのない文字や幾何学模様が、びっしりと刻まれている。


「うわ、これは想像以上だな……」


レオンが、松明の明かりで照らされた壁を見上げながら、感嘆の声を漏らした。長年、騎士として各地を回ってきた彼をもってしても、これほどの規模の遺跡は、そう何度も目にするものではないらしい。


「崩落の跡も見られますが、構造そのものは、驚くほどしっかりしていますね。さすが、古代文明の技術というべきでしょうか」


クラリスも、興味深そうに壁面を観察しながら、手元の記録用紙に、次々とメモを書き込んでいった。


「これが、古代文明の文字……」


「ええ。残念ながら、完全な解読には至っていません。ただ、断片的に読み取れる部分からは、どうやらここが、何らかの『研究施設』だったのではないかと推測されています」


クラリスの説明を聞きながら、ニコラスは壁の文様に手を触れてみた。すると、微かに、何かの情報が流れ込んでくるような感覚があった。


「……『解析』のスキルが、反応してる」


「何か分かりますか?」


「はっきりとは分からないですが……この施設は、魔力そのものを研究するための場所だった、気がします」


ニコラスの言葉に、クラリスが目を見張った。


「それは……研究院の仮説とも一致します。さすがですね」


「ニコラスさんの『解析』、想像以上に有用ですね。通常の観測魔道具では、何年もかけて解明するような情報を、瞬時に読み取れるなんて」


クラリスの感心した様子に、ニコラスは少し照れくさそうに頭をかいた。


「自分でも、まだよく分かってない部分が多いんですけどね。学園時代は、せいぜい魔道具の構造を読み取るくらいにしか使ってなかったので」


「それでも、十分すぎる成果です。この調査が終わったら、ぜひ詳しくお話を伺いたいですね」


クラリスの言葉に、ニコラスは曖昧に笑いながら頷いた。あまり目立ちたくないという本音と、純粋な好奇心を向けられる嬉しさが、心の中でせめぎ合っていた。


三人は、魔力の反応が最も強い方向――遺跡の最奥部を目指して、慎重に歩を進めた。


「ニコラス、前方に何か気配はあるか」


レオンの問いに、ニコラスは意識を集中させる。


「います。……でも、魔物とは、ちょっと違う感じがします」


「違う、とは?」


「上手く言えないんですけど、敵意というより、何かを『守ってる』ような、そんな感覚です」


ニコラスの言葉に、レオンとクラリスは顔を見合わせた。


最奥部にたどり着くと、そこには、淡く輝く巨大な魔法陣と、その中心に浮かぶ、透明な結晶のようなものがあった。そして、その周囲を、石でできた人型の像――ゴーレムらしき存在が、ゆっくりと巡回している。


「あれが、魔力異常の源か……」


レオンが、剣の柄に手をかけながら呟いた。


「待ってください、レオンさん。あのゴーレム、こちらに敵意を向けている様子はありません。おそらく、結晶を守る役割を与えられているだけだと思います」


ニコラスの言葉に、クラリスも頷いた。


「確かに、観測機器の反応を見ても、攻撃的な魔力は感じられません。むしろ、これは……防衛機構、というべきものかもしれませんね」


三人がじっと様子を窺っていると、ゴーレムの一体が、ゆっくりとこちらに顔を向けた。


「……気づかれたか」


レオンが身構える。だが、ゴーレムは攻撃してくる様子もなく、ただじっと、ニコラスたちの方を見つめているだけだった。


「もしかして……」


ニコラスは、恐る恐る一歩、前に進み出た。ゴーレムは、やはり動かない。まるで、何かを「判断」しているかのような、不思議な沈黙が、遺跡の最奥部を満たしていた。


「ニコラス、無理はするなよ」


レオンの緊張した声が、背後から飛んでくる。


「大丈夫です。……敵意は、本当に感じないので」


ニコラスは、ゆっくりと手を伸ばし、ゴーレムの表面に触れてみた。ひんやりとした石の感触とともに、再び『解析』のスキルが、微かな反応を示す。


「これは……古代の管理者が、何かの『資格』を持つ者を、選別するために作られた存在なのかもしれません」


「資格、ですか?」


クラリスが、驚いたように聞き返した。


「はい。はっきりとは言葉にできないんですが、このゴーレムは、こちらの魔力の質を、何かの基準で測っているような気がします」


その言葉に、レオンとクラリスは、固唾を呑んで見守った。遺跡全体を包む静寂の中、結晶の輝きが、わずかに強さを増していくのが見えた。何かが、今まさに動き出そうとしている予感がする。


第124話へ続く


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