↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
117/174

第117話 姉弟の共同依頼


初めての依頼から数日後、ニコラスがギルドの掲示板を眺めていると、見覚えのある姿が声をかけてきた。


「あら、ニコラス。ちょうどいいところに」


「マリー姉さん! こっちで依頼を受けてたんだ?」


「ええ、たまたま近くの街まで足を伸ばしてたのよ。それより、聞いたわよ。初依頼でホーンラビットの群れを瞬殺したって、ギルドの一部で噂になってるじゃない」


「う、あれはその、不可抗力というか……」


気恥ずかしそうに頭をかくニコラスを見て、マリーはくすくすと笑った。


「別にいいじゃない。弟が優秀なのは、姉として誇らしいもの。それより、せっかく会えたんだし、一緒に依頼を受けない?」


「姉さんと? いいね、やろう」


二人で選んだのは、近隣の村から出された「野盗の見張り」という依頼だった。最近、街道付近で野盗らしき集団の目撃情報が増えており、村の自衛団だけでは手が足りないという。


「野盗相手なら、油断は禁物よ。相手も命がけで向かってくるんだから」


「分かってる。姉さんの指示に従うよ」


マリーの言葉に、ニコラスは素直に頷いた。学園でどれだけ鍛えられても、実戦経験という点では、現役の冒険者である姉には及ばない。


「姉さんって、いつから本格的に冒険者やってるんだっけ?」


「学園を卒業してから、もう二年になるわね。最初は失敗ばかりで、散々だったけど」


「マリー姉さんが失敗ばかりなんて、想像つかないな」


「あら、ニコラスだって、優等生みたいな顔して、裏では色々あったでしょう。設計図を盗まれたり、商会に絡まれたり」


「それを言われると、返す言葉がないよ……」


苦笑し合う姉弟の間に、穏やかな空気が流れた。


村に到着すると、不安げな表情の村長が、二人を出迎えてくれた。


「冒険者の方々、本当にありがたい。最近、街道で荷馬車が何度も襲われていて、商人たちも困り果てているんです」


「分かりました。まずは状況を詳しく教えてください」


ニコラスが落ち着いた様子で尋ねると、村長はほっとしたような表情を見せた。手際の良い対応に、マリーも感心したように弟を見つめている。


「お前、こういう対応、妙に慣れてるわね」


「前世……じゃなくて、えっと、昔から、こういう交渉ごとは得意な方だったから」


とっさに言葉を濁しながら、ニコラスは曖昧に笑った。


村に到着し、自衛団の代表と打ち合わせを済ませた二人は、夜の見張りに就いた。


「こういう時、探知のスキル、役に立つんじゃない?」


「そうだね。試してみる」


ニコラスが意識を集中すると、周囲の気配が、ぼんやりと感じ取れた。しばらくすると、街道の先に、複数の人影が潜んでいる気配を察知する。


「姉さん、街道の先、十人くらいいる」


「十人……多いわね。さすが、探知の精度は本物ね」


マリーが、感心したように頷いた。


「村の自衛団に伝えて、先に増援を呼んだ方がいいかもしれない」


「賛成。私たちだけで無理に相手するより、確実に対処する方が大事だもの」


ニコラスの提案に、マリーも同意した。前世の会社員時代、無理な突破より確実な根回しを重視していた癖が、こんな場面でも生きているのかもしれない。


自衛団への連絡と増援の手配を終え、万全の態勢で野盗たちを待ち構えると、思いのほかあっさりと取り囲むことに成功した。


「お前ら、もう囲まれてるぞ! 大人しく投降しろ!」


マリーの一声に、野盗たちは互いに顔を見合わせ、戦意を失っていく。数の上で圧倒され、逃げ場もないと悟ったのだろう。


「……完全に無抵抗だな。これなら、もっと早くから自衛団に相談しても良かったかもしれない」


「それだけ、ニコラスの判断が的確だったってことよ。慌てて突っ込んでたら、きっと怪我人が出てたと思う」


マリーの評価に、ニコラスは少し照れながらも、静かな満足感を覚えた。


「でも、正直、ちょっと物足りなかったかも。もっと激しい戦闘になるかと思ってたから」


「贅沢言わないの。無事に終わるのが一番なんだから」


マリーに軽くたしなめられ、ニコラスは素直に頷いた。前世の記憶を持つ身としては、平和に物事が解決することの価値を、誰よりも分かっているつもりだった。


野盗の一団を村の自衛団に引き渡し、依頼は無事に完了した。報酬を受け取りながら、マリーがふと呟く。


「ねえ、ニコラス。今後も、たまにこうして一緒に依頼を受けない? 姉として、まだまだ色々教えられることがあると思うし」


「もちろん。姉さんと組めるの、すごく心強いよ」


「ふふ、生意気言うようになったわね。お母さんに報告したら、きっと喜ぶわよ」


「お母さん、過剰に喜びそうで、ちょっと怖いけど……まあ、それも含めて報告しておくよ」


笑い合う二人の間に、穏やかな時間が流れていた。夕暮れの街道を並んで歩きながら、姉弟はしばらく、他愛もない話に花を咲かせた。学園を卒業し、それぞれの道を歩み始めた今も、家族としての繋がりは、少しも揺らいでいなかった。


第118話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。