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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第116話 それぞれの新生活


ニコラスが冒険者として歩み始めた頃、仲間たちもまた、それぞれの新しい生活を始めていた。


子爵家の屋敷では、シャルロットが、慣れない執務仕事に奮闘していた。


「お嬢様、こちらの書類にも目を通していただけますか」


「ええ、分かったわ」


執事から渡された書類の山に、シャルロットは思わずため息をつきそうになる。学園時代、魔道具学の実習で散々苦労した頃とは、また違う種類の大変さだった。


「子爵家の跡継ぎとしての仕事って、こんなに地味なものだったのね……」


ぶつぶつと呟きながらも、シャルロットは一枚一枚、丁寧に書類を確認していく。父である子爵からも、少しずつ仕事を任されるようになり、その信頼に応えようと、懸命に努力していた。


休憩の合間、机の引き出しから、一通の手紙を取り出す。ニコラスから届いたばかりの手紙だった。


「初めての依頼で、ホーンラビットの群れを瞬殺……って、相変わらず規格外なんだから」


苦笑しながらも、シャルロットの表情は、どこか誇らしげだった。手紙の最後には、シャルロットの仕事を気遣う言葉が、丁寧に綴られている。


「私も、負けてられないわね」


そう呟いて、シャルロットは再び書類の山に向き合った。その横顔には、以前の縦ロールのお嬢様然とした印象とは、また違う、落ち着いた芯の強さが宿っていた。


「お嬢様、最近、お仕事への取り組み方が変わられましたね」


書類を運んできた侍女が、感心したように言う。


「そうかしら? 別に、何も変わってないと思うけど」


「いえ、以前よりずっと、丁寧で粘り強くなられました。きっと、大切な方の存在が、お嬢様を変えたのでしょうね」


からかうような侍女の言葉に、シャルロットは思わず顔を赤らめた。


「な、何よ、急に! 仕事に戻るわよ!」


一方、王都の商会では、フェリックスが父の下で、商談の基礎を学んでいた。


「フェリックス、今日の取引先との交渉、どう見た?」


「相手、最初の提示額をわざと高く設定してましたね。こっちが値切ってくるのを見越して」


「ほう、よく気づいたな」


父の商人仲間たちからも、フェリックスの観察眼は高く評価され始めていた。グラント商会やクレイン商会との対決で培った経験が、着実に力になっている証だった。


「いつか、ニコラスたちの発明を、もっと大きな市場に広めてみせますよ」


フェリックスの瞳には、野心と期待が、同時に宿っていた。


「お前がそう言うなら、期待しておこう。だが、まずは目の前の仕事を、一つずつ確実にこなすことだ。焦りは禁物だぞ」


父の忠告に、フェリックスは素直に頷いた。商人としての基礎を、今はしっかりと固める時期だと、自分でもよく分かっていた。


ローランドの研究室では、ソフィアが、黙々と小型ランプの改良に取り組んでいた。


「魔力残量が少なくても、安定して光るようにするには、この素材の配合比率を、もう少し調整した方が良さそうです」


「さすがだな、ソフィア。この繊細な感覚は、俺にはなかなか真似できない」


ローランドの言葉に、ソフィアは控えめに微笑んだ。


「ニコラス君たちみたいに、派手な活躍はできませんが……こうして、誰かの役に立つものを、コツコツ作っていくのが、わたしには合っているみたいです」


「それも立派な才能だ。地道な積み重ねがなければ、どんな発明も形にはならないからな」


ローランドの励ましに、ソフィアは静かに頷いた。学園での六年間で培った魔力操作の精密さが、今、新たな発明の場で花開こうとしていた。


そしてレイモンド家の領地では、エミリーとガレスが、村々を回りながら、魔道具の普及活動に奔走していた。


「この村にも、保冷魔道具を導入できたら、きっと喜ばれると思います」


「ああ、村長に話を通してみよう。エミリー、お前の提案、いつも的確だな」


ガレスの素直な言葉に、エミリーは頬を赤らめながらも、嬉しそうに頷いた。かつて設計図流出事件で苦しんだ過去を持つエミリーにとって、今のこの仕事は、自分の存在意義を実感できる、かけがえのないものになっていた。


「お母さんの雑貨店にも、いつか保冷魔道具を置けたらいいなって、ずっと思ってたんです。今、その夢が少しずつ、形になっていくのが嬉しくて」


「お前の想いが、村の人たちにもちゃんと伝わってるよ。みんな、エミリーの説明を聞いて、安心して導入を決めてくれてるんだから」


ガレスの言葉に、エミリーは胸がいっぱいになるのを感じていた。侍女の娘として生まれ、肩身の狭い思いをしてきた過去が、今では確かな誇りへと変わりつつあった。


それぞれの場所で、それぞれの形で、仲間たちは着実に歩みを進めていた。離れていても、手紙や噂話を通じて、互いの近況は、不思議と伝わってくる。


「今度、みんなで集まれる機会を作りたいな」


ニコラスからの手紙を読み返しながら、シャルロットは、窓の外に広がる夕焼け空を見上げた。王都の方角に浮かぶ雲を眺めながら、今頃ニコラスはどんな冒険をしているだろうかと、自然と想像が膨らんでいく。離れた場所にいても、確かな絆で結ばれた仲間たちの物語は、まだまだ続いていく。


第117話へ続く


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