↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
113/174

第113話 規格外の数字


鍛錬場に差し込む朝日の中、ニコラスは父の求めに応じて、一つずつ、自分の持つスキルを確認していくことになった。


「まず、剣術だな。これは間違いなく持ってる」


「ああ、今の模擬戦で、十分すぎるくらい分かったよ」


父ヴィルが、苦笑しながら頷く。


「次に、身体強化。これも、さっきの動きで使っていたのを見た」


「それと、属性付与と、加速、探知……これで五つだよね」


「探知なんて、いつの間に身につけたんだ? 俺もお前の母さんも、持っていないスキルだぞ」


「学園の実習で、魔道具の魔力漏れを探すのに使ってたら、いつの間にか扱えるようになってたんだ。最初は便利だなってだけで、特別なスキルだとは思ってなかった」


「それが普通じゃないんだよ、ニコラス……」


ヴィルが、呆れたような、それでいてどこか誇らしげな表情で、額に手を当てた。


ニコラスが指を折りながら数えていく。見物席のエレーナも、ジークとマリーも、固唾を呑んでその様子を見守っていた。


「待って、ニコラス。保冷魔道具を作ったとき、設計図を見ただけで構造を理解してたでしょう? それも、スキルの一つなんじゃない?」


マリーが、恐る恐る口を挟む。


「言われてみれば……『解析』、かな。魔道具や魔法の構造を読み取れる力」


「それで、六つ目だ」


父ヴィルの声が、わずかに掠れていた。


「六つって……それ、父さんたちの先輩が持ってるっていう数と、同じだよね」


ジークが、信じられないという表情で呟く。


「ああ。あの方は、冒険者の中でも伝説的な存在だ。まさか、十六歳の息子が、同じ数のスキルを持っているなんて……」


ヴィルは、腕を組みながら、何度も頭を振っていた。にわかには受け入れがたい事実に、しばし言葉を失っているようだった。


「お父さん、その先輩って、どんな人なの?」


マリーが、気になった様子で尋ねる。


「もう随分前に引退して、今は王都の郊外で静かに暮らしていると聞いている。若い頃、俺とお前の母さんは、あの人に剣術と魔法の基礎を叩き込まれたんだ。とにかく規格外の人だった……まさか、自分の息子がそれに並ぶとは、思いもしなかったが」


懐かしむような、それでいてまだ信じきれないような、複雑な表情でヴィルは言葉を続けた。


「でも、本当にそれで全部かしら?」


母エレーナが、ふと疑問を口にする。


「え、まだあるかもしれないってこと?」


「ニコラス、学園でやっていたこと、他にもあったでしょう。商会との交渉で、相手の嘘を見抜いたことがあったって、前に手紙に書いてなかった?」


エレーナの指摘に、ニコラスは思わず固まった。確かに、グラント商会のハインツとの交渉の際、相手の態度の微妙な変化から、何か違和感を察知した記憶がある。あの時は、ただの「勘」だと思っていたが……。


「……もしかして、それも?」


「試してみる価値はあるな」


父の提案で、ニコラスはその場で意識を集中させてみた。すると、確かに、何かを「見抜く」ような感覚が、意識の中にすっと浮かび上がってくる。


「ある……これも、スキルだ」


鍛錬場に、静寂が落ちた。


「七つ……伝説の先輩すら超えている、ということか」


ヴィルの声には、もはや驚きよりも、畏敬の念に近いものが滲んでいた。


「待って、待って。俺、本当に自分でも分かってなかったんだけど……」


ニコラスは、頭を抱えながら、呆然と呟いた。前世の記憶を持ちながら、この世界の「普通」を基準に生きてきたつもりだったが、まさか自分が、こんな規格外の存在だったとは、想像もしていなかった。


「もしかして、これから探せば、まだ出てくるんじゃないか……?」


ジークが、おそるおそる口にした言葉に、全員が同時に、ニコラスの顔を見つめた。


「ちょ、ちょっと待って! 今日はもう、十分すぎるくらい驚いたから!」


ニコラスの悲鳴のような声に、家族全員が、思わず笑ってしまった。張り詰めていた空気が、少しだけ和んでいく。


「ふふ、ニコラスのそんな慌てた顔、久しぶりに見たわね」


エレーナが、涙目になりながらも、楽しそうに笑う。


「お母さん、笑いごとじゃないんだけど……」


「いいじゃない、たまにはこういうのも。それより、お腹空いたでしょう? 朝ご飯、たくさん作ったのよ」


母の言葉に、張り詰めていた空気が、すっかり和やかなものへと変わっていった。


「とにかく、これは一度、冷静に考える必要があるな。この数字が、周りに知れたら、どうなるか……」


父の言葉に、ニコラスも静かに頷いた。


「とりあえず、今日のことは、村の外では話さない方がいいかもしれないな。悪意を持った人間に目をつけられたら、厄介なことになる」


「それは……確かにそうだね」


グラント商会やクレイン商会との一件を思い出し、ニコラスは父の言葉に素直に頷いた。規格外の力は、使い方次第で、味方にも敵にもなりうる。


「でも、焦らなくていい。これから冒険者としてやっていく中で、ゆっくり自分のペースで、その力と付き合っていけばいいんだ」


母エレーナの柔らかい言葉に、ニコラスの肩から、少しだけ力が抜けた。


学園卒業と同時に明らかになった、自分自身の本当の姿。これから始まる冒険者としての人生が、思っていたよりもずっと、特別なものになりそうだと、ニコラスは予感していた。


第114話へ続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。