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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第111話 帰郷


学園を出たニコラスは、まず実家のあるミレット村へと向かう馬車に乗り込んだ。王都からは数日かかる道のりだが、六年ぶりにゆっくりと故郷の景色を眺められることに、どこか胸が高鳴っていた。


「変わらないなあ、この辺りの景色は」


馬車の窓から見える、のどかな田園風景に、ニコラスは自然と頬を緩めた。前世の記憶を持ったまま転生し、剣術や魔法の訓練に明け暮れた幼少期。あの頃からすれば、ずいぶん遠くまで来たものだと、しみじみ思う。


村に到着すると、見慣れた家の前に、すでに家族が揃って待っていた。


「ニコラス! 待ってたのよ、本当に!」


母エレーナが、駆け寄ってくるなり、ニコラスをぎゅっと抱きしめる。水色の髪が、懐かしい匂いと共に揺れた。


「お母さん、相変わらず元気だね」


「当然でしょう! 息子が総代で卒業するって聞いて、嬉しくて嬉しくて、昨日は一睡もできなかったわよ」


「寝不足は健康に良くないよ、お母さん……」


苦笑するニコラスの背後から、落ち着いた声がかかる。


「おかえり、ニコラス。立派になったな」


父ヴィルが、静かな笑みを浮かべて立っていた。剣術一筋で鍛え上げられた体は、六年前と変わらず頼もしい。


「ただいま、父さん。……変わらないね、相変わらず」


「鍛錬だけは、毎日欠かさずやっているからな」


その言葉に、ニコラスは思わず笑ってしまった。前世の記憶を持つ自分でさえ、父のこの揺るがない日常には、時々感心させられる。


「ニコラス兄さん!」


元気な声で駆けてきたのは、弟のような存在である――いや、実際には兄であるジークと、姉のマリーだった。


「ジーク兄さん、マリー姉さん、二人とも元気そうで良かった」


「お前こそ、立派になったじゃないか。学園では色々な発明をしたって、村でも話題になってたぞ」


ジークが、感心したように言う。魔法を得意とする兄は、昔からニコラスの成長を気にかけてくれていた。


「保冷の魔道具だったか? あれ、村の猟師たちも欲しがってたぞ。獲った肉を長持ちさせられるなら、こんな助かる話はないってな」


「それなら、今度村にも広めてみようかな」


「お、それはいいな。村長に話してみるといい」


「元気すぎるくらいだよ。マリー姉さんなんて、最近、冒険者ギルドの依頼を一人でこなすようになったんだから」


「ちょっと、ジーク! それは秘密にしてって言ったじゃない!」


マリーが頬を赤くして弟をたしなめる。剣術が得意な姉らしい近況に、ニコラスは感心した様子で頷いた。


「すごいな、マリー姉さん。俺も、これから冒険者としてやっていくつもりなんだ」


「えっ、本当に? 騎士団の誘い、来てたんじゃないの?」


「断ったんだ。自分の裁量で動ける生き方がしたくて」


その言葉に、両親も兄姉も、特に驚いた様子は見せなかった。


「冒険者か。悪くない選択だと思うぞ」


マリーが、剣を振る真似をしながら笑った。


「依頼によっては、私と一緒に組めるかもしれないな。王都近くの依頼なら、たまに顔を合わせることもあるだろうし」


「それは心強いな、マリー姉さん。改めてよろしく」


「ふふ、任せなさい。弟の初仕事くらい、姉として見てあげるわよ」


マリーの頼もしい言葉に、ニコラスは久しぶりに、家族としての温かさを強く感じていた。


「ニコラスが決めたことなら、それでいいと思うわ。昔から、自分の意志がはっきりしてる子だったもの」


母エレーナが、優しく微笑みながら言う。


「俺も、自分の道を進むタイプだから分かるよ。無理に型に収まる必要なんてない」


父ヴィルの言葉には、どこか実感が込められているように聞こえた。かつて有名冒険者として名を馳せた父自身も、きっと似たような選択をしてきたのだろう。


「ありがとう、二人とも。……あ、そういえば、父さん」


「どうした?」


「久しぶりに、模擬戦してほしいんだ。学園でいろいろ鍛えてきたから、父さんがどれくらい強いのか、改めて確かめたくて」


その提案に、ヴィルは目を輝かせた。


「いいとも。ちょうど体を動かしたかったところだ」


「あなたたち、張り切りすぎて庭を壊さないでよね」


母エレーナが呆れたように肩をすくめる横で、ジークとマリーも興味深げに顔を見合わせていた。


「明日の朝、鍛錬場で待ってる。しっかり準備してこいよ、ニコラス」


父の言葉に、ニコラスは静かに、だが確かな気合を込めて頷いた。


その夜、夕食の席では、母エレーナが用意した大量の料理が並び、家族総出で久しぶりの団欒を楽しんだ。保冷魔道具の開発秘話や、設計図流出事件の顛末、商会との対決の話まで、ニコラスが語るたびに、家族は驚いたり笑ったりと、忙しなく反応していた。


「本当に、色々な経験をしてきたのね」


母エレーナが、しみじみとした様子で言う。


「でも、一番大事なのは、こうして無事に、立派な仲間たちと一緒に帰ってこられたことだな」


父ヴィルの言葉に、ニコラスは静かに頷いた。学園で積み重ねてきた六年間の成果を、ここで初めて父に見せる時が来る。それがどんな結果をもたらすのか、この時のニコラスはまだ、何も知らなかった。


第112話へ続く


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