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転生したら村人だったのに、なぜか全スキル使えました  作者: コンペイ党


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第108話 卒業式前夜


記念展示の熱気も冷めぬまま、学園はいよいよ卒業式を目前に控えていた。


「卒業式の総代、ニコラスに決まったってよ」


フェリックスが、どこかから聞きつけてきた情報を、嬉しそうに報告してくる。


「えっ、俺が? なんで……」


「成績も実績も申し分ないし、何より今年の学園を一番賑わせた功労者だろ。文句言う人間なんていないさ」


「で、でも、壇上で挨拶とか、そういうの苦手なんだけど……」


「諦めろ。これも経験だ」


フェリックスに背中を叩かれ、ニコラスはがっくりと肩を落とした。前世でも人前でのスピーチは得意ではなかったというのに、まさか異世界に来てまで総代挨拶を任されるとは思っていなかった。


「ニコラス様が総代だなんて、素敵じゃない。しっかり原稿、見てあげるから」


シャルロットが、どこか得意げに申し出てくる。


「頼りにしてるよ、シャルロット」


「当然よ! 私に任せておきなさい」


そんな話を聞いて駆けつけてきたガレスも、からかうように笑っていた。


「お前が総代か。似合わないとは言わないが、意外だな」


「ガレスにまで言われると、ちょっと傷つくんだけど……」


「悪い意味じゃない。お前らしい実績の積み重ねの結果だ、誇っていい」


ガレスの素直な言葉に、ニコラスは思わず頬を緩めた。武芸大会で対戦して以来、こうして気軽に言葉を交わせる関係になったことが、今では当たり前のようで、それでいて得難いものに感じられる。


「エミリー、お前もニコラスの挨拶、楽しみにしてるんじゃないか?」


「え、えっと……はい。きっと、いい挨拶になると思います」


エミリーが、少し照れたように答える。その様子を見て、ガレスも満足げに頷いた。


その日の放課後、談話室に集まった五人は、卒業式の挨拶原稿づくりに取り組んだ。


「えーと……『この一年、様々な出会いと挑戦がありました』……うーん、硬いな」


「もっとニコラスらしい言葉でいいと思います。等身大の気持ちを、素直に書けば」


ソフィアの助言に、ニコラスは頷いた。


「じゃあ、保冷魔道具を作ったときのこと、設計図が流出したときのこと、みんなで乗り越えてきたこと……そういうのを、ちゃんと言葉にしてみる」


「それがいいわ。私たちのことも、ちゃんと書いてよね」


シャルロットが念を押すように言う。


「書くよ、もちろん。シャルロットがいなかったら、今の俺はいないんだから」


「な、なによ、急に……!」


真っ赤になるシャルロットを見て、フェリックスとエミリーが、にやにやと笑い合っていた。


「それと、グラント商会の件やクレイン商会の件も、少し触れておいた方がいいと思うわ。困難を乗り越えたって話、後輩たちの励みになるもの」


「確かに。でも、あんまり細かく話すと、怖がらせちゃうかもな」


フェリックスが苦笑しながら言う。


「大丈夫よ、そこはちゃんと『乗り越えられる』ってところを強調すればいいんだから」


「シャルロット様の言う通りだと思います。困難があっても、仲間がいれば大丈夫だって、伝えたいですよね」


ソフィアの言葉に、全員が頷いた。原稿には、少しずつ、五人それぞれの思いが織り込まれていく。


原稿作りは夜遅くまで続いたが、途中で小型ランプの話題にもなった。


「そういえば、小型ランプの試作、進んでる?」


「はい。魔力残量がほとんどなくても光る素材の調整が、もう少しで終わりそうです」


ソフィアが、机の上に置いた小さな試作品を指して言う。淡い光が、ほんのりと灯っていた。


「卒業しても、この研究は続けような」


「もちろんです」


「そういえば、ルーカスは明日、大丈夫かな。実技試験の勉強会でも、結構緊張してたし」


「あいつなら平気だろ。最後まで頑張り抜いたんだから、自信持っていいはずだ」


フェリックスが太鼓判を押すように言う。実技指導を通じて、ルーカスとフェリックスの間にも、剣術と魔道具学を越えた友情が育っていた。


「卒業式が終わったら、ルーカスとも、改めてお祝いしような」


「もちろんだ。全員で、盛大に祝おうぜ」


談話室に、賑やかな笑い声が響く。誰も気づかないうちに、窓の外の星が、少しずつ数を増していった。


夜も更け、原稿がようやく形になった頃、談話室の窓からは、満天の星が見えていた。


「明日は卒業式の予行練習だってな。ちゃんと寝ないと」


「分かってるわよ。でも、今日は……なんだか、眠れる気がしないわ」


シャルロットの言葉に、ニコラスも静かに頷いた。学園生活最後の夜が、ゆっくりと更けていく。


「みんなで過ごした六年間、本当に濃かったな」


「濃すぎるくらいよ、本当に」


「でも、悪くない六年間だった」


窓の外に広がる星空を見上げながら、五人はそれぞれの思い出を、静かに胸に刻んでいった。


「さて、そろそろ解散しようか。明日に備えて」


「そうだな。ニコラス、挨拶、頑張れよ」


「ありがとう、フェリックス。みんなのおかげで、ここまで来られた」


談話室を出て、それぞれの部屋へと戻っていく仲間たちの背中を見送りながら、ニコラスは、もう一度星空を見上げた。明日はいよいよ、卒業式――学園生活最後の、大きな一日が始まる。


第109話へ続く


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