第105話 結果発表
試験から一週間後、学園の掲示板に、卒業試験の結果が貼り出されることになった。
「うわあ、見るの緊張するな……」
フェリックスが、掲示板の前で、落ち着かない様子を見せていた。
「大丈夫よ、私たち、しっかり準備してきたんだから」
シャルロットの励ましに、フェリックスは深呼吸をした。
「よし、見るぞ」
掲示された結果を、五人は固唾を呑んで確認した。
「合格……! 全員、合格だ!」
ニコラスの声に、皆が歓声を上げた。
「やった! 本当に良かった……!」
ソフィアが、安堵のあまり、涙ぐみながら言った。
「俺も、ちゃんと合格できたんだな……!」
フェリックスが、感極まった様子で、拳を握りしめた。
「わたしも……! 本当に良かったです」
エミリーも、嬉しそうに笑顔を見せた。
「当然の結果よ! 私たち、あれだけ頑張ったんだから」
シャルロットが、誇らしげに胸を張る。
喜びに沸く五人のもとに、クレア先生が、優しい笑顔で近づいてきた。
「皆さん、おめでとうございます。特に、ニコラスさんとソフィアさんの魔道具学の実技、歴代でも上位の評価でしたよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
ニコラスが、驚きと喜びを滲ませながら答えた。
「それと、シャルロットさん、フェリックスさん、エミリーさんも、それぞれの分野で、素晴らしい結果を残されました。この一年の皆さんの成長、見ていて本当に嬉しかったです」
クレア先生の言葉に、五人は互いに顔を見合わせ、温かい笑顔を交わした。
「先生、ありがとうございました。色々と、お世話になりました」
ニコラスの言葉に、クレア先生は、少し寂しげな、それでいて誇らしげな表情を見せた。
「こちらこそ、皆さんのような生徒たちを担任できたこと、本当に光栄でした。卒業後も、どうかお元気で」
その日の放課後、五人は喜びを分かち合うため、いつもの空き教室に集まった。
「合格、本当におめでとう、皆!」
フェリックスの音頭に、皆が笑顔で応えた。
「これで、卒業式まで、あと少しね」
シャルロットの言葉に、皆が、少し感傷的な表情を浮かべた。
「結果も出たことだし、記念展示の準備、本格的に進めていこうか」
ニコラスの提案に、皆が頷いた。
「保冷魔道具から、マナレス・ランプ、ストックアイズ、クイックレジ……。全部、並べて展示しましょう」
ソフィアの言葉に、シャルロットが早速、展示レイアウトの構想を練り始めた。
「せっかくだから、開発の裏話とかも、パネルにまとめたいわね」
「いいアイデアだな。俺たちの軌跡、しっかり残しておこう」
フェリックスも、意欲的に賛同した。
「わたしも、お手伝いします」
エミリーの言葉に、皆が温かい笑顔を向けた。
窓の外に広がる、冬の澄んだ青空を眺めながら、ニコラスは、この六年間の学園生活が、確かな実を結んだことを、改めて実感していた。
「よし、卒業式まで、残りの時間、精一杯楽しもうな」
ニコラスの言葉に、皆が力強く頷いた。
その夜、寮の食堂では、合格祝いのささやかな夕食会が開かれた。いつもより少し豪華な料理が、テーブルいっぱいに並べられていた。
「かんぱーい!」
フェリックスの音頭で、果実水のグラスを掲げる。
「本当に、この一年、色々あったわよね」
シャルロットが、しみじみと振り返った。
「グラント商会に始まり、クレイン商会、マナレス・ランプ、ストックアイズ、クイックレジ……。よくもまあ、これだけのことを成し遂げたもんだ」
フェリックスの感慨深い言葉に、皆がそれぞれの記憶を重ね合わせていた。
フェリックスが、指を折りながら数え上げる。
「全部、皆さんと一緒だったからこそ、できたことです」
エミリーの言葉に、皆が頷いた。
「エミリーがいなかったら、実現できなかった発明も、たくさんあったな」
ニコラスの言葉に、エミリーは照れくさそうに微笑んだ。最初は怯えがちだった彼女が、今ではこんなに頼もしい仲間になったことを、誰もが実感していた。
「そういえば、技術革新フェアで始まった、ローランドさんとの共同研究、卒業後はどうするんだ?」
フェリックスの問いに、ソフィアが答えた。
「引き続き、続けさせていただく予定です。卒業後も、定期的に研究室に通わせていただくことになりました」
ソフィアの表情には、研究への尽きない探究心が、確かに浮かんでいた。
「それは良かった。俺たちの発明、これからも、どんどん発展していきそうだな」
「はい、楽しみです」
未来への確かな手応えが、その場にいる全員の胸に、静かに満ちていった。
賑やかな会話が、夜遅くまで続いた。合格の喜びと、卒業という大きな節目への期待が入り混じる、特別な夜だった。
「さて、明日からも、記念展示の準備、頑張っていこうな」
ニコラスの言葉に、皆が笑顔で頷いた。長い道のりの先に、新しい未来への扉が、静かに開かれようとしていた。冬の夜空に、五人の笑い声が、いつまでも温かく響いていた。この先も、この絆が色褪せることはないだろう。
第106話へ続く




