第101話 新年の学園
新年を迎え、学園にも、いつもの賑やかな日常が戻ってきていた。
「あけましておめでとう、ニコラス!」
教室に入るなり、フェリックスが元気よく声をかけてくる。冬休み中に少し伸びた前髪が、いつもより快活な印象を与えていた。
「おめでとう、フェリックス。今年もよろしくな」
「おう! 今年は、卒業もあるし、色々忙しくなりそうだな」
そう言いながらも、フェリックスの表情には、どこか楽しげな余裕が滲んでいた。
「そういえば、ソフィアが言ってた小型ランプのアイデア、覚えてるか?」
ニコラスの問いに、フェリックスは頷いた。
「ああ、お子さんの枕元にも置けるやつだろ。あれ、結構いい線いってると思うぞ」
「今日の放課後、皆で話し合ってみようか」
「賛成だ」
放課後、いつもの空き教室に集まった五人は、早速新しいプロジェクトについて話し合いを始めた。
「小型ランプ、まずはコンセプトを整理しよう」
ニコラスが羊皮紙に、思いつく要素を書き出していく。
「小さくても、しっかり明るさを調整できるようにしたいです」
ソフィアが自分のアイデアを説明する。
「あと、持ち運びやすいように、軽量化も重要だと思う」
「デザインは、可愛らしい感じにしましょうか。子供部屋にも合うように」
シャルロットが早速、スケッチを描き始めた。
「価格帯も、手が届きやすいように工夫したいですね」
エミリーが、これまでの経験を踏まえて意見を出す。
「よし、皆の意見、大体まとまったな。それじゃあ、設計から始めよう」
フェリックスの号令に、皆が頷いた。
作業を進める中、ふとソフィアが心配そうに呟いた。
「あの、卒業までの時間、限られていますが、このプロジェクト、間に合うでしょうか」
その言葉に、教室の空気が、少しだけ引き締まった。
「確かに、卒業までに、色々やることも多いよな」
フェリックスが顎に手を当てて考え込む。
「卒業試験の準備もあるし、進路のことも、そろそろ本格的に考えないといけないし」
シャルロットの言葉に、皆が頷いた。
「でも」とニコラスが続けた。「だからこそ、今できることを、しっかりやっていこう。卒業しても、俺たちの繋がりは終わらないんだから」
「そうですね。焦らず、着実に進めていきましょう」
ソフィアの言葉に、皆が改めて頷いた。
「よし、それじゃあ、まずは基本設計から。小型化のために、魔法陣の構造を見直す必要があるな」
ニコラスが真剣な表情で作業に取り掛かる。ソフィアも早速、細かい調整に取り組み始めた。二人の手元には、これまでの経験で培われた、確かな熟練が感じられた。
日が暮れる頃には、大まかな設計の方向性が固まっていた。
「今日はいいペースだったな」
「はい、この調子で進めていきましょう」
教室を出て、帰り道を歩きながら、エミリーがふと呟いた。
「そういえば、卒業したら、皆さんとは、頻繁には会えなくなるんでしょうか」
その言葉に、皆が少し考え込んだ。
「まあ、物理的には離れることもあるかもしれないけど……」
フェリックスが答える前に、ニコラスが力強く言った。
「離れても、繋がりは切れない。それに、共同研究も、ストックアイズの発展も、これからも一緒にやっていけると思う」
「はい、私もそう思います」
ソフィアの言葉に、皆が笑顔で頷いた。
「よし、今年も、皆で頑張っていこうな」
ニコラスの言葉に、賑やかな声が重なり合う。
寮の分かれ道で、ニコラスとシャルロットは、少し二人きりで話す時間を持った。他の三人は、気を利かせて、少し先を歩いていた。
「卒業まで、あと少しね」
「ああ、本当にあっという間だった」
「私、卒業したら、実家の家業を手伝うことになると思うの。でも……」
シャルロットが、少し言いにくそうに続けた。
シャルロットは少し俯きながら、言葉を選ぶように続けた。「その、あなたとの関係も、ちゃんと大事にしていきたいと思ってる」
「もちろんだ。俺も、同じ気持ちだよ」
夜風が少し冷たかったが、二人の間に流れる空気は、どこまでも温かかった。
「王都と実家、少し距離はあるけど、頑張れば会えない距離じゃないし」
「うん、それに、共同研究やギルドの仕事もあるから、俺も王都には頻繁に来ることになると思う」
物理的な距離よりも、心の距離こそが大切なのだと、二人はどちらからともなく感じていた。
そんな話をしながら、二人は将来への不安を、少しずつ、確かな希望へと変えていった。
「ねえ、ニコラス」
「なに?」
「卒業しても、ちゃんと連絡取り合ってね」
「当たり前だろ。約束する」
「うん、約束よ」
小さく微笑み合う二人の間に、これからも続いていく確かな絆が、静かに宿っていた。寮の窓に灯る明かりが、二人の姿を、優しく照らしていた。
冬の澄んだ空気の中、新しい一年の始まりを、五人はそれぞれの決意とともに、迎えていた。卒業という節目が近づく中でも、皆で築いてきた絆は、これから先も、変わらず続いていくのだろう。
第102話へ続く




