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390話

「無礼を承知の上でお聞きするが、その……リゼ殿は、どれくらい強いのだ?」


 唐突な問い。


「どれくらい……」


 リゼは言葉を探す。

 強さを表す基準で最初に思いつくのはレベルだった。

 だが、それはミコトの問いに対して、望んでいる答えとは違う。

 共通の物差しを考える――。


「バーナム曲芸団の人たちと戦ったことがあるよ。その話で判断してもらってもいい?」

「もちろんだ!」


 思い出すように、ミコトは小さく笑う。

 その声には、警戒ではなく、どこか懐かしさが滲んでいた。

 強さの判断は、ミコトに任せるつもりでリゼは話を続ける。


「バショウさんっていう大きな人がいるでしょ」

「無駄に頑丈な男だ」


 即座に返ってきた言葉に、リゼも思わず苦笑する。


「そのバショウさんの体に傷をつけたことがあるよ」

「ほぉ……」


 ミコトの眉がわずかに上がる。


「ほんの少しだけどね……あの硬さは、本当に厄介だったよ」


 あの戦いの感触が蘇る。

 刃が弾かれる感覚と、手に残った痺れ。

 リゼが肩をすくめると、ミコトは笑う。


「うんうん、たしかに。あれは本当に厄介だ。あやつの体は、ほとんど鎧みたいなものだからな」


 頷くミコト。

 その言葉には、戦った者同士の実感がこもっていた。


「それでも傷をつけたなら、なかなかの腕前だ」


 ミコトはそう言って、楽しそうに目を細める。

 戦いを思い出しているというより、昔の仲間の武勇伝を聞いているような顔だった。

 リゼは少しだけ視線を落とし、話を続ける。


「あやつは、無駄に頑丈でな……何度、刃を滑らせたことか」


 柔らかな声音は、かつての仲間を思い出しているのだろう。

 その仲間と袂を分かち、旅立った覚悟。

 軽いものではないはずだ。

 だが、自分とミコトとでは実力に雲泥の差があることは、バーナムたちの会話からも分かっていた。


「それと、チクマールさんに認められて……アラクネの糸を譲り受けたよ」


 アイテムバッグに触れる。


「チクマールが?」


 声に驚きが混じる。


「ケチなあやつが、簡単に物を上げるなど……考えられん」


 ミコトは半信半疑、感心したように頷いた。

 リゼは触れていたアイテムバッグから、チクマールから譲り受けたアラクネの糸を取り出して、ミコトに見せる。


「なるほど……」


 小さく呟き納得する。

 簡単に手に入る代物ではないことは、重々承知している。


「やはり、拙者が戦いたいと思ったのも間違いではなかったな」


リゼは苦笑して、静かに言葉を発する。


「でも、私は強くないよ」


 謙遜ではない。

 事実だと思っている。

 自分より強い者を、何人も知っている。

 ミコトは、わずかに目を細める。


「それは拙者も同じだ」


 静かな返答。

 その言葉に、リゼははっとする。

 “自分より強い”と思っている相手が、同じように「弱い」と言う。

 その響きが、どれほど重いか。

 自分が過去に、同じような言葉を口にしたことを思い出す。

 そのとき、仲間はどんな顔をしていただろう。

 強さとは、他者との比較ではないのかもしれない。

 部屋に、静かな空気が満ちる。

 戦う約束を交わしたはずなのに――

 今この瞬間、二人の間にあるのは、奇妙な共感だった。


「……あやつらは元気だったか?」

「うん。賑やかだったよ」


 元気そうに見えていたが、それはミコトがいた時の状況を知らないため、無責任なことは言えないと思い、短い肯定に、自分の印象を添えた。

 リゼの言葉に、ミコトは口元を緩めた。


「あやつらは、いつも騒がしいからの」


 少しだけ目を細めると、まるで、遠い日の光景を思い出しているようだった。


「野営のときもな、静かに眠れた試しがない。誰かが必ず騒ぎを起こす」


 リゼは思わず笑う。


「バショウが大鍋をひっくり返してな。皆で夜中に食料を拾い集めたこともある」


 ミコトの声には、呆れと懐かしさが混じっていた。


「そのとき一番騒いでいたのがチクマールだ」

「チクマールさんが?」


 リゼは目を丸くする。


「『これは神が与えた試練だ!』とか言いながら、鍋を持って走り回っていた」


 ミコトは肩を揺らして笑う。


「結局、あやつが料理を作り直した。妙に手際が良くてな」

「料理できるんだ」

「できる。ああいう奴は妙に器用だ」


 少し懐かしそうに言いながら、ミコトは視線を窓へ向けた。


「だが、調子に乗るとすぐ騒ぎを起こす。宴の席では真っ先に踊り出すし、芸の真似事まで始める」


 その言葉からは、確かな親しみが感じられた。

 仲間だった日々の温度が、静かに滲んでいる。

 やがてミコトは、ふっと息を吐いた。


「お調子者ではあるが、あやつは見る目がある」


 一瞬だけ、遠くを見る。


「気に入らぬ相手には絶対に何も渡さないが、面白いと思った相手には平気で大事な物まで渡す」


 リゼは少し肩をすくめる。


「その“面白い”の基準がよく分からないけどね」

「それがチクマールだ」


 ミコトは静かに笑う。

 チクマールを知っているリゼも同調するが、別の疑問が頭に浮かんだ。


「今日の宿屋は、どこにしたの?」

「宿屋?」


 リゼの質問を不思議そうに聞くミコト。


「野営に決まっておる。宿屋に泊まる必要などあるのか?」


 価値観、環境の違いが露わになる。

 ヤマト大国や、バーナム曲芸団に恩があるリゼにとって、ミコトに野営をさせることに抵抗があった。


「ちょっと、待っててくれる」

「別に構わぬぞ」


 ミコトを残してリゼは部屋を出る。

 行き先は一階だったが、誰も居なかった。

 引き返して、アンジュの部屋の扉を叩く。


「なにかあった?」


 開口一番、心配そうにリゼを見つめる。

 リゼは「大丈夫」と言った後に、相談を持ち掛けた。

 相談内容は、「ミコトを自分の部屋に泊めていいか?」だった。

 自分の判断でなく、クランリーダーのアンジュの判断に従う必要があると考えたからだ。

 リゼの杞憂だったのか、あっさりと承諾を得る。

 その表情から、ミコトと二人になったが問題なかったことを察した。


「……一応、確認だけど危険はないのよね?」


 順序が逆になったと思いながらも、リゼに確認を取った。

 

「うん。大丈夫だよ」


 即答するリゼ。

 ミコトの話を終えて、明日のことを一言二言話して、二人は別れた。

 自分の部屋に戻ったリゼは、ミコトに部屋に泊まることを伝える。

 すると、ミコトは姿勢を正して、リゼに深く頭を下げた。

 侍としての矜持……いいや、感謝を忘れないという教えなのだろう。



――――――――――――――――――――



■リゼの能力値

 『体力:四十八』 

 『魔力:三十三』

 『力:三十三』 

 『防御:二十一』

 『魔法力:二十六』

 『魔力耐性:十三』

 『敏捷:百四十三』

 『回避:五十六』

 『魅力:四十八』

 『運:六十一』

 『万能能力値:零』

 

■メインクエスト



■サブクエスト



■シークレットクエスト



■罰則

 ・闇属性魔法”ドレイン”の消去

 ・身体的成長速度停止。期限:一生涯

 ・恋愛感情の欠落。期限:一生涯


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