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凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
五章

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99/113

99 アンリーヌの本心

「ブラボー! 素晴らしい!」


 隣の部屋から大きな声が称える言葉が響く。

 暗くする演出は、想像以上の効果を出したのか、客席の興奮はなかなか収まらず、その後の劇が始まっても小さなざわめきは続いていた。


「大成功ですタわねノチアお姉さま。これでヘンリーの顔もギャフンですわ!」

「そうね。これで少しでもアンリーヌを認めてくれればいいんだけど」


 劇も終わり、アンリーヌにお疲れ様を言うために少し劇場を出るのを遅らせる。

 すると、言い争うような声が歓談用のスペースでから聞こえてきた。

 その声には聞き覚えがあった。

 一つはおそらくヘンリー、そしてもう一つは隣の部屋で絶賛していた男の声だ。


「私はただ、素晴らしい歌声を持ったアンリーヌ嬢を支援したいと申し出ただけです」

「何が支援だアファンタ! 必要ない!」


 ヘンリーが連れの執事に制止されながら叫んでいた。

 あまりの剣幕にきっちりセットされていた金髪が乱れている。

 詰め寄られているのはアファンタと呼ばれた男性で、赤毛の天然パーマは前世で言う作曲家のような独特の髪型にまとめられている。

 恰幅の良くお腹周りが出ているが、服装も派手なためちょっと成金っぽい雰囲気がある。

 アファンタと一緒にいるのは商人らしき男性で、ヘンリーの剣幕に怯え気味だった。


「ちょっと、アンリーヌを支援したいって申し出をどうしてあんたが否定するのよ!」

「小娘が出しゃばるな!」

「なんですって!」

「そうです。未来のある若者には支援は不可欠ですよ」

「才能があるとでも? 偽善者が! 貴様のやろうとしている事は豚にも劣るわ!」


 フェリシアが思わず割って入るが、それはヘンリーを熱くさせるだけだった。

 ヘンリーが言葉を言い放った後に、私の後ろで息を飲む音が聞こえ振り返る。

 すると、アンリーヌが掛けていく後姿が見えた。


「アンリーヌ? あっ、待って!」

「お姉さま、ここはわたくしに任せてくださいまし!」

「ええ!」

「お任せください」

「わかったわ」


 フェリシアについていた執事にも後を追う様にうながされ、私はアンリーヌを追った。

 従業員用の通路を抜けると、私と昼間に話していた所に出る。


「……ノチア様」

「様はいらないわ。それより歌すごく良かったわ」

「ありがとうございます。まさか支援するとまで言ってもらえるとは思ってなかったわ」

「支援を受けるの?」

「実は私は受けるつもりはないんです。…………皆は良いことだって。羨ましいって言ってくれたけど……。私の目的とは違うから」


 アンリーヌがその場に膝を座って膝を抱えると空を見上げた。


「私の夢は歌手でも舞台女優でも無いの。私の演技は……母の為だったし……。私の歌は、あんなに大勢の為に歌わなくても良いかなって」


 その後、言葉を探すようにアンリーヌの視線が横に逸れては宙を彷徨う。

 そして、赤い癖のある髪をかき上げる様に手を添えた。

 私は何かまだ言いたいことがある気がして、黙ってアンリーヌの言葉を待つ。


「……私ね。お金を貯めて自分の食堂を開きたいの。お母さんも食堂で働いている所をお父さんに見染められたんだ。それもあって、小さくても良いから自分だけの食堂を持ちたい」


 その言葉はアンリーヌの本心のような気がした。


「良いじゃない! 何を出すか決めているの? ラーメンに興味ない?」

「ラーメン? 何ですかそれ」


 まだ、アンリーヌの中にしこりのようなものがあるような気がしたけど、聞くことが出来なかった私は、ラーメンの話しで無理やり盛り上げようとした。

 自分でも良くわからないモヤモヤをラーメンの話題でごまかしたのが、自分でも少しびっくりした。

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