91 孤軍の幻想
リストを出してもらった後、その村に行って状況を確認することになったが、やはり人手が足りない。
アイラとルキラには引き続き支援の方に回ってもらって、私はゴウオウでなるべく遠い所から確認していく。
村を回る上では、効率的なルートを事前に出してもらってたが、実際に視察に行くと予想外のゴタゴタで予定よりも帰ってくるのに時間がかかってしまう。
「もう真っ暗だわ。帰らないと寝る時間が無くなっちゃう」
急いでベットに入るがなかなか寝付くことが出来ずに朝になってまた別の村を回るために飛び立つ。
私は、余裕があった気力が徐々に削られていくのを実感していた。
特にその作業の中で私を苦しめたのは、村人の反応だった。
私のしていることはリストの見直しでしか無い。
しかし、ゴウオウで村に降り立てば、村人は支援が来たと思うのだ。
それゆえに、悪気は無いのだろうけれど、切羽詰まった状況から、支援ではないとわかった瞬間に舌打ちをされる事も多かった。
しかも、村人の状態がリスト通りなら、彼らの支援が最後の方になると私は知っている。
それがまるで私が判断を下しているような気がして、どうしても気分が落ちてしまうのだ。
その日も深夜遅くに帰ってきてベットに向かう。
そこにアイラとルキラ、そしてプリンが待っていた。
「みんな、起きてたのね」
「ノチア、少しは休んだらどうだい? ずっと動きっぱなしじゃないか」
「でも、アイラ支援を急いでいる人がいるかもしれないのよ。休んでなんていられないわ」
「ぐふふ。気持ちは分かるわ。……でも駄目。逆の立場ならノチアは私たちを止めるはずだもの」
「わっ、ノチア! クライネに無理して欲しくないって言った。プリン、ノチア見て気持ちわかった。ノチアにプリンは無理して欲しくない。それがノチアが望んでいても! プリンのワガママ。ノチアはワガママを言ってと言った」
「プリン⋯⋯」
私は言葉を飲んだ。
プリンの言葉とそこにある私への心配を見せられては、もはや反論できなかった。
「そうね。少し休もうかな」
そう思った瞬間、急激に体の力が抜けて眠気が襲ってきた。
そこでやっと私は自分の疲れを自覚したのだろう。
けれど、不思議なほどに心は軽くなっていた。
「「ノチア!」」
「ごめん。気を抜いたら立てなくなっちゃった」
「良いさ。ボク達がベットまで運んであげるから」
「ぐふふ。なんだかノチアの世話を焼けるのがうれしいわね」
「わっ、運ぶ運ぶ」
暖かくて笑顔になってしまう。
そうなのだ。
私は一人じゃない。
一人で立てなくても、支えてくれるみんながいる。
「おやすみみんな」
「「おやすみノチア」」
次の日、目を覚ますすっかり疲れが抜けていた。
まだ、体は寝足りないと言っているけど大丈夫。
もう無理をする気はない。
そう思って、今日回る村を確認していると、来訪者が来た。
それは、あの危機にあった村の若者達だった。
「あの、ノチア様。俺達にも村の確認に回らせて欲しいです」
「本当に? とても助かるけど……でも、良かったの? あなたの村だって、まだ立て直たとは言えないでしょ?」
「ジジババに言われたんだよ。いま受けた恩を返さないでいつ返すんだって。こんなことで全てを返せるとは思ってないけど、俺達にも手伝わせてくれ」
「ぐふふ。存分にこき使ってやりましょう。ねぇ、ノチア」
「ああ、頼もしいじゃないか」
「ふふふ。そうね」
その後も村を回って行った。
若者たちが手伝いを名乗り出てくれたのは大きかった。
回った村で、その話が広がりどんどんと手伝いの輪が広がって行った。
手伝ってくれた人たちは、誰一人として優先的に自分の村を支援してもらおうと虚偽の報告をするような人間もいなかった。
そして、彼らには悪いけれど、至急助けが必要な村も幸いな事に無かったので安心した。
「ノチア様。我々のミスで多大なご迷惑をおかけしました」
「良いの。緊急事態だったのだもの。それに幸い他に間違いは無かったわ。支援はまだまだこれからも続くんだし、気持ちを切り替えていきましょう」
支援はまだまだ必要だが、フェロンの定着も進み、アイラの検査では川の水の汚染は無くなっていた。
水が使えるようになると同時に、育ったフェロンも食べられるようになった。
「ここで解毒をしなければならない村は最後ね。まだまだ支援は必要だけど、第一陣はこれで終了よ」
「アイラ! ルキラ! プリン!」
「「いぇーい」」
「わっ、いえーい」
私たちの後にも支援するふと人が物資と共に、続々とガストルに入ってくる。
こうして私たちの支援の戦いは一時の終わりを迎えた。




