表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凄い加護を貰いましたが、私の夢はラーメンですよ女神様!  作者: 千両
四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
90/97

90 零れたもの

 ガストルでの屋台作戦は成功のようだ。

 屋台の運営と支援をアイラ達に任せた私は、ダイアで作った屋台とアハトで取れた魚の運搬のために、ひたすらガストルへの運搬に動いていた。

 陸路で移動していたら実際は時間がかかる移動を短時間で行えるゴウオウの機動力と運搬能力には感謝しかない。

 支援が行き渡り始めると、私が食糧を運んでいる事が伝わっているのか、空の私に村の人が手を振り感謝の声を上げているのを見る機会が増えてきた。

 その姿を見れるだけでも安心する。


「よかった。順調に皆が元気になっているようね」

「中にはノチアを見ると拝む人までいるじゃんね」

「それはそれで困るわね」


 しかし、徐々に支援が広がり始めた時、事件はおこった。


「なんでうちの村には来てくれないんだ。こんな村はいいから俺の村に支援を寄こせよ!」


 一人の男性が支援中の村に乗り込んできて自分の村を先に支援しろと言って来たのだ。


「一度に出来る支援には限りがあります。優先順位の高い村から先に支援していかなければならないんです」

「ふざけんな! 俺の村が真っ先に支援されるべきだろうが! こんな村後回しにしろよ!」


 男が屋台にいるクラウネにくってかかる。


「わっ、支援?」

「わっ、行く?」

「いいから来いって言ってるだろ!」


 無理やりにでも連れて行こうとする男に支援を受けている村の中でも元気な男たちが止めに入った。

 元気と言っても全員が栄養不足で鉱害を受けている人間なのでそこまでの抑止力にはなっていない。

 それに比べて男は元気だ。


「やめなさい! あなたの村はもっと後です」

「そんなのはダメだ! うちの村を優先しろ!」


 男は尚も暴れようとしたので、ついには取り押さえられ猿轡さるぐつわまでされてしまった。


「わっ、ノチア。あれは悪い奴?」

「そうね。暴れるのはいけないことだと思うわ」

「わっ? 仲間の為に行動してても?」


 その言葉にはっとしたが、支援が必要な村は優先付けしている。

 本当に支援が必要な村を無視して自分の村を優先しろなんて意見が通るわけがなかった。

 しかし、プリンの意見にも一理あると思ってしまった。


「そうね。頭ごなしにダメと言うのではなく話だけでも聞いてみましょう」


 男の身勝手な主張に私も腹を立てたが、縛られた後も必死で抵抗している男に違和感を覚えたのも事実だ。

 私は話しを聞くために男が捕らえられた小屋に行く。

 すると、泣きながら今も抵抗している男の姿があった。


「今からあなたの猿轡を解くわ。でも、騒ぐようなら話を聞くことは出来ない。落ち着いて話せると誓える」


 男は私を睨んだが、話しを聞くと言ったら大人しくなった。


「頼む。早く俺の村を支援してくれ」

「職員も言っていたけど、優先順位ではもっと先なはずよ」

「それじゃあ、村のジジババはもたねぇんだよ」

「どういうこと?」

「俺の村ではみんなの判断で、若い奴に優先的に食料を回したんだ。だから俺は元気だよ。でも、ジジババは限界なんだ。頼むよ。支援が必要なんだよぉ~」


 男が振り絞るように頭を地面にこすりつける。

 優先順位をつける段階で比較的元気な若者だけを見ていたのなら、それは順位付けとして致命的な欠陥だ。

 私はすぐに駆け出して職員を一人連れて、解毒用のスープを持って男の案内で村へと向かう。

 村に着いてみれば、男の言う通り若者は比較的元気に見える。

 それを見て連れてきた職員が呟いた。


「この村は、そこまで危険な状態には見えませんが……」

「寝込んでいる人たちはどこ! すぐに案内して」


 連れてきた職員の半信半疑の意見を無視して案内された教会に向かう。

 そして、中を見て絶句した。

 中には三十人近い人が寝ているが、うめき声すら上がっていない。

 若者だけを残した弊害だろうか、ろくな看病も出来ていない現状だった。

 糞尿もそのままなのだろう、酷い匂いが部屋に充満していた。


「……これからスープを分けるわ。準備している間に少しでも喚起して。窓を開けて光を入れて」

「でも、窓を開けたら他の者に病気が移るかもしれないって……」

「これは空気感染するような病気じゃないわ! 急いで」


 いそいで私は、持ってきたスープを分けるながら指示を出していく。


「手分けしてスープを飲ませて! 急いで! でも慎重に飲ませてあげて! それから湯を沸かして、体を拭ける布を用意して」

「ああ、わかった! 手分けするぞ」


 若者たちが比較的元気だった事が幸いして、すぐに全員にスープが行き渡った。

 ギリギリ間に合ったようで、スープを飲むと弱いながらも声が聞こえ始める。

 その後は、部屋の掃除と体を綺麗にしてあげる作業をしていく。


「ありがとうございます。ありがとうございまう。こんな見ず知らずの私たちの為に」

「ああ、女神よ! 我らに救い手を与えてくださったことを感謝します」


 涙を流して感謝する声が響き始めた。

 私はそんな村人を見た後に、連れてきた職員に目を向ける。

 これは明確なミスだ。

 急ぎで作らなければいけなかったとはいえ、優先順位には間違いがあったのだ。

 私の意思をしっかり受け取った職員が息を飲むのがわかった。


「このミスを責めるつもりはないわ。でも、もう一度確認をする必要はあるわね」

「戻り次第、リストを出して確認をします」

「わっ、無事? よかった?」

「ええ、プリンのおかげよ」


 この村の支援の内容を話し合わなければならない。

 そう思って教会から出た私を、あの男が呼び止めた。


「ありがとうございます。俺、どうしたら良いかわかんなくて……。本当に……本当に俺なんかの話を聞いてくれてありがとうございました!」

「立って! お礼は受け取ったから。この後に物資を持ってくるわ。あなたは看病をしっかりしてあげるのよ」

「感謝します。感謝します」


 ゴウオウに乗ってすぐに戻る。

 他にも同じような場所があるかもしれない。

 私は私の出来る事を全力でやる。

 お礼を言ってくれた人たちの顔を思い出しながら、強くそう思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ